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伊奈利短歌 ツイ短歌 小説…伏見稲荷大社の物語 小説西寺物語 小説盆栽物語 小説鯖街道 小説老人と性 音川伊奈利

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2016年12月20日
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星伏見稲荷大社の物語…全国狐連合会26代目の会長「白藤」の襲名披露・キツネ灯の正体は「人魂」だった。 77話

代々この全国狐連合会会の会長は白狐の女狐が世襲制で選ばれていた。そして名前も「白藤」でこの白藤は25代目の白藤の長女だった。襲名披露は821年12月21日の午前0時からで場所は稲荷神社本殿裏、千本鳥居横の多目的広場と毎回決まっていた。この襲名披露には九州、四国、関東、東北など全国から1000匹の狐が招待されていた。

この日の夜、稲荷神社三代目の宮司の伊蔵は奥の院の茶店の座敷で酒を飲みながら下界を見ていた。大阪方面からは淀川から鴨川の土手、山陰街道の大枝山からもこの襲名披露に招待された狐がキツネ灯をゆらゆらさせながらこの稲荷山に向かって歩いているのが手に取るようにわかる。

このキツネ灯とは狐の大好物で主食の野ネズミやもぐら、イタチの骨になる。この狐の習性として捕獲して食べた骨や食べ残した物は穴に埋めるというのがあった。これはもしなにかの事情で食料が乏しくなった時に備えて穴に隠すというもので骨にはまだ肉もあるし、骨の中には隋もあるからこれを探して食べていた。これは狐に限らず少し頭のいいカラスもこの習性がある、それに野生の犬や猫にもかつてはあったそうだ。

その骨は穴の中で分解されて燐になる、つまり、人間社会でいう「人魂」(ひとだま)になるが、狐はこの燐が燃えた骨を口に咥えて狐の婚礼などの冠婚葬祭に参加するという儀式があったからだ。この日も全国の狐らはこの燐が燃える骨を咥えて1000匹もの狐が稲荷神社に向かっていた。伊蔵はこの日の襲名披露のために油問屋の山崎屋から荏胡麻の油を寄進していただき狐の大好物の「油揚げ」を1万枚揚げてそれを披露宴参加者の引き出物にしていた。

白藤の襲名披露は狐界の儀式にのっとり厳かに執り行われた後は宴会になった。この宴会は全国の狐らの情報源にもなり狐の病気のジステンパー、狂犬病ウイルスの対策などを話し合っていた。また、どこの地域が過疎になり若い男性の狐の嫁がいないなどの婚活情報も持ち寄っていた。それに全国的に広がった稲荷信仰だが、この祠に狐がいないためにどこそこの村が狐の移住を希望しているのもあった。

宴も半ばの頃、26代目の会長の「白藤」は宮司の伊蔵に挨拶に来ていた。もちろん人間の娘に化けていた。白藤は白地に紫の藤が描かれた着物を着ているが色白の肌がさらに透けているかの透明感がある超美人になっていた。白藤は、
「伊蔵さま、ありがとうございました。無事、襲名披露ができました」
「そうか~それはおめでとう。しかし、先代の白藤も綺麗だったが、お主もそれ以上に綺麗だ」
「はい、それはありがとうございます」
「ところで襲名披露の次は白藤の婚礼になるが、相手は決まっているのか?」
「いえ、私は結婚などいたしません」

この襲名披露が終わった後にはこの茶店に白藤が報告に来るという儀式になっていた。伊蔵ももう21代目から26代目までの6匹の挨拶を受けている。伊蔵は白藤に酒を勧めている、その色白の白藤の頬がほんのりピンク色になったころ、
「白藤はなぜ結婚をしないのか?」
「はい、私の母は伊蔵さまをお慕いしていました。しかし、狐の身分では想いがかなわないと泣く泣く私の父と結婚したそうです」
「ほう、私はそんなことは露知らなかった」
「その…実は私も伊蔵さまが大好きになりました。そこで私は伊蔵さまの好きなタイプを調べて一生懸命綺麗な女性に化ける努力をしました」
伊蔵も酒に酔ってきたのか目の前の妖艶な白藤の誘惑に負けていた。伊蔵の頭の中はもう白藤が狐であることを忘れて人間の本能のまま白藤を愛していた。

狐の宴会は思いのほか盛り上がり、恒例の稲荷神社の宮司への挨拶の時間より少し遅れて白藤は茶店に向かっていた。その座敷には伊蔵が待ちくたびれたのか、それとも酒に酔ったのか寝ていた。白藤は伊蔵を起こしている、そして目が覚めた伊蔵に、
「伊蔵さま、何か嬉しそうなお顔でいい夢でも見ていらしたのですか?」
「おぉぉ、あれは夢だったのか?」
「あら、起こして悪かったの?」
「いやいや、それより白藤、襲名おめでとう」
「はい、すべて伊蔵さまのおかげです」

伊蔵はまだ夢をみているような感覚の頭で考えている。しかし、さっきの夢の中の白藤とこの現実の世界の白藤が同じ白地に紫の藤の柄だが…こんな偶然があるのかと頭をひねっていた、しかも、伊蔵が最近よく夢をみるが、その夢の中の女性も同じ着物を着ていた。その伊蔵の夢とは月に一度か二度、飛び切りの美人が夢の中に現れて伊蔵と愛し合っていた。それも白藤だったのか…そこで白藤が、
「伊蔵さますいません、私の神通力でいつも伊蔵さまの夢の中に入り遊んでいただきました」
「ほう、あれはやはり白藤だったのか?」
「はい、申し訳ありません。狐の姿ではきっと伊蔵さまは嫌われると…」
「いや、こちらこそ…」
「伊蔵さま、また夢の中に遊びにいってもいいですか…」
「いや~それは嬉しいが…」
「それに、私のお腹の中には伊蔵さまの赤ちゃんが…」
「うんんんん…白藤のお腹に私の赤ちゃんが…」

もしもし~朝ですよ~旦那さん…それに「白藤って誰よ!それにお腹に赤ちゃん~また、不倫してどこかの女を腹ませたの!」…その声で目が覚めた伊蔵の前には怖い顔をした妻の和子が仁王立ちで立っていた。

ハート…画像はキツネと音川伊奈利
    

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最終更新日  2016年12月20日 07時17分21秒
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