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2010.03.08
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『星空のメモリア』感想 第三十八回

“???”編





もっと“彼女”の色々な表情が見たい。

しかし再会を果たしてからというもの、彼女は明るい表情しか見せてくれない…。

初期には確かに漂っていた死の匂いも、いつの間にかすっかり消えてしまった。

とにかく情報が足りない。洋はもっと頑張れ。



※以下、ネタバレ注意















































前回のあらすじ。

洋は、夢の病室に足繁く通い続ける。


【10月18日】


あとどれだけ、この日々が続くんだろうな…。

まさか、夢の病気の詳細にはノータッチのまま行くのか…。



放課後、廊下で例のオルゴールを抱えた岡泉先輩に会う。

修理が終わったようで、動作確認の為にネジを巻き……音楽が鳴り出すと同時に、飛び上がって奇声を上げる先輩。

「うへへへぇぇ……ひさしぶりのシャバの空気だぜぇぇ……」

「そうか……夕べは死兆星がちらついたからな……そこに過剰な興奮で……うへへへぇぇ……」


…なにこれ。

いきなり何か始まったぞ。

「このオレサマはあんたのいう岡泉じゃねえ。温土じゃなくて凍土だ」

まさかの多重人格者。

確かに露骨に情緒不安定な人だったけど、この発想は無かった。

「この身体はある特定の電磁波に過敏に反応するのさ。アレルギーみたいなもんだ」

「温土のやつが死兆星と呼んでる星の光のことだがな。そいつを浴びてなにかしらキッカケがあると、ご覧のとおりってわけさ」


……これ、よく考えたらこさめさんと似たような症状じゃないか?

