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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:マスコミ試写
ぐるりのこと。 映画の話 1993年、何事にもきちょうめんな妻の翔子(木村多江)と法廷画家の夫カナオ(リリー・フランキー)は、子どもを授かった幸せをかみしめていた。どこにでもいるような幸せな夫婦だったが、あるとき子どもを亡くしてしまい、その悲しみから翔子は心を病んでしまう。そんな翔子をカナオは温かく支え続け、2人の生活は少しずつ平穏を取り戻してゆく。 映画の感想 この映画は良いです!今年見た邦画の中では一番手ごたえを感じました。 夫婦の10年を描きながら並行して描かれる90年代に起きた事件を、法廷画家の夫カナオの目を通して社会の負の部分を浮かばせる社会派としての一面を兼ね備えた作品で着眼点が良い。普段我々が見ることの出来ない記憶に新しい事件の裁判を映像で再現している。加瀬亮の怪演が光る「連続幼女誘拐殺人事件」を筆頭に、オウム真理教が起こした「地下鉄サリン事件」、橋口監督「ハッシュ!」で主演を演じた片岡礼子が短い出演ながら印象的な「音羽幼女殺人事件」、見ていて憤りを感じる「池田小児童殺傷事件」など、監督が社会に向けた意欲を感じさせられる。 そしてメインとなる夫婦の話の語り口も実に上手い。木村多江演じる翔子は何事にもキッチリとしたい性格とは対照的に、何事にもルーズなリリー・フランキー演じる夫カナオ。二人の演技が絶妙なさじ加減で良い。子供を亡くし精神のバランスを崩し鬱になってしまう翔子と、それをやさしく受け入れるカナオ。難しい演技を演じきった木村多江と、けして演技は上手くは無いが味のある受けの演技に徹したリリー・フランキーが良い。 映画は冒頭に夫婦二人とも地上に接する足に関連したエピソードで始まり様々なエピソードが紆余曲折を経て、翔子が描くお寺の天井画に着地するのを見ると、話が地から天に向かう事で夫婦の関係が浄化されて再生を表しているように感じた。 映画「ぐるりのこと。」の関連商品はコチラ 【DVD】ハッシュ!〈通常版〉/田辺誠一 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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