稚魚の会で「一条大蔵譚」を観る前にオサライ
私が観たことがあるのは、2008年のお正月の歌舞伎座。吉右衞門さんが大蔵卿を演じる「一条大蔵譚」頼朝、義経兄弟の母、常磐御前の再婚相手、大蔵卿はなんとなく物足りない人物の印象だったけどそれも源氏を欺くためだったといういかにも歌舞伎らしいテイストたわけ、うつけと思わせて世を欺いた信長や内蔵助の例など数限りないけれど吉右衞門さんの阿呆ぶりがまた見事八ツ橋への純情から人生を狂わした愚直な次郎左衛門を演じた人と同じ人には思えない。福助さんも梅玉さんも皆さんそれぞれ感動的。とりわけ、心に残ったのは悪事を働いた夫と、仕えている常磐御前達の板挟みになって苦しむ女房鳴瀬。不忠を詫びて ひれ伏すの小さい、小さい背中、最後に自害して果てる哀れ鳴瀬の吉之丞さんでした。そして、2009年お正月の浅草歌舞伎一条大蔵譚・曲舞(くせまい)奥殿阿呆のフリをした一条大蔵卿は亀ちゃん。命を狙う悪者の存在にちゃんと気づいていて舞を利用して自分を殺そうとするのを巧みにかわすばかりか、ついにはからかって、やりこめてしまうのは見事!「曲舞」に はまった染子さんが「何度も観たい!」と言った気持ちがよくわかる。一条大蔵譚(ものがたり)は人気の演目だけど、普段は「桧垣」が多く「曲舞」はめずらしいらしい。以前観た吉右衛門さんの大蔵卿の時は源氏再興を願う鬼次郎を梅玉さんがお京を魁春さんがなさっていて見ごたえがありました。やっぱり、「桧垣」も「曲舞」も両方観たいな。浅草歌舞伎の「一条大蔵譚」主な配役大蔵卿 亀治郎 常盤御前 七之助鬼次郎 勘太郎 お京 松也鳴瀬 京蔵 八剣勘解由 亀鶴勘三郎さん+ニザ様+玉様のはDVDで観ました。この時の鳴瀬は小山三さん。生で観たかった!そして、亀ちゃんの時の鳴瀬は京蔵さん。コクーン歌舞伎の「義民傳」の時、橋吾さんの奥さん役以来、私が注目していた役者さん。浅草で観たのは「義民傳」の前だったので残念!「稚魚の会」では誰のどの役が心に残るか、楽しみです。