呆気に取られる洋に、割と親身に事情を説明してくれる凍土。

最後に、岡泉先輩と凍土は別人だが、その本質は同じだと言う。

「認めたくはねえけど、変わったようでいて変わってねえってことなんだ」

「だから、天体観測なんぞは理解に苦しむが、雲雀ヶ崎の星空は嫌いじゃねえよ」

「ここは死兆星もよく見えるからな」


……。

変わったようでいて、変わってない。

皆して同じようなことを言うなぁ…。



夢の病室。

「…………」

「なんだ、じっと見て」

「そっちこそ、女の子のパジャマ姿をまじまじ見てたのはどうかと思うよ」

じぃ…。

……夢の格好って胸元が少し無防備だけど、下着つけてんのかな。

人と会うんだから普通つけるよな……いやしかし、まさかと言うことも有り得るか……。

「部活動、楽しい?」

「楽しいよ」

「学校、楽しい?」

「楽しいよ」

「そっか。よかった」

キミは洋くんのお母さんか。

そんな気の抜けた会話の途中、洋はニコニコしている夢の姿を、過去の思い出と重ねる。




回想、七年前の展望台。

「洋君、誰に優等生だなんて言われてるの?」

「担任の先生とか」

「そのひとがしょあくの根源なんだね」

「ダメだよ洋くん、その人のかんげんに耳を貸さないように注意しないと」


洋は昔から優等生だった。

夢は、昔に比べると大分落ち着いてしまったな…。

「……どうしてそこまで悪く言うの」

「先生なんてそういうものだよ」

「学校なんて、そういうものだよ……」

「学校、嫌いなの?」

「……」

変わったように見えて、夢の本質は変わっていない。

なら、夢が学校を嫌っているわけがないだろう。




夢の声で、回想から引き戻される。

夢は都会で天体写真を撮ろうとしたが、光害のせいで上手く撮れなかったと言う。

「写真は夜空のはずなのに、真っ青に写ったんだよ」

「おばあさまは、これもやっぱり光害のせいだと言っていたけど……私はそのときね、都会の夜空は、雲雀ヶ崎の青空に似てるって思ったんだ」

「だから、私は都会の星空も好きになれたんだよ」


不満があるとすれば、都会では流れ星が見えないこと。

洋は、何か願い事でもあるのか、と質問する。

「……そうだね。だけど、私は、もう願い事をしちゃってたから」

「星の神さまだっていくつも願い事されたら大変だろうし、一つで充分だって思うことにしたよ」


……何故だろう、前々から思ってたけど、夢の発言の端々にレンっぽい単語が見える。

夢の宇宙観は、レンと共通しているような気がする。



夜、展望台。

夢との会話を反芻しながら、メアの頭を撫で回す……いつも通りの夜だ。

メアは一人じゃない、と言い含める洋に、そんなことは知ってる、と返すメア。

「約束があるんだから」

「約束は一人では交わせないから……だから、わたしは一人じゃない」

「だからわたしは決して約束を破ることはしない――――」


誰かとの“約束”がメアの拠り所。

夢とメアがどんな約束を交わした結果、洋は思い出を奪われたんだろう…。




【11月17日】


また時間が飛んだ。

夢との再会から一ヶ月、洋は連日お見舞いに通っていた。

夢は検診から戻ってきた後、病室で待っていた洋に疑惑の視線を向ける。

「ベッドの下とか漁ってたらやだなって」

「なにか隠してるのか」

「エッチな本」

そ、それは興味あるなっ。

しかし甘い、エロ本の安全な隠し場所と言えば、引き出しを外した奥のスペースだと相場が決まっているのに。

「ウソに決まってるよ」

……そうですか。

軽口が終わると天文談義が始まるのは一ヶ月前と同じ。

「夢は天文学者になりたいのか?」

「考えたことなかったけど。なれるならなってもいいかな」

「学者になるには、天文学だけじゃなくて他の教科も勉強しないとな」

「天文学者にならなくていいや」

こういう現金なところも可愛いな…。

夢が可愛いからこそ、奥歯に物が挟まったような関係はいい加減止めにしたい。

そろそろ決着をつける時だろう。

「俺たちが昔一緒に遊んでたって、認めてくれるのか?」

「認めないよ。うん、認めない」

「ネタはあがってるんだけどな」

「あがってないよ。うん、あがってない」

「俺、夢を忘れることは二度とないから」

そう、二度と忘れるな。

夢が本当に大事なら、悪夢なんて蹴っ飛ばして見せてくれ。

「…………」

「俺、夢のことが……」

お……。

洋は夢に告白する決意を固めているが……その前に、夢の病気について聞いておけ。

このままだと明日歩の時の二の舞を演じるぞ。

「私のことが……何?」

「また明日、来るよ」

「……話の途中だったよ?」

「それも含めて、また明日」

明日…。

やばい、ちょっとドキドキしてきたわ。

「話しづらいことだったの?」

…煮え切らない洋の態度に、夢は不審がっている。

それどころか「警戒している」って態度に見える…。

「洋くん」

「変な話だったら、お見舞い禁止にするからね」


さすがに勘付かれたか。

あからさまな牽制球を投げる夢にも、洋は全く怯まない。

でも、今のままじゃ勝算薄いんじゃないの…。




展望台、洋を待つメア。

かーくんを膝に抱き、洋が夢と会っていることについて考えている。

洋は夢のそばにいる。

その状態は、夢との約束を反故にしていることにならないだろうか。


洋の悪夢を刈ってしまえば問題は解決するが、それは彼を酷く悲しませることになる。

メアも悲しくなる。

「どうしたら……いいのかな……」

「……そうですね」

「キミはまず、隠れるべきだと思います……今のままでは、無用心ですから……」


レンが姿を現す。

「これが初対面ではない」というレンだが、メアは警戒を解かない。

「あなたみたいな子供、知らないわ」

「キミよりも大人です……」

「わたしのほうが大人よ」

「クスクス……ちゃんちゃらおかしー……」

「……腹立つんだけど」

メアと適当に口喧嘩した後、そそくさと帰ろうとするレン。

遊びに来たのか。

「結局なにしに来たの、あなた」

「いけない巫女を見かけたので……びっくりさせて追い払ったんです……」

げっ、星天宮か。

夢に気を取られて忘れてた…。



レンはメアと別れた後、大河と合流し、星天宮の社殿に向かい万夜花さんを訪ねる。

三人で例の巫女について対策を練っているようだ。

とりあえず、本社の狙いはこさめだ、と当たりをつける。

帰り際、今さらになってレンがどういう存在なのか疑問を持つ万夜花さん。

大河は、千波ルートの説明を繰り返す。

「この隕石に宿っていたレンが、隕石が放つ未知の光によって、俺たちの前に映し出されているんだよ」

「星の投影機ってやつさ」


「なのに見るだけじゃなくさわることもできるなんて、ほんとレンって不思議ねえ」

「あ、頭……撫でないでください……」

…なんだか親しげだ。

過去の天文部でも、レンは皆に可愛がられていたんだろうか…。



【11月18日】


今日こそ夢に告白するのだと、意気込んで病室を訪ねる洋。

夢はいなかった。

ベッドも綺麗に整えられたまま、いつまで待っても帰って来ない…。

不安になった洋が立ち上がると同時に、ドアが開いた。

「あ、洋くん」

夢はいつもの調子で、洋に歩み寄る。

……驚かせないでくれよ。

「今日もお見舞い来たんだね。タイミング悪いなあ、結構待ったんじゃないの?」

「シーツを代えてもらってたから、検査が終わったあともロビーで暇つぶしてたんだけど……」


だから明日も来るって言ってあったでしょうに。

そのまま、腕を伸ばせば触れる距離まで近寄ってくる夢。

この無防備さはメアを思い出すぜ…。

洋は思わず、夢の身体を抱き締める。

よし行け……でもあんまり負担かけるようなことはしないでくれよ。






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Last updated  2010.03.08 02:01:20
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