|
カテゴリ:PC『星空のメモリア』
『星空のメモリア』感想 第十六回 “蒼 衣鈴”編
無気力、無関心、勉強嫌い、人間嫌い。 そのくせ寂しがり屋でホームシックという、非常に難しい性格をしている。 千波と並んで、放って置いたらニートになりそうな女の子だ。 ※以下、ネタバレ注意 前回のあらすじ。 衣鈴がなかなか打ち解けてくれない。
【9月10日】 中庭にて、衣鈴を囲んで餌付けタイム。 衣鈴が中庭で昼食を摂りはじめたのは、つい最近らしい。 「……千波さんがついて来ようとするので、二学期からはここに変えました」 千波は相当な人気者だという話だ。 …敵を作りそうな性格でもあると思うけど、上手くやっているみたいだな。
餌付けされた衣鈴、部室に来訪。 まずは座らせ、ドアのカギを閉めて、全員で完全包囲……って本当こんなんばっかだなおい。 「今日はベーグルだよ。食べて食べて」 衣鈴にエサを与えつつ、ミーティング開始。 「来月の学園祭の出し物案を各自考えて置くように」とのことだが、明日歩の時の天体写真展でいいんじゃないの。 話が終わって、さっさと逃げようとする衣鈴を押し止め、部費で買った望遠鏡のキャリングケースをプレゼント。 「ぽいっ」 捨てた。 その後も何とかして受け取らせようとするが、返って警戒心を抱かせてしまったようだ。 「……先輩方は死んだらいいと思います」 なぜそこまで意固地になる? とりあえず、受け取っておいて後で捨てるとか、そういう底意地の悪いことは出来ない娘だということはわかったと、前向きに考えておくか。
夜、衣鈴と二人で学校の屋上へ。 そこに、バタバタと現れるメア。 「言うこと聞かないと、めっするからね!わかってるのっ、めっだからねっ!」 展望台で撮って貰った写真を、かーくんに奪われてしまったらしい。 飛び回るかーくんを、衣鈴は望遠鏡で叩いて撃墜。 大事にしてるんじゃないのかよ…。
帰り道、衣鈴にお礼を言われる。 メアを鈴葉に紹介してくれてありがとう、と。 「鈴葉も、私と一緒で……でも私とは違う理由で、友達が少なかったから」 「そんな鈴葉が、メアさんと同じで、写真を大事にしてるから……」 …確か、衣鈴も昔は友達いたんじゃなかったっけ? 性格が悪くなったのは科学館が閉館してからだ、と自分で言っていたような気がする。 衣鈴は、あの望遠鏡は科学館の館長に貰ったものだ、と教えてくれた。 「閉館した前日――プラネタリウムの最終上映が終わったあとに、渡されたんです」 その時、屋上のカギも一緒に貰ったそうな。 何者なんだ、その館長とやらは。
【10月1日】 ……。 日付が一気に飛んだな。 学園祭で、天クルは自作のプラネタリウムで“南天の星空を”上映するそうだ。 露骨に衣鈴の誘引を狙っているが、当の衣鈴のテンションは下がり気味。 「……なんか飽きました」 準備を放棄して帰ろうとする衣鈴を、明日歩の手作りお菓子と、岡泉先輩のDVDで何とか引き止める。 明日歩が最初からデレッデレだった分、衣鈴の手強さが際立つ展開だ。 …まぁ、明日歩も別の意味で手強かったんだけど。
夜、学校の屋上。 衣鈴が席を外した時、洋は何の気なしに衣鈴の望遠鏡を覗く。 「……え?」 そこには暗闇があった。 夜空は見えない。 何も見えない。 この望遠鏡は壊れている。 やがて戻って来た衣鈴に、洋は疑問をぶつける。 「なんで星空が見えない望遠鏡を覗くんだ?」 「なんで……それで、満足だなんて言うんだ?」 衣鈴は冷静だ。 勝手に望遠鏡に触った洋を怒ることもしない。 「私は、天体観測が好きなんじゃないんです」 「想い出の星空が好きなだけなんです」 「だから、暗闇でも問題ない……」 「どうせ、雲雀ヶ崎からは見えない星空なんですから」 ……なんだ。 結局、何も解決してなかったのか。 明日歩ルートでも、衣鈴はずっと、壊れた望遠鏡を覗いていたのか。 「私……怒ってませんから」 「いずれこうなることは知っていたから」 あれだけ皆で干渉しても、衣鈴は少しも心を開いてなどいなかった。 徒労感が酷い。 ……。 が、これは、よく見れば明日歩ルートと同じ展開でもある。 回りの声が届かない程の絶望を齎す物。 あれこそ、衣鈴にとっての“悪夢”なんじゃないか。
