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カテゴリ:邦画(12~)
「歩いても歩いても」 今日は先月亡くなった樹木希林さん出演の作品を紹介します。この一ヶ月いろんな番組が作られていますが、私は女優に絞って書きたいと思います。 樹木さんが主演をつとめた作品を、私は今まで二回紹介しています。ゆっくりと呆けてゆく役をリアルに演じた「わが母の記」(13年5月号)と、ハンセン病患者の人生を垣間見せた「あん」(16年2月号)です。 実は私には、その年のマイベストワンに決めながらもDVDが出ていないために、みなさんに紹介出来ていない作品が二つもあります。「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」 (13)では樹木さんは死刑囚の母親役を、淡々と生きる夫婦のドキュメンタリー「人生フルーツ」(16)ではナレーションを勤めています。機会があれば必ず観てください。ふたつとも凄い作品なんです。有名無名を問わず、主役端役を問わず、樹木さんは的確に出演作を選んでいます。 2005年に自身がガンを患って摘出手術をして以降、樹木希林は個性派俳優から大女優に変貌したと私は思っています。 ガンの経験をたった一年後に活かした作品があります。私が1番最初に樹木さんを見直した作品「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(07)です。後半の抗ガン剤治療に七転八倒で苦しむ主人公の母親の姿は、鬼気迫るものがありました。そしてその直後に樹木さんは全く違うタイプの役に出ているのです。 是枝裕和監督が長男の命日に集った家族の1日を描いた「歩いても歩いても」(08)です。愛しながらも、シコリがあって素直になれない家族の気持ちを見事に写し取った秀作です。主演は阿部寛、女優は夏川結衣でしたが、脇役が主演を食った典型的な映画だったと私は思います。樹木希林は、最初穏やかな母親として登場します。でも、長男を亡くす原因になった子供を15年経っても許していません。夫の浮気を何十年も忘れない、ぞっとする演技もあります。清濁併せ持つ普通の母親の姿を見せて、今観ると凄みさえあります。今年初共演の黒木華が「樹木さんは役を生きている」と評していましたが、私もそう感じています。ガンや内田裕也との長い別居生活をも自分の中で咀嚼消化して、人生を役の中に刻みつけた気がします。遅れて来た平成の大女優でした。(2008年作品レンタル可能)
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