桃源郷:秘密の小瓶 8
桃源郷:秘密の小瓶8 ~呪い~ お祝いパーティも終わり、みんなはそれぞれ家に帰っていきました。 通鷹は、台所で片づけをしているリンに、無理しないでくださいと声をかけます。 ソファに座って、くつろいでいる高時のそばにやってきました。 「高時、これはお返しします」 小さなクリスタルの小瓶を取り出して、 高時の手に乗せました。 「封は解いてないようだな」 「ええ」 「リンには?」 「話しましたよ」 苦笑しながら、いきさつを話します。 高時が帰った後、リンに小瓶の中身を問い詰められました。 中身を『愛の妙薬』といい、子宝に恵まれない夫婦が 使うといいということをおおざっぱに説明しました。 『想いあっている男女でなければ効果がない』という呪いが かかっています。 その話をしたところで、リンが急に吐き気を もよおしました。 「それで、妊娠していることがわかったんです」 しばらくの間、自分が知らない間に通鷹が使ったのでは ないかと、疑り深い目で見られたとため息をつきました。 通鷹の落ち込んだ様子に、高時は笑います。 「うん、それは俺が保障してやる」 何しろ、高時が封印を施し、さらにその上から通鷹が 封印をしていたのですから。 「使うとしたら、お前が解いて、さらにリンが俺の封印を解かないとな」 そういう呪いにしたのだから、いつでも釈明してやると 肩を落とす通鷹の背を勢いよく叩きます。 「あいつは、子供をほしがってたからな」 本人に自覚はなかったようだけどと言うと、小瓶を 懐にしまいます。 「いらなかったな」 「だから、最初からいらないといったでしょう」 いらぬ誤解を受けましたと顔をしかめます。 台所の奥から、お茶を持っていこうかとリンが声をかけます。 その声に、もう帰ると言って席を立ちました。 「名前は俺が考えていいか?」 「リンと相談して決めます」 すました顔の通鷹に見送られて、高時は二人の家をでました。 男の子か、女の子か、そんなことを考えなら、夜空の下を歩きます。 夜空に浮かぶ星の合間に、ひときわ大きな星がひとつ 輝いて、すうっと尾を引いて去っていきました。 おわり 呪い=まじないと読んでください(^^)ご愛読ありがとうございました。