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カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「数え方でみがく日本語」飯田朝子 ちくまプリマー新書 数え方は雑学ではない、と著者は言います。その証拠に著者は数え方専門で教授にまでなりました。 「今年度の卒業生は250名/250人です」どちらも正しい言い方だけど、意味は違う。さて、どう違うのでしょうか? 名簿で把握しているのか、どうかの違いです。 というように、数え方は「私たちのものの捉え方の体系」だということらしい。 人や名のように数えるときに使う名詞を助数詞と言います。主なのはおよそ500種類。ところが、外国語には日本のように豊富な数え方を持たない国が多い。英語やフランス語、ドイツ語、スペイン語などですね。その代わり、これらの国には名詞に冠詞があり、複数形があり、ジェンダー(男性、女性、中性)があります。つまりそれらの国では、しゃべるときにいつもそのことを意識しているということです。裏を返せば、日本語では名詞そのものに含まれる情報量が少ないということか。 それらがない中国と日本では、では考え方が同じかというと違う。中国ではラクダは一頭二頭ではなく、一峰と数えるそう。なるほどなあ、と私は納得する。文化交流で一頭のみやってくるか、日常的に峰で数える生活をしているかの違いなんですね。 数え方を使い分ける着眼点が違う国を比較すると面白い。ミャンマーで話されているビルマ語も日本語と同じような助数詞があります。そこでは、ニワトリの卵も家も家具も同じ「loun」を使う。 ネパール中央で話されているネワール語では、(1)人間・動物を数える「maha」、(2)植物を数える「ma」、(3)その他の無生物を数える数え方群があるらしい。それで行くと「細菌」は(1)になるらしい。 英語にも数え方がある。本来抽象的で形がないものや、はっきりした輪郭がない物体や物質は、数えられない不可算名詞になっています。それでも数えなくちゃいけない。「三つの証拠」ならばthree pieces of evidenceとなります。英語では生き物が群れをなしていると、その群れを集合名詞で表現するちょっと粋な技法がある。「一群のライオン」→a pride of lions。なんとなくわかる。ではカラスは?コレはa murder of crows(ひと殺人のカラス達)となるらしい。物騒です。やはり英語圏は大陸で、かつキリスト教圏だからだろうか。 著者は「ものの捉え方の体系」だということを、きちんと教育すべきだと訴えます。ところが、実際には「数え方」は算数の問題で突然出てくる。著者は小学校一年生の「たろうくんは、ぶんぼうぐやさんで、ノート五さつとえんぴつ六ほんかいました。あわせていくつかいましたか?」で躓いたらしい。どうして「さつ」と「ほん」を買ったのに「さつほん」などではなく「つ」になるのか?しかも、答案に「十一つ」と書くと「答えは十一だけでいいです。つ、はいりません」と書かれているそうです。「いくつ?と聞いてきたからつで答えたのに、こたえが十一になった途端に答え方も変わるなんてあんまりだ」うーむ、飯田さんとっても優秀です。 最後の方は、日本語の数え方の総点検になっていました。全部書ききれないけど、勉強のために出来るだけメモします。 ・生き物の数え方には基本の3種類がある。 (1)鳥類を数える「羽」 (2)人間よりも大きな生き物を数える「頭」 (3)人間よりも小さな生き物を数える「匹」 よってセントバーナードは一頭、チワワは一匹。 では、オニは1人?一匹?それは「どんなオニか」で変わります。絵本では人間に友好的になると突然数え方が匹から人になるそうです。最近のマンガを確かめたくなります。←コレ、日本以外の国はどうなんだろう‥‥。 ・ロボット犬AIBOは?「台」でも「匹」でもなく「体」で数えます。人間や生き物の形をしているものは「体」になる。よって、雪だるまや埴輪、銅像や仏像も「体」になる。 ・電車は元は「輌」で数えていたので「両」になる。大型客船は「隻」、小さい船は「艘」。空を飛ぶ乗り物は「機」、ラジコン飛行機は人が乗れないので機械と同じ「台」。←ならばドローンは「台」だな。でもやがて「体」になるのかな‥‥。 ・「台」で数えるものは「それだけで機能する」特徴があり、パソコン、携帯、テレビに冷蔵庫、自販機など。一方、本体がなければ機能しないもの、マウスやイヤホンは「個」「セット」。 ・建物には「軒」「戸」「棟」の数え方がある。 では、「赤い屋根の家が二軒並んでいる」とは言えるが、ほかの数え方はない。「二万戸が停電した」とは言えるが軒はない。「住宅が倒壊」「新築住宅が完成」の時には「棟」を使う。また、「基」は地面に据えて1人の力では動かせないもの。信号機、エレベーター、ベンチ、お墓、古墳、ダム、発電所など。←日本にある古墳はおよそ三万基です。 ・(これは飯田さんの研究の成果ですが)「縦の長さと横の長さの比が1対3以上のものは本で数える。他は個、鉛筆、ストローは本、印鑑は個。 ・本でポンの数え方の時。「一筋の煙突から一本の煙が立ち上がった」とは言わない。何故なら、本は途中途切れないもの。筋は定まった形を持たず、細長く切れ切れに続くものを数えるから。「電車一本乗り遅れた」のは「運行本数」を数えているから。練習メニュー十本は?時間軸に沿って行われる内容をひと続きに見立てる。では柔道の「一本」は?「心技体を一本化することで、技が決まるから」と大学の選手は異口同音に答えたそうです。 ・腕試し問題で、私が間違えたヤツ。 (1)「歓迎パーティーには、およそ30()の会員が参加しました」 (2)「大きなヒグマの剥製は1()」 (3)「人間を助けてくれる鉄腕アトムは1()と数えます」 (4)「財布の中を見ると500円玉が2()入っていた」 (5)「部屋がとても暑かったので、背中を汗が1()流れた」 ‥‥うぅ難しい。 というわけで、正解はこの1番下に載せますが、詳しい解説は本を紐解いてください。 あらゆるクイズ番組に参加する人は、一度(回ではない)は、この本を紐解いた方がいい。 【答】1 人、2 体、3 人、4 枚、5 筋 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年09月17日 07時57分47秒
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