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カテゴリ:PC『星空のメモリア』
『星空のメモリア』感想 第三十八回 “???”編
※以下、ネタバレ注意 前回のあらすじ。 洋は、夢の病室に足繁く通い続ける。 【10月18日】 あとどれだけ、この日々が続くんだろうな…。 まさか、夢の病気の詳細にはノータッチのまま行くのか…。 放課後、廊下で例のオルゴールを抱えた岡泉先輩に会う。 修理が終わったようで、動作確認の為にネジを巻き……音楽が鳴り出すと同時に、飛び上がって奇声を上げる先輩。 「うへへへぇぇ……ひさしぶりのシャバの空気だぜぇぇ……」 「そうか……夕べは死兆星がちらついたからな……そこに過剰な興奮で……うへへへぇぇ……」 …なにこれ。 いきなり何か始まったぞ。 「このオレサマはあんたのいう岡泉じゃねえ。温土じゃなくて凍土だ」 まさかの多重人格者。 確かに露骨に情緒不安定な人だったけど、この発想は無かった。 「この身体はある特定の電磁波に過敏に反応するのさ。アレルギーみたいなもんだ」 「温土のやつが死兆星と呼んでる星の光のことだがな。そいつを浴びてなにかしらキッカケがあると、ご覧のとおりってわけさ」 ……これ、よく考えたらこさめさんと似たような症状じゃないか? 呆気に取られる洋に、割と親身に事情を説明してくれる凍土。 最後に、岡泉先輩と凍土は別人だが、その本質は同じだと言う。 「認めたくはねえけど、変わったようでいて変わってねえってことなんだ」 「だから、天体観測なんぞは理解に苦しむが、雲雀ヶ崎の星空は嫌いじゃねえよ」 「ここは死兆星もよく見えるからな」 ……。 変わったようでいて、変わってない。 皆して同じようなことを言うなぁ…。 夢の病室。 「…………」 「なんだ、じっと見て」 「そっちこそ、女の子のパジャマ姿をまじまじ見てたのはどうかと思うよ」 じぃ…。 ……夢の格好って胸元が少し無防備だけど、下着つけてんのかな。 人と会うんだから普通つけるよな……いやしかし、まさかと言うことも有り得るか……。 「部活動、楽しい?」 「楽しいよ」 「学校、楽しい?」 「楽しいよ」 「そっか。よかった」 キミは洋くんのお母さんか。 そんな気の抜けた会話の途中、洋はニコニコしている夢の姿を、過去の思い出と重ねる。 回想、七年前の展望台。 「洋君、誰に優等生だなんて言われてるの?」 「担任の先生とか」 「そのひとがしょあくの根源なんだね」 「ダメだよ洋くん、その人のかんげんに耳を貸さないように注意しないと」 洋は昔から優等生だった。 夢は、昔に比べると大分落ち着いてしまったな…。 「……どうしてそこまで悪く言うの」 「先生なんてそういうものだよ」 「学校なんて、そういうものだよ……」 「学校、嫌いなの?」 「……」 変わったように見えて、夢の本質は変わっていない。 なら、夢が学校を嫌っているわけがないだろう。 夢の声で、回想から引き戻される。 夢は都会で天体写真を撮ろうとしたが、光害のせいで上手く撮れなかったと言う。 「写真は夜空のはずなのに、真っ青に写ったんだよ」 「おばあさまは、これもやっぱり光害のせいだと言っていたけど……私はそのときね、都会の夜空は、雲雀ヶ崎の青空に似てるって思ったんだ」 「だから、私は都会の星空も好きになれたんだよ」 不満があるとすれば、都会では流れ星が見えないこと。 洋は、何か願い事でもあるのか、と質問する。 「……そうだね。だけど、私は、もう願い事をしちゃってたから」 「星の神さまだっていくつも願い事されたら大変だろうし、一つで充分だって思うことにしたよ」 ……何故だろう、前々から思ってたけど、夢の発言の端々にレンっぽい単語が見える。 夢の宇宙観は、レンと共通しているような気がする。 夜、展望台。 夢との会話を反芻しながら、メアの頭を撫で回す……いつも通りの夜だ。 メアは一人じゃない、と言い含める洋に、そんなことは知ってる、と返すメア。 「約束があるんだから」 「約束は一人では交わせないから……だから、わたしは一人じゃない」 「だからわたしは決して約束を破ることはしない――――」 誰かとの“約束”がメアの拠り所。 夢とメアがどんな約束を交わした結果、洋は思い出を奪われたんだろう…。 【11月17日】 また時間が飛んだ。 夢との再会から一ヶ月、洋は連日お見舞いに通っていた。 夢は検診から戻ってきた後、病室で待っていた洋に疑惑の視線を向ける。 「ベッドの下とか漁ってたらやだなって」 「なにか隠してるのか」 「エッチな本」 そ、それは興味あるなっ。 