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テーマ:映画館で観た映画(8381)
カテゴリ:邦画(12~)
今月は高畑勲追悼になりました。金曜ロードショーでこの作品をやります。ぜひ見てください。
「かぐや姫の物語」 4月に岡山市出身のアニメ監督、高畑勲氏が亡くなりました。直前の2月にも赤磐市で、氏は病をおして講演をしたそうです。この『かぐや姫の物語』の背景に、郷里で土と共に生きた永瀬清子の詩の影響があったことなどを話したそうです。 原作は「竹取物語」。竹から生まれたお姫様が月に戻ってゆくお話です。日本人ならば、ほとんどの人が知っていますね。けれども、原作をきちんと読んだ人はほとんどいません。かな文字で書かれた日本最古の物語は、単なるお姫様物語ではなく、批判精神旺盛で謎に満ちたお話になっているのです。高貴なはずの宮廷の中の人々を、欲望や愚かさに染まった世界に描く。そしてかぐや姫は、ある罪を得たために地上に生まれたことになっていました。罪とは何だったのか? 監督は大胆な脚色を試みます。先ずは生まれてたった半年で成人に成長した姫の少女時代を、自然児として描きます。鳥虫けもの草木花、そして春夏秋を美しく描き、木地師の捨丸との交情を丁寧に描いたあと、竹取の翁は天から授かりものの姫を「幸せに」するために都に家を建てて突然引越すのです。 劇中なんども歌われる印象的なわらべ歌があります。特にその後半はかぐや姫だけが(なぜか)知っていたとして、このように歌われます。 「回り巡れ巡れよ遥な時よ、巡って心を呼び返せ。鳥虫けもの草木花、人の情けを育みて、まつとし聞かば今かへりこむ」 ー自然に親しみ、人の心を取り戻し、愛しい人が本当に私を待ってくれているならば、すぐにでも帰ってきます。ラスト近くに明かされるその歌の真の意味が、どうやら姫が月から地球に降り立った本当の理由らしいのですが、正直、一回観ただけでは観客の私たちにはピンと来ません。 アニメだから描ける詳細な時代考証、大胆な筆使いによる心理描写。高畑監督は、毎回同じタッチでは映画を作りませんでした。いつも実験作と言われるものを作って来ました。今回2回目を観て、私はやっと監督の描きたかったものが、単なる恋愛譚でもなければ、権力批判でもなく、壮大な自然賛歌であり、人間賛歌だったことに気がついたのです。言うなれば地球賛歌です。傑作でした。 監督は次は平家物語を構想していたらしい。岡山空襲で奇跡的に生き延びた監督のつくる、戦争と平和の物語をホントに観たかった。心からご冥福をお祈りいたします。 (2013年作品、レンタル可能、18日にはテレビ放映あり)
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最終更新日
2018年05月16日 11時15分07秒
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