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再出発日記

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2018年03月14日
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カテゴリ:邦画(12~)


今回の映画評は「この世界の片隅に」です。

「お前だけは、この世界で普通でまともであってくれ」すずの幼なじみの水原さんはそう云って戦場の海に帰って行きました。

本編の最後にすずは、夫の北條周作に向かい「この世界の片隅で、私を見つけてくれてありがとう」と言います。いや、私たちこそありがとう。こんな世界を見つけてくれて。

何度観ても発見がある。正に映画です。ちょっとぼんやりしたところのある少女すず(声・のん)が、広島から軍港呉の町に嫁に行った戦前戦後のことを描いたアニメです。

機会があれば、映画館の大画面で観て欲しい。DVDで見るのならば、隅から隅まで画面の片隅にも気を配って欲しいと思います。

私が2回目に観たのは、広島の映画館でした。その前にすずの実家の江波を歩いていたのですが、江波の旧広島地方気象台(現気象館)がさりげなく描かれていて感動しました。あるいは、戦争終盤の呉の町を俯瞰で写したときに、家々の屋根に所々黒い穴が空いています。あれは、焼夷弾の穴に違いないと思います。普通の人は絶対に気がつかなくても、確実に当時の風景や生活を再現しようという、監督の執念を感じました。

戦争は、たくさんの大切なものを奪っていきました。とっても絵が上手かったすずの右手、5歳ながらも軍艦の名前を全部覚えていた利発な姪の少女、広島の両親や妹の許嫁、鬼(おに)いちゃんこと南洋戦線で散ったすずの兄、初恋の幼なじみ、ひとつひとつの店の名前や住人まで調べて描かれた広島の街や呉の町。その全てが、戦争や原爆で消え去りました。それを劇的に悲しく描くのではなく、誠実に画面をつくることで提示するのです。それでも、遂には北條家の人々の笑顔までは奪うことはできませんでした。
白タンポポが主流の呉の町に、一つふたつ咲いている黄色いタンポポは、すずです。根付いて風にそよぐ風景が、この作品のテーマです。

本篇が終わったあとに、おまけがあります。クラウドファウンティングで一定額以上出資した個人・団体の名前を紹介する場面に、すずの失われた右手が、遊女白木リンの儚い半生を描きます。最後にその右手が観客の私にさよならをした時に、それまでなんとか堪えていた私に滂沱の泪を流させました。傑作でした。
(原作・こうの史代、2016年片渕須直監督作品、レンタル可能)





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最終更新日  2018年03月14日 13時00分08秒
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