【10月10日】 学園祭が終わり、振り替え休日。 結局、衣鈴は天クルのプラネタリウムを見なかった。 衣鈴は、友達なんかいらないと思いつつも、洋のことを思い出して胸を痛めている。 「……望遠鏡のこと、知られたくなかったのかな」 自問する衣鈴。 あと一押しだと思うんだけどな…。
部活をサボった衣鈴を置いて、今後の天クルの活動方針が決まった。 「それでは、あたしたち天クルは今後オーロラについて調査し、あわよくば写真を撮ってコンクールに応募してみたいと思いま~す!」 明日歩が元気で大変良いことだ。 が、オーロラを撮るとなると、屋上の常時解放が必須になる。 いつものように、こもも頼りになった。 「純潔を奪う覚悟で迫れば確実だと思いますよ」 交渉にかこつけて、こももの純潔を狙うこさめ。 …この人、こももルートに入ったらどんな反応するんだろうか。
放課後、閉館された宇宙科学館に足を運ぶ洋。 内部に忍び込めるかどうか吟味していると、敷地内に謎の人影が……。 しかも、影になっていてよく見えないが立ち絵がある。 こいつが噂の“館長”だろうか。 「……不審者、発見」 衣鈴登場。 呆れ顔が可愛い…。 衣鈴は科学館ではなく、その近くの港に用があるようだ。 洋が例によってノコノコとストーキングすると、衣鈴は港に佇み、夕焼けに染まる水平線を眺めている。 「この風景は、どこか南天の星空に似ているから」 「私が好きな星空に似ているから」 「オーロラに似ているから……」 ここでオーロラか。 流石にこれは難しいんでないの?
蒼宅。 「……そろそろ、いいよね」 「距離、置かないと……」 離れるのが辛くなる前に、洋たちと距離を置こうとする衣鈴。 「もう、嫌だから……」 恐らく、衣鈴は一度、日常の崩壊を経験している。 別れが悲しいから友達なんていらない、という割とわかりやすい考え方だな。
小河坂邸で、もう一緒に食事は摂らないと宣言する衣鈴。 「もし気が変わったら、いつでも言ってね。小河坂家一同、待ってるからね」 詩乃さんの言葉は暖かいが、待っていたら衣鈴は逃げるだけだ。 そう思いつつ、洋は衣鈴を好きになりかけている自分に気づくのだった……って「なりかけている」だけかい。
【10月11日】 こももにこさめをけし掛けて、屋上の常時解放を迫る。 が、生徒会に掛け合うには、“不良部員”の存在がネックになるらしい。 衣鈴を天クルに引き戻す為には、今度は科学館のプラネタリウムを利用するしかない。 市役所で相談しようとする洋だが、明日歩に別の名案があるようだ。 「うちのお父さん、昔は科学館に勤めてたから」 なるほど、マスターがいたか。
ミルキーウェイに到着し、マスターの話を聞く。 「閉館の理由は、維持費がかさんで採算が取れなくなったからだよ」 「……夢も希望もない理由だね」 「子供に夢を与えるにもお金がないと難しいんですね」 だが、夢とか希望のある閉館理由を考える方が難しいのではないか。 「館長が辞職したからという噂も聞いたことがありますが……」 そっちはただの噂で、館長は今でも投影機の整備のために科学館に通っているそうだ。 かつて、科学館は天文台だった。 それが、街に隕石が落ちて住民の天文熱が高まったのを機に、宇宙科学館に改装されたらしい。 まぁ要するに、「プラネタリウムはまだ使える」ということだ。 「プラネタリウムの使用が可能だとしても、僕は賛成しかねるけどね」 そう言って、明日歩をじっと見つめる。 「……お父さん、あたしが天文クラブに所属するの、反対したけど。またそういうことするの?」 マスターは苦笑いをしたが、館長に連絡を取ることを約束してくれた。 マスターが星を嫌う必要なんか無い筈なのに、歯痒いな…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[PC『星空のメモリア』] カテゴリの最新記事
|