しかし甘い、エロ本の安全な隠し場所と言えば、引き出しを外した奥のスペースだと相場が決まっているのに。 「ウソに決まってるよ」 ……そうですか。 軽口が終わると天文談義が始まるのは一ヶ月前と同じ。 「夢は天文学者になりたいのか?」 「考えたことなかったけど。なれるならなってもいいかな」 「学者になるには、天文学だけじゃなくて他の教科も勉強しないとな」 「天文学者にならなくていいや」 こういう現金なところも可愛いな…。 夢が可愛いからこそ、奥歯に物が挟まったような関係はいい加減止めにしたい。 そろそろ決着をつける時だろう。 「俺たちが昔一緒に遊んでたって、認めてくれるのか?」 「認めないよ。うん、認めない」 「ネタはあがってるんだけどな」 「あがってないよ。うん、あがってない」 「俺、夢を忘れることは二度とないから」 そう、二度と忘れるな。 夢が本当に大事なら、悪夢なんて蹴っ飛ばして見せてくれ。 「…………」 「俺、夢のことが……」 お……。 洋は夢に告白する決意を固めているが……その前に、夢の病気について聞いておけ。 このままだと明日歩の時の二の舞を演じるぞ。 「私のことが……何?」 「また明日、来るよ」 「……話の途中だったよ?」 「それも含めて、また明日」 明日…。 やばい、ちょっとドキドキしてきたわ。 「話しづらいことだったの?」 …煮え切らない洋の態度に、夢は不審がっている。 それどころか「警戒している」って態度に見える…。 「洋くん」 「変な話だったら、お見舞い禁止にするからね」 さすがに勘付かれたか。 あからさまな牽制球を投げる夢にも、洋は全く怯まない。 でも、今のままじゃ勝算薄いんじゃないの…。 展望台、洋を待つメア。 かーくんを膝に抱き、洋が夢と会っていることについて考えている。 洋は夢のそばにいる。 その状態は、夢との約束を反故にしていることにならないだろうか。 洋の悪夢を刈ってしまえば問題は解決するが、それは彼を酷く悲しませることになる。 メアも悲しくなる。 「どうしたら……いいのかな……」 「……そうですね」 「キミはまず、隠れるべきだと思います……今のままでは、無用心ですから……」 レンが姿を現す。 「これが初対面ではない」というレンだが、メアは警戒を解かない。 「あなたみたいな子供、知らないわ」 「キミよりも大人です……」 「わたしのほうが大人よ」 「クスクス……ちゃんちゃらおかしー……」 「……腹立つんだけど」 メアと適当に口喧嘩した後、そそくさと帰ろうとするレン。 遊びに来たのか。 「結局なにしに来たの、あなた」 「いけない巫女を見かけたので……びっくりさせて追い払ったんです……」 げっ、星天宮か。 夢に気を取られて忘れてた…。 レンはメアと別れた後、大河と合流し、星天宮の社殿に向かい万夜花さんを訪ねる。 三人で例の巫女について対策を練っているようだ。 とりあえず、本社の狙いはこさめだ、と当たりをつける。 帰り際、今さらになってレンがどういう存在なのか疑問を持つ万夜花さん。 大河は、千波ルートの説明を繰り返す。 「この隕石に宿っていたレンが、隕石が放つ未知の光によって、俺たちの前に映し出されているんだよ」 「星の投影機ってやつさ」 「なのに見るだけじゃなくさわることもできるなんて、ほんとレンって不思議ねえ」 「あ、頭……撫でないでください……」 …なんだか親しげだ。 過去の天文部でも、レンは皆に可愛がられていたんだろうか…。 【11月18日】 今日こそ夢に告白するのだと、意気込んで病室を訪ねる洋。 夢はいなかった。 ベッドも綺麗に整えられたまま、いつまで待っても帰って来ない…。 不安になった洋が立ち上がると同時に、ドアが開いた。 「あ、洋くん」 夢はいつもの調子で、洋に歩み寄る。 ……驚かせないでくれよ。 「今日もお見舞い来たんだね。タイミング悪いなあ、結構待ったんじゃないの?」 「シーツを代えてもらってたから、検査が終わったあともロビーで暇つぶしてたんだけど……」 だから明日も来るって言ってあったでしょうに。 そのまま、腕を伸ばせば触れる距離まで近寄ってくる夢。 この無防備さはメアを思い出すぜ…。 洋は思わず、夢の身体を抱き締める。 よし行け……でもあんまり負担かけるようなことはしないでくれよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.03.08 02:01:20
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