黒執事・薔薇王の葬列クロスオーバー中世パラレル小説です。
ディズニー映画「ノートルダムの鐘」風のパラレルですが、一部キャラ設定や時代設定が違っていたりしますが、それでもいいよという方のみお読みください。
その日、パリは雲ひとつない晴天だった。
「セバスチャン、早くしろ!二人の結婚式に遅れてしまう!」
「わかりました、坊ちゃん。」
セバスチャンとシエルがノートルダム大聖堂に着くと、そこには今日の主役を祝う為に、多くの貴族達が集っていた。
その中には、リチャードの家族も居た。
「ファントムハイヴ伯爵、本日は娘の結婚式にお越し頂き、ありがとうございます。」
「いいえ。それよりも閣下、奥様の事は心からお悔やみ申し上げます。」
「ありがとうございます。」
やがて大聖堂の扉が開き、純白の花嫁衣裳を纏ったリチャードが入って来た。
―まぁ、なんて美しいのかしら。
―まるで天使のようだわ。
陽光に照らされた薔薇窓から射し込む光が、祭壇に居るリチャードとヘンリーを優しく照らした。
「末永く幸せにな、リチャード。」
「あたし達も二人に負けてられないわね。」
リチャードとヘンリーの結婚式を少し離れたところで見ていたネズミのヴィクトルとリリーは、そんな事を話しながら幸せそうな二人の姿を眺めていた。
「リチャード、ヘンリー君と幸せにな。」
「ありがとうございます、父上。」
「ヘンリー君、リチャードを頼むよ。」
「わかりました、まかせて下さい!」
「お前は頼りないから、これから心配だな。」
「酷いや、リチャード!」
「大丈夫だ、ヘンリー。お前のことは主が守ってくださる。」
ヘンリーを今まで息子同然に育ててきたデヴァルジュ司教は、そう言うと彼を抱き締めた。
「司教、今までありがとうございました。」
「彼女と幸せになりなさい。」
かつて、パリの街には“怪物”が棲んでいた。
彼はその醜い容姿故に、外の世界を知らずに生きてきた。
しかし、“怪物”は愛を知った。
そして彼ははじめて“人”となった。
悪魔の呪縛から解き放たれ、“人”となった彼は、自由の身となった。
今日もパリの街に、朝を告げる鐘の音が鳴り響いている。
-FIN-
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