実夏の通う学校の職員室
人影もない校舎の職員室に明かりが灯る
そこには校内の見回りを終えた棚橋の姿があった
棚橋は 疲れた表情で自分の席に着くと
机の引き出しからアドレス帳を出す。
写真の挟んであるページを開き
携帯電話を片手にメールを始める
『元気でいるかい。声を聞きたいけど大丈夫なら返事をください』
とだけメッセージをいれ送信した棚橋
切れかけた蛍光管の点滅を眺めながらため息めいた
表情を覗かせていた。
つくばエクスプレス 柏の葉キャンパス駅を顔を赤らめた者もいれば
携帯電話でメール、ゲームをしながら多くのサラリーマン風の人々が
降りてくる中に一人のある男性がいた。
※近年完成した鉄道で茨城県つくば市と秋葉原を繋ぐ高速鉄道
周辺には高層マンションが立ち並ぶ
彼は 鉄道高架下の駐輪場に向かい自転車を見つけ
鍵を差込 よろよろと走り出す。
街路灯もまばらなこの新しい街に彼の自宅がある
彼は官舎の駐輪場に自転車を仕舞 エレベーターで自室の階へ
自宅玄関前に着くと 表札には山本の名前が
山本実夏の父親 山本剛である。
玄関を入るとすぐ左手が娘の実夏の部屋である
軽く扉を開き娘の実夏が寝ているのを見かけると扉を閉め
リビングへ向かう
部屋の明かりをつけるが妻の一美はまだ帰宅しておらず居なかった。
剛は、リビングソファーに腰をかけて
テレビのリモコンを手にし
ニュース番組を見始める
ボーっとした表情でいる剛
タバコが吸いたくなり ベランダに出てタバコを吹かしながら
遠く点滅する都心の明かりに目を向けていた。
そこへ官舎の前を一台の乗用車が止まる。
先に男性が降りてきて助手席の扉を開けて女性を降ろしている。
剛はすぐにその女性が妻の一美であると気がつく。
妻の一美は剛がベランダから覗いているとも知らないで
男性と別れの抱擁を繰り返す。
何度も唇を重ね 一美は彼に手を振りながら
官舎のエントランスに消える。
剛はそれを見届けると 部屋に戻り下着姿になって
寝室のベットに体を潜らし寝たふりを決め込んだ。
そこへ部屋の鍵を開ける音がする。
一美が部屋に入りリビングテーブルに鍵を投げ出す。
寝室の扉を開ける一美
「あら めずらしく帰っていたの」と言葉少なく
そのまま一美は浴室に行き シャワーを浴び始める。
剛は 黙ったままベットに横になっていたが
仕事の明けと疲れでそのまま寝てしまう。