素材は
コチラからお借りしました。
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「いらっしゃいませ~!」
ここは、銀座のクラブ・カルティエ。
政財界の大物や文化人などが集う高級サロンのような店内には、ロココ調の家具や調度品などがさり気なく飾られており、そこで働くホステス達もまるでヴェルサイユの貴婦人達のように気品と威厳に満ち溢れていた。
そんな中、歳三はホステスの一人としてこのクラブに潜入していた。
「え、囮捜査?」
「そうだ。実は銀座のクラブ・カルティエは、半グレ組織・グレイウルフと繋がりがあるという情報を得た。カルティエは、以前から違法ドラッグの取引をしているという黒い噂がある。」
「そこで、俺にカルティエに潜入させる、という事ですね。」
「話がわかって助かるよ。」
「俺が、どうしてホステスに?」
「君は以前、ガールズバーで潜入捜査をしていたね。男所帯でむさ苦しい刑事達の他に、女装が似合うのは君しか居ないと思ってね。」
「えぇ・・」
「頼んだぞ。」
「は、はい・・」
歳三はホステスとして潜入したのだが、ママのめぐみに目をつけられるようになった。
「ちょっと、ここは居酒屋じゃないのよ!」
「すいません・・」
「もう、しっかりしてよね!」
めぐみはそう言って奥へと消えていった。
「真由美ちゃん、また来たよ!」
「あらぁ、いらっしゃい!」
バーコードハゲの客が、めぐみの上客であり、横浜で貿易商をしている事を歳三は掴んでいた。
「ママ、とりあえずアルマンド、ボトル一本ね!」
「うわぁ~、嬉しい!ありがとうございます!」
「本田さん、わたしよりこの子の方に気があるの?嫉妬しちゃう!」
「ママ、機嫌直してよ~!すいません、アルマンドのブラックお願いします!」
(このオッサン、やるな・・)
「じゃぁママ、またね!」
「はぁい、お待ちしていま~す!」
本田をエレベーター前でママと見送った歳三は、ママに声を掛けられて思わず顔を強張らせてしまった。
「ねぇ、これから二人でご飯行かない?」
「は、はい・・」
「そんなに怯えないで、取って喰ったりはしないわよ。」
ママに連れられた所は、新宿歌舞伎町の近くにあるラーメン店だった。
「あ~あ、コロナが終息してくれないと、うちの店も商売上がったりよ。」
「え~、お店儲かっているじゃないですかぁ?」
「そうでもないのよ。昨年の春からずっと業績悪くてね。銀座や六本木のクラブも、何処も同じようなもんよ。もうお店閉めて、田舎帰っちゃおうかなぁ。」
「田舎、何処なんですか?」
「埼玉の山奥。昔はドがつく田舎だったけれど、近くにデカいショッピングモールが出来たらいいけどさ。」
ママはそう言って煙草の煙と共に溜息を吐き出した。
「今度の日曜、紹介したい人が居るからうちへ来てくれない?」
「わかりました・・」
「それじゃ、また明日!」
帰宅した歳三は、ベッドまで這うようにして向かうと、そのまま泥のように眠った。
「土方君、居るの~!?」
「何だよ、うるせぇな・・」
歳三が眠い目を擦りながらドアを開けると、そこには何処か慌てた表情を浮かべている大鳥の姿があった。
「どうした、何があった?」
「伊庭君が、君を捜しているんだ!とにかく僕と一緒に来て!」
「え・・」
訳がわからぬまま、歳三は大鳥が運転する車である場所へと向かった。
「嫌だぁ~!」
「八郎、落ち着きなさい!」
そこは、都内某所にあるホテルの結婚式場だった。
「一体、何が起きていやがる?」
「実は・・」
大鳥は、歳三に八郎が暴れている経緯を話し始めた。
八郎は、また父親に連れられて見合いをしたのだが、突然彼が暴れ出したのだという。
「そうか・・」
「歳三君、少し話せないか?」
「はい。」
暴れて疲れて眠ってしまった八郎をスイートルームの寝室のドア越しに見ながら、そう言って歳三と向き合うような形でソファの上に腰を下ろした。
「八郎と、結婚してくれないか?」
「え・・」
「最近、あの子は、“トシさんと結婚できないなら死ぬ!”とか言い出して暴れるんだ。」
「そうですか・・」
「あいつを一度カウンセリングへ連れて行ったが、精神科医から、“前世でやり残した事が、息子さんを苦しめている”と・・」
俊郎の言葉を聞いた歳三は、箱館の“あの夜”の事を思い出した。
「トシさん、いいかな?」
「ねぇトシさん、お願いがあるんだ。」
「何だ?」
「僕を、抱いて欲しいんだ。」
「お前、何言って・・」
歳三がそう言って八郎の方を見ると、彼は一糸纏わぬ姿を見て己の前に立っていた。
「もう、こんな身体で生きていたくないんだ。」
そう言って涙を流す八郎の左半身には、変若水を飲んだ副作用による、酷い瘢痕が広がっていた。
「わかった・・」
それが、歳三が八郎を抱いた最初で最後の夜だった。
「歳三君?」
「いえ、何でもないです。」
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