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カテゴリ:ペンシル
ペンシルの最高峰って何だろうと考えると、色々あるとは思いますが、イギリスの、あのメーカーが思い浮かびます。
スターリングシルバー製のペンシル。 イギリスの試金鑑定所の刻印が入ったホンモノ。 そうです。 「Yard O」・・・ 「Lette」? ここ笑うところじゃ、ありません。 「Yard O Lette」は、一応「Yard O Led」の製品と言われています。 軸が短めの女性用モデルが「Yard O Lette」であると。 ただし、海外のフォーラムでも、「と言われている。」とか「と思いたい。」と言った自信のない表現が目立ちますので、断言はしません。 また、「Yard O Led」の製品とされる根拠も見つかりませんでした。 この謎に、メスを入れるべく?、今回は、かなり頑張って検証してみます。 このペンシルは、トップ部分を回して芯を出し入れする回転繰り出し式。 逆に回せば芯を収納することもできるので、このあたりは「Yard O Led」と同じ仕様。 状態は良いのですが、目立つ凹みが1箇所。 それから、クリップが浮き気味になっています。 軸には刻印がありますが、一番右側の刻印は、(そう、見ませんが)レパードの顔です。 ですから、ロンドンの試金鑑定所で、鑑定を受けています。 右から、2番目のライオンマークは、金かスターリングシルバー製であることを示しています。 この場合、純度の刻印がないので、スターリングシルバー製。 「M」と言うアルファベットの刻印からは、鑑定を受けた年が分かります。 1947年に鑑定を受けているので、1947年製と見て間違いないでしょう。 一番左側のJM&Coと言う刻印は、製造元を表します。 「Yard O Lette」ブランドですが、ロンドンの「Johnson Matthey&Co.」が製造。 「Johnson Matthey&Co.」社は、たぶん「Johnson Matthey Plc」として現存していますが、現在は、ペンシルを作っていません。 ご丁寧に、クリップにもレパードの刻印が入っています。 一体となっていない部分にも、刻印を入れるんでしょうね。 口金や機構は別ですが、総スターリングシルバー製です。 勿論、クリップにもレパードの刻印があります。 「MADE IN ENGLAND」と「PATENT No.422767」の刻印。 422767の特許は、1935年に「LUDWIG FREDERICK BRENNER」という人物が取得しています。 「Yard O Led」の創業者は、「BRENNER」と言う人物なので、創業者ではないかと思いますが、創業者については、ファーストネームが「Leo」、「Leopond」だったと言う説もありますので、親子、兄弟での創業だったのかもしれません。 いずれにせよ。この特許は「Yard O Led」のものです。 実は調べてみると「Yard O Led」は謎の多いメーカーで、情報が限られています。 日本語Wikiの記述も間違いだったので修正しておきました。 さて、このペンシルを製造した「Johnson Matthey&Co.」ですが、実は、「Yard O Led」ブランドのペンシルを製造しています。 初期の「Yard O Led」は、工場も持って持っていなかったのか、スターリングシルバー製のペンシルは、「Johnson Matthey&Co.」か「Edward Baker&Son」の製造になっています。 「Yard O Lette」は、「Yard O Led」の製品説が真実味を帯びてきましたね。 私は、「Edward Baker&Son」こそ、現在の「Yard O Led」の母体であると思っているのですが、この話は別の機会に。 「Johnson Matthey&Co.」の「Yard O Led」のペンシル(下)と比較してみましょう。 この「Yard O Led」のペンシルは、1958年製。 女性用と言われているだけあって、「Yard O Lette」は小さいですね。 実際、長さは、97mmしかありません。 流石に製造元が同じだけあって、機構部(スライダー)も長さこそ違いますが、殆ど同じ設計ですね。 「Johnson Matthey&Co.」は、「Yard O Led」のペンシルも作っていましたから、仮に「Yard O Lette」は「Yard O Led」と無関係としても、同じ設計が許されたとは思えないです。 共に1.18mm芯を使用し、スライダーにリードホルダーを収めた2重構造も「Yard O Led」と同じです。 簡単に外せるパーツだけ、外すと、この様になりました。 大きな違いは、予備芯の収納部。 「Yard O Led」がメーカー名の由来通り、3インチ(76mm)の芯を12本格納でき、計1ヤードとなるよう、12個の仕切りがあるのに対して、ざっくり3個。 そもそも、予備芯の格納スペースなのかも分かりません。 