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カテゴリ:読書(09~ノンフィクション)
「あの戦争から遠くはなれて」城戸久枝 情報センター出版局 NHKのドラマ『遥かなる絆』が良かったので、単行本を買いました。丁寧に作られたドラマであるにもかかわらず、いろんなところが省略されているような気がしてなりませんでした。単行本を買ってもう少し知りたいと思ったゆえんです。 まずはどうでもいい話から。ドラマで出てきた留学先の好青年はまったくのドラマ用の創作でした。なぜ彼を出す必要があったのか、実は今でもよく分かりません。現代編に何らかの恋愛要素を入れないと、視聴者の興味を引かないと思ったのでしょうか。 実はテレビドラマでは、重要な部分が十分に描かれていませんでした。『なぜ城戸幹は養父母を中国に置いてまでも、日本に帰りたかったのか』ドラマでは、ここは『問いかけ』のまま終わっていたところでした。私は彼の郷里の映像を見ながら、『それほどまでに、中国で暮らすということは、経済的に厳しかったのだ』と思っていました。ところが、この本を読む限りでは、違っていたのです。 城戸幹の直接の言葉はありません。城戸久枝が「日本という国の『罪』を背負わされて父は25年間を中国ですごしてきた。その過酷さがどれほどのものだったか私には想像もつかない。しかし、父がどうしても日本に帰りたかった理由が-そして父のつよさが―少しだけ分かったような気がした。」と書いていて、その文脈から考えると、私の考えは違っていたようです。 この本を読む限り、城戸幹が文化大革命のときに『生き残った』のはまったくの『運』のように思えます。たまたま、城戸幹は自分が『日本人』であることを公表していた。そのために公安から恐ろしいまでに監視がついていた。ところが、どうもその公安の監視が、城戸幹の命を救った可能性があるのである。城戸幹(孫玉福)は、文化大革命による『闘争対象』という名の『つるし上げ』の対象に何度もなっていたが、友人がその危険性を教えてくれたりして逃げ回り、最終的には『職場で何度も孫玉福が日本のスパイか白状させようという動きがあったがそれが実行に移されることはなかった。どうやら公安局が職場に連絡し、そういうことはわれわれが担当するから職場でする必要はないと押さえ込んでいたようだった』らしいのである。近衛兵による暴走がとまっても、工宣隊による批判集会は続き、やはりつるし上げは続いていく。じじつ、それで城戸幹の恩師も自殺している。それらの詳しい描写はテレビでは一切していない。 文化大革命が終わっても、日本人に対する『罪の背負わせ』は続いている、(それは80-90年代の愛国主義教育が影響しているらしい)ので、残留孤児の人達が帰国を望むのは、経済的な理由だけではない、ということもわれわれは知る必要があるのだろう。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年08月12日 00時09分02秒
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