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テーマ:きくスキルの研究(496)
カテゴリ:山下日記
またまた山下です。こんにちは!
きのうご紹介した話でもわかるとおり、調子のいい饒舌な「聞き手」より、どちらかというと不器用で話し下手な「聞き手」の方が好ましく思われ、信用を得ることが少なくないように思います。 以前OA機器の営業マンツールで「私の好きな営業マン」という巻頭インタビューを担当していたことがありました。著名人に、これまで会った営業マン(あるいは販売員)の中で好ましく思えた人、反対に不快に思った人について、お話を伺ったのです。 およそ20回ほど連載しましたが、登場してくださった著名人の方々は口をそろえて「饒舌な営業マンほど信用できなかった」とおっしゃっていました。みなさん、購入意欲が沸くどころか警戒心を強めたというのですね。その気持ち、よくわかります。おそらく皆さんも同感ではないでしょうか。 今日はそのインタビューで一番印象に残った、日本を代表する喜劇人K氏のお話をさせていただきます。 彼は芸能界に入る前、ある業界で営業マンをしていたことがあるそうです。喜劇人としてお茶の間を沸かせた方だからどんなに愉快な方だろうかと思いましたが、素顔は実直を絵に描いたような方で、笑うどころかほとんど喋らず、姿勢を崩すことすらありません。 失礼な言い方をすると、“不器用な男”を看板にしているような方なのです。そんな方が飛び込みのセールスをやったというのですから、いったいどうやって?と誰だって聞きたくなります。 「言葉巧みに売り込むなんて、もちろんできません。だからあるお宅に目をつけて、毎日毎日、ポストにメッセージを書いた名刺を届けたんです」。 めげずにコツコツ足を運んだ甲斐あって、いつしか門前払いから玄関先に、ついにはお宅に上がってご主人の話し相手をするまでに―。 やがて、ご主人が彼の実直さにほだされたのでしょう。「わかった、買ってやる」。ただし、「月に一度はウチにきて飯を食え」との条件つき。よほど気に入られたのでしょうね。不器用でも一生懸命であることが相手の信用を得るという、まさしく好例です。 「きくスキル」とは話がずれていると思うかもしれませんが、きくことにおいて大切なポイントの一つは相手の心を開かせることではないかと思います。 前出のT氏も今回のK氏も、お世辞にも話し上手とは言えません。だからこそ、たとえ間が空いてしまっても一つ一つ丁寧に言葉を選んで一生懸命気持ちを伝え、同時に、相手の言葉に懸命に耳を傾ける。そうすることで相手の心をほぐし、信用を得、相手の思いやニーズを引き出すことができたのではないでしょうか。 T氏とK氏。このお二人は、その後私がインタビューをするときの「お手本」の一つとして、ずっと心に存在したのでした。 追伸:ところで喜劇人K氏のインタビューはうまくいったのかって? そこです、そこ。恐ろしく口の重いK氏を相手に、若かりし私は大パニック。とてもじゃないが、相手の心をほぐして信用を得、思いを引き出すなんてマネ、できませんでした。ごめんなさい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年04月25日 06時51分07秒
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