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テーマ:きくスキルの研究(496)
カテゴリ:山下日記
こんにちは、今週4回目の登場となった山下です。今日は私の失敗談を書かせていただきます。
ベテラン女性芸能レポーターSさんをインタビューしたときの話です。彼女は、まさしく「きくスペシャリスト」。 芸能人のスキャンダルや社会事件について、あるときは当事者の鼻先に向けて容赦なくマイクを突き出し、またあるときはお母さんのように愛情を持ってやんわりと話を聞き出します。 そんな方を反対にインタビューする。このときある程度のインタビュー経験を積んでいた私としても、いささか緊張しました。いえ、大物相手に緊張するというのではなく、「きくスペシャリスト」への対抗心のようなものがあったのだと思います。 気圧されるものか!と私はグイグイ質問をぶつけ、そして返ってくるすべての言葉に対していちいち過剰な相槌を打ちました。今思うと、まるで一人相撲ならぬ一人野球。直球、変化球、スライダーとあらゆる球を投げ、ファースト、ショート、レフト、ライトへとあらゆる方向に打ち返される球を、無謀にも一人で拾おうとしていたようなものです。今考えると、若かった! そんな無理を不快に思ったのか、10分もするとSさんは私と目を合わさず、私の隣に座っている編集者に向かって話をするようになりました。私は焦りました。なんとか彼女の意識をこちらに向けようと、ますます声高に質問を浴びせ、身を乗り出してまで彼女の視線や言葉を拾おうとしました。悪循環です。最悪の展開です。 隣の編集者は、どっしりと構えて彼女の話に耳を傾けているだけ。インタビューは私に任せているので、質問はほとんどしません。それなのに、Sさんは私の質問に対する答えを編集者に返している。プライドはズタズタでした。私はいったい何を学んできたというのか・・・。 インタビューにおける「きく」は、相手に気持ちや考えを語っていただくことであり、そのためには“間”や“空気”も不可欠な要素。それを欠いた「きく」は無礼極まりない、言い換えれば心のこもっていない取材になってしまうのです。 テレビで見る限り、Sさんは相手の心に土足で踏み入るような無礼なことはしません。どうしても辛い質問をしなければならないようなときは、「こんなことを聞いてごめんなさいね」と言わんばかりの表情と声で、さらに相手が答えてくれた場合は一緒に泣かんばかりの表情と声でその心中を共有しているかに見えます。 そんなSさんだから相手も「この人になら」と心中を打ち明けるのかもしれないし、またそんなSさんだから、自分が好ましく思えない聞き手に対して、露骨に拒絶反応を見せたのかもしれません。 私にとってはキビシイ経験でしたが、同時に、人に心を開いて話をしてほしければ、何よりも自分が相手への心配り、思いやりを持たなければいけないと、身に沁みて感じた出来事でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年04月26日 06時26分45秒
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