沖田は白馬に乗って山南の姿を探していた。
(どうか・・どうか・・)
沖田の脳裏に、山南との思い出が走馬灯のように駆けめぐる。
試衛館での日々、共に駆け抜けてきた京での日々・・全てが、楽しい思い出であった。
山南を助けなくては。
逸る気持ちで馬を駆けていると、山南が街道を歩いているのを見つけた。
沖田は山南の前で馬を停めた。
「沖田君・・」
「どうして脱走なんかしたんですか!どうして・・」
「ちょっと外の空気を吸いたくなったんだよ・・」
山南はそう言って笑った。
「馬鹿なんですか、あなたは・・」
鈴は山南が屯所へ戻ってきたことを知った。
「山南さん!」
格子越しに見た山南の顔は、優しい顔をしていた。
「高原君、心配かけてすまなかったね・・」
「山南先生、死んじゃいやです!先生言ってくれたでしょう?死んだ人の分まで生きて、命が尽きるときその人に楽しい思い出を語れるように生きるんだって・・言ってくれたでしょう?」
鈴はそう言って手を伸ばした。
山南の手は、温かった。
「高原君、私の分まで・・生きてくれ・・」
山南はそう言って鈴に微笑んだ。
それは鈴が見た最初で最後の、山南の笑顔であった。
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