このサイズでは、1ヤード分の予備芯を格納できないので、「Yard O Led」のブランド名は使えなかったとも考えられますね。 ちなみに3インチの芯を12本格納できる構造の特許(525231)は、1940年に取得しているので、「Yard O Led」最初期のペンシルの構造が気になります。 「Yard O Led」の芯、新旧比較です。 昔の芯は、3インチ(76mm)も長さがあるのに対して、現行の芯は、60mmと長さは標準的なもの。 現在は、謳い文句は嘘で「Yard O Led」でないと言う事か・・・。 ちなみに「Yard O Lette」には60mmの芯も長すぎます。 さて、謎は何も解決できませんでしたが、造りを見る限り「Yard O Led」と無関係と思い難いです。 少なくとも「Yard O Led」を真似た安価な模造品には見えません。 何らかの事情で「Yard O Led」が「Johnson Matthey&Co.」に許可を与えて製造された「Johnson Matthey&Co.」の独自ブランドとも考えられますが、謎ですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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大変興味深く拝見しました。よく調べておられますね。
僕は、Yard O Lette の存在すら知りませんでした。 それにしても、スターリングシルバーに独特のクリップ、このデザインにはそそられます。 (2010年06月04日 08時39分55秒)
シューちゃんさん
Yard O Letteは、海外のオークションやビンテージショップで、時々、見かけます。 (昔のYard O ledもそうですが、)スターリングシルバー製でないものも多いです。 存在がちょっと謎なんですが、造り自体は、確りしてますね。 (2010年06月04日 11時03分56秒)
歴史のあるメーカーとは思っていましたが、こんなに奥が深いとは知りませんでした。大変参考になりました。
(2010年06月04日 19時58分33秒)
ヤードオレッドの関連会社の製造なのかどうか、非常に興味をそそられる一件ですね!
それにしてもレッドのコッカーさん、よくぞここまで調べ上げられましたね!!! 凄いです(^^♪ (2010年06月04日 21時01分12秒)
ペン先EFさん
Yard O Ledについては、イメージが先行して、殆ど情報が無かったので調べてみたのですが、海外でも情報が少なくて苦労しました。 下請けが凄くて、Yard O Led自体は、凄いメーカーでは無いように思えてきましたが・・・。 (2010年06月04日 23時04分30秒)
マジェスティさん
Yard O Ledの製品かは分かりませんが、下請けのJohnson Matthey&Coの製品であることは間違いないと思います。 どうも1950年代までは、少なくともシルバー製ペンシルは下請けが製造していたようです。 1950年代になってYOL刻印のものが、ようやく出てきます。 もしかすると、Yard O Ledは、工場を持っていなかった可能性もあります。 (2010年06月04日 23時11分50秒)
こんばんは。謎の多いペンシルですね。
いろんなパーツに刻印があり、年代を感じさせると共に、高級感が伺えますね。 男性用と女性用で名称が異なる点が面白いですね。確かにそれぐらいの年代には、まだ男女間で差別があった時代なので、納得いきます。 (2010年06月05日 02時02分24秒)
ぽんすけ.さん
謎もビンテージペンの醍醐味なので、本人は結構、楽しんでいます。 試金鑑定所の刻印があるものは、年代を楽に特定できるので、難易度は低いんですが・・・。 (2010年06月05日 11時58分52秒)
こんな芸術品的なものも、バラすと実用品なんですね。
逆にこうしてバラせる人でないと、長く大切にはしてもらえないもんね。 私に当てはめると自転車になるのかな~ 私は明日から出張の嵐。。。。 長野県伊那、山梨県韮崎、南アルプス、名古屋、岐阜、京都というスケジュールです。 まず1週間は家に帰ってこれないでしょう。 現在、仕事しながら旅私宅の真っ最中です。 ☆ (2010年06月05日 14時50分51秒)
ちゃりメラマンさん
ご苦労様です。 体、壊さないように気をつけてください。 バラシテみると、ペンシルとしては複雑な構造でしたが、壊れそうな部分も少なく、よく出来てると思いました。 (2010年06月05日 16時38分51秒)
古いYARD O LEDの説明書にはYARD O LETTEも併記されていますので、YARD O LEDの製品で間違いありまへん。以前、オークションサイトでYARD O LETTEを売却した際、参考資料としてその画像を掲げたこともあります。
(2019年08月17日 09時36分45秒)
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