鳥羽・伏見、甲府、宇都宮を経て、新選組や会津藩をはじめとする旧幕府軍は北へと敗走を続けた。
「わだすらが、逆賊な筈がねぇ!会津は、帝の為に尽くしてきたべ!」
「そうだ、御所に発砲したのは、長州の奴らだ!あいつらこそ、逆賊でねぇか!」
怒りをあらわにしながら、ゆきと双葉は逆賊扱いされることに納得がいかなかった。
会津藩は、これまで帝の為に身を尽くしてきた。
それなのに―
「新政府軍に、会津は渡さねぇ!」
「渡すわけにはいかねぇ!」
だが、白河、二本松の戦いで、旧幕府軍は新政府軍の前に敗れ去った。
敵軍は徐々に、会津へと進軍していった。
「殿、橋をけっして渡らせてはなりませぬ!」
「ああ・・」
会津の守りである十六橋も破られ、新政府軍は若松城下へと迫って来た。
滝沢本陣で新選組は、白虎隊士中二番隊と合流した。
「京でのご活躍の事、聞いておりやす。」
少年達は目を輝かせながら、そう言って歳三達に群がった。
「皆、新選組の皆様を困らせてはなんねぇ。」
篠田儀三郎がそう言って仲間を窘め、彼らとともに別室へと向かった。
翌日、白虎隊士中二番隊は滝沢本陣から出陣し、戸ノ口原へと向かった。
冷たい雨が彼らを襲い、食糧は既につきかけていた。
「俺が食糧を取りに行ってくるから、ここで待ってろ。」
指揮官である藩士の言葉を信じ、彼の帰りを待っていた篠田達であったが、一向に彼は戻ってこなかった。
「なじょしたんだべ?」
「あそこに人影が!」
「敵だ、敵襲だ!」
隊士の一人がそう叫んだのと同時に、銃弾が空気を切り裂いた。
すぐさま彼らはヤゲール銃で敵軍と応戦したものの、スペンサー銃を持った新政府軍の前に敗れ、彼らは戸ノ口原から撤退し、飯盛山を目指した。
若松城下では敵の侵入を告げる半鐘が鳴り響き、藩士の家族達は城を目指した。
だが彼らが到着した頃には城門は堅く閉ざされ、城下に取り残された藩士の家族達は自刃した。
家老・西郷頼母の一族21人も、自害して果てた。
そして飯盛山へと辿り着いた白虎隊士中二番隊は、燃え盛る城下を見て絶望に駆られ、自刃した。
「双葉様、危ねぇ!」
敵と応戦しているさなか、ゆきの声で我に返った双葉は、敵の砲弾が自分に向かって飛んでくるのを見た。
紅蓮の炎と黒煙に包まれ、双葉は意識を失った。
「双葉・・双葉、聞こえっか?」
「父・・ちゃん・・?」
再び双葉が目を開けると、そこは会津の戦場ではなく、病室のベッドの上だった。
「よがったぁ、ずっとあのまま意識が戻らねぇのかと思ったぁ~!」
良子はそう言うと、双葉の胸に顔を埋めて泣き崩れた。
「わだす・・なじょしてここに?」
まるで狐につままれたようだった。
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