【番外編】幸福のひと:遺品 13
【番外編】幸福のひと:遺品13 ~ルエラ~ 「ルエラ、ルエラ」 肩を揺さぶられて、はっと気付くと隣で心配そうに顔を 覗き込む夫の姿がありました。 潮風と青い海から聞こえる波の音、眩しく輝く太陽をカモメが 横切っていきます。 「大丈夫よ」 微笑むと安心したようにリクは、目元を和らげます。 昔のことに想いを馳せている内に、どうやら意識が遠くへ 飛んでいってしまったようです。 軽く頭をふって、船内に入ろうと夫の腕をとります。 今日も海の上は暑いので、熱に浮かされてしまったのかもしれません。 冷たい飲み物をつくるわねとやわらかな緑の瞳に微笑んで、 甲板に背を向けます。 もう、マリーと会うことはないでしょう。 少し寂しいと思いましたが、仕方ありません。 ルエラは、母のクローディアではないのですから。 大きな波の音とともに、船員の元気な声が響き渡ります。 風を受けて大きく膨らんだ帆は、太陽の輝きを受け、 青く輝く海の上で、真っ白に輝いていました。 おわり **********************************ご愛読ありがとうございました(^^)