「今日の部活動はここまで!」
「有難うございました。」
部活を終えた千尋は、更衣室で制服に着替えて道場から出ると、歳三が待っている駐車場へと向かった。
「すいません、お待たせしてしまって。」
「それじゃぁ、行くか?」
「ええ。」
歳三が運転する車で、千尋が彼と向かったのは、駅前にある大型ショッピングモールだった。
「ここで何か用ですか?」
「ちょっと、お前とデートしようと思ってな。」
「え・・」
「嫌なら、家まで送るが・・」
「いいえ、付き合います。」
「そうか。」
歳三はそう言うと、千尋の頬にキスした。
「まだ夕飯食ってないだろう?」
「ええ。両親は法事に出席していて留守です。」
「じゃぁ、二人で何か食べようか?」
「いいですね。」
ショッピングモール内にあるイタリアンレストランで、歳三は千尋と久しぶりに二人きりで夕食をとった。
「こうして二人きりで食事をするのは、久しぶりだな。」
「ええ。確か最後に二人きりで食事をしたのは、昨年のクリスマス・イヴでしたね。」
「ああ。実は、お前に渡したい物があって、今日お前をデートに誘ったんだ。」
「僕に渡したい物って、何ですか?」
「これだ。」
歳三はスーツの内ポケットから有名宝飾店のロゴが入ったベルベッドの箱を取り出した。
千尋が箱を開けると、そこには四葉のクローバーの形をしたダイヤモンドのネックレスが入っていた。
「これ、今一番人気のネックレスですよね?高かったんじゃないですか?」
「値段なんて聞くな。俺は、お前の喜ぶ顔が見たくて、これを買ったんだ。」
「有難うございます、大切にします。」
「今つけてやろうか?」
「いいんですか?」
「いいに決まっているだろうが。」
歳三はそう言って千尋に微笑むと、ネックレスを彼の首につけた。
「良く似合っているぜ。」
「美砂ちゃんは元気にしていますか?」
「ああ。ベビーシッターに任せきりだが、元気に育っているよ。」
「そうですか。」
「なぁ千尋、お前は進路のことをどう考えているんだ?」
「まだ、考えていません。」
「まだ1年だから、しょうがないよな。まぁ、自分のことを決められるのは、自分だけだ。焦らずにじっくりと将来の事を考えろよ。」
「わかりました。」
夕食の後、歳三は千尋を自宅まで送り届けた後、帰宅した。
「遅かったな。今までどこに行っていた?」
「あんたには関係ねぇだろう。」
「お前に、縁談を持ってきた。」
「俺は再婚はしねぇ。」
「一度目の結婚が散々なものだったからといって、二度目も失敗するとは限らんだろう?」
「別に俺は一生独身でいいと思っているぜ。あんたの世間体なんてクソ食らえだ。」
「ふん、いつまでわたしに向かってそんな口が聞けると思っているんだ?」
父と息子との間に険悪な空気が流れている時、リビングルームに駿弥が入ってきた。
「お義父さん、只今戻りました。」
「駿弥君、お帰り。」
「お義父さん、歳三君に再婚を勧めても無駄ですよ。」
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