※このイラストは
MARRISA様から頂きました。
無断転載はおやめください。
🎃双つの鏡 ハロウィン小説🎃
1865年10月28日。
千は、いつもこの季節になると楽しくも憂鬱なイベント―ハロウィンの事を思い出してしまう。
だがこの時代、ハロウィンを祝うという風習が日本では広まっていないので、千は頭の中からハロウィンの事を締め出して家事や副長小姓の仕事に勤しんだ。
そんな中、会津藩から一通の文が届いた。
その文には、近々黒谷本陣で西洋の祭りを祝うので、四日後に宴を開くので来るようにという旨が書かれてあった。
「何でも西洋には、皆好きな格好をして楽しむ祭りがあるとか。千君は、ご存知ですか?」
「ハロウィンの事ですか?元々は古代ケルト人が秋の収穫を祝うと共に、悪霊を追い出す一種の儀式だったのですが、いつしか扮装してお菓子を貰うお祭りになっちゃいましたね。」
「へぇ、そうなんですか。じゃぁ、黒谷へは皆好きな格好をして行った方がいいかもしれませんね。」
総司はそう言うと、翡翠の瞳をキラキラと輝かせた。
「千君も勿論行くでしょう?」
「はい・・」
幹部からお誘いに断れず、千は仕方なく黒谷本陣で行われるハロウィンパーティーに行くことになってしまった。
「土方さん・・じゃなかった副長、お茶をお持ちしました。」
「い~や~だ~!」
千が副長室の襖の前に立ってそう言うと、中から部屋の主である歳三の悲鳴が聞こえた。
「トシ、お願いだから聞き分けてくれ。」
「そうですよ、会津藩直々のお願いなんですよ?断ったら角が立つでしょう?」
「だからって、俺にこんなヒラヒラしたもんを着れっていうのかよ!?」
千が副長室に入ると、歳三は手に持っていたドレスを片手にそう近藤と総司に向かって怒鳴っていた。
「土方さん、一体どうされたんですか?」
「どうされたもこうされたもねぇよ!さっき会津藩の使いが来て、俺にこれを着て黒谷本陣に来いだとよ!」
歳三が持っていたのは、紫のバッスルドレスだった。
「後、髪にこれを飾れだとよ、俺を莫迦にしてんのか!?」
歳三は美しい顔を怒りで歪ませながら、乱れ箱の中に入っている星形の髪飾りを指した。
「副長、ハロウィンではそれぞれ好きな扮装をして楽しむというのが宴の主旨なのです。」
「だそうですよ、土方さん。わたし達は会津藩御預かりの身なのですから、会津藩のご機嫌を損ねては新選組の将来が危うくなるかもしれませんよ?」
「畜生、解ったよ!着ればいいんだろ、着れば!」
総司から弱い所を突かれた歳三は、半ば自棄になってそう怒鳴った。
「武士に二言はありませんよね、土方さん?」
「ああ。」
四日後、黒谷本陣に於いて会津藩主催の「波浪院派得(はろいんぱーてぇ)」が開かれ、客達はそれぞれ好きな扮装をして宴を楽しんだ。
「沖田さん、良くお似合いですよ。」
「千君、衣装作ってくれて有難うございます。千君も結構似合っていますよ。」
白雪姫の扮装をした総司と、アリスの扮装をした千がそんな話をしていると、仏頂面を浮かべた歳三が二人の元にやって来た。
「てめえら、何をジロジロ見ていやがる、見世物じゃねぇぞ!」
「よくお似合いですよ、土方さ・・ブフォ!」
「ええ、良く似合ってます。」
紫のバッスルドレスを纏い、黒髪にダイヤの星飾りを挿したエリザベートの扮装をした歳三は、宴で誰よりも目立っていた。
あとがき
ハロウィン話を書いてみました。
総司や千の衣装は、全て千が作りました。
幕末にはコスチューム売ってる店なんてないと思うので、全て手作りが基本です。
まぁ、幕末にハロウィンを祝う風習はありませんが、そこは広い心で許していただけると嬉しいです(^o^)
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