「口封じのために俺達を殺すつもりか?」
「まぁ、そんなところだね。さっさとブツを寄越して貰おうか?」
ジャックの秘書・スティーブはそう言ってウォルフとアレックスに拳銃を向けた。
「お生憎様だが、お前のボスが欲しがっているものはここにはない。残念だったな。」
「そんな嘘に、俺が騙されるとでも?」
「嘘かどうか、確かめればいいだろう?」
スティーブは舌打ちすると、ウォルフの車の中を調べ始めた。
彼が銃を車のボンネットに置いたのをウォルフは見逃さずに、素早く銃を奪った。
「走るぞ!」
アレックスの手を掴んで森の中へと逃げ出すウォルフの姿を見たスティーブは、怒りに顔を歪ませながら彼らの後を追ってきた。
「いいか、絶対に俺から離れるなよ!」
「わかった!」
二人が息を切らしながら森の奥へと走ると、背後から銃声が聞こえた。
「畜生、あいつ車から銃を取りに行ったんだ!」
銃声が聞こえる距離が、徐々に近づいていく。
「やっと見つけたぞ、ガキども!」
怒りに顔を歪ませたスティーブが、トレンチコートの裾を翻しながら二人に向けてショットガンを発砲した。
銃弾は二人のすぐそばにある幹へと当たった。
「くそっ・・」
ウォルフはそう言って舌打ちすると、スティーブに向けて発砲した。
向こうの木立から悲鳴が聞こえた。
「元来た道を戻るぞ、早く!」
アレックスは走りすぎて胸が苦しくて、死にそうだった。
足も荊や棘が刺さり、走るたびに痛かった。
「がんばれ、もう少しだ!」
ウォルフは隣で苦しそうに息をしているアレックスを励ましながら、漸く車のところへと戻ってきた。
運転席に入りエンジンを掛けようとしたが、こんなときに限ってなかなかエンジンが掛からない。
「畜生!」
汗でキーを回す手が滑り、なかなかエンジンが掛からない。
漸くエンジンが掛かり、ウォルフは勢いよくバックして窪地から脱出した。
「やつは?」
「もういない。もう何処かへ行ったんだろう・・」
「ウォルフ、前!」
アレックスが恐怖で顔を引き攣らせながら前を指すと、そこには足から血を流しながら憤怒の形相を浮かべるスティーブがショットガンを潅木(かんぼく)の前で構えていた。
もうおしまいだ―ウォルフがそう思った瞬間、突然スティーブの脇を一台のジープが突っ込んできた。
スティーブはショットガンを構えた格好のまま下の沼地へと真っ逆さまに落ちていった。
一体何が起こったのだろうかと思いながら呆然とウォルフとアレックスが突然現れたジープを見ていると、そこから一人の老人―アレックスの祖父・マックスが現れた。
「大丈夫か、アレックス?」
「おじいちゃん、何で?」
「さっき隣町に住むアレンからお前達が危ないと連絡を受けてな。何処も怪我はないか?」
「うん・・」
アレックスは急にへなへなと地面にへたり込んでしまった。
「どうした?」
「安心して腰が抜けたみたい・・」
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