半ダースのメガネ。
「遠くも近くも見えないので眼鏡屋さんで何回も何回もメガネを作り変えたんだけど、どうしても合わないので、良く見えるメガネの処方箋を出して欲しい。」との訴えで、高齢の女性が受診されました。 「とりあえず、今お持ちのメガネを見せていただきましょう。」と言うと、出るわ出るわ、メガネがどんどんと出てきます。全部で半ダース、6つもありました。 「これは遠近両用で作ったけど、頭がクラクラと痛くなるので使っていない」 「これはアーケードの中の人気のあるお店でしばらく前に作って一番マシだけど、でもあんまり満足はしていない」 「これは近所に移動眼鏡屋さんが来たので、行ってみたら親切にメガネを作ってくれたんだけどあんまり合わない」 「これは大手チェーンの眼鏡屋さんで最近作って貰って、その時に合わないようなら眼科に行って処方箋を出して貰ったら無料でレンズを交換してあげると言われたやつなんだけど、キツイ感じのするメガネで使っていない」 「これは使ってないけど、凄く高かったやつなので一応持ってきた。」 など、1つ1つチェックして見たのですが、どれも度数にそれほどの差があるわけではなく似たようなメガネです。 そこで目の方を診せて頂くと、単に白内障が高度に進行してしまっておりそれで目の力が落ちて、どのメガネをかけても見えない状態になっていたのでした。患者様は「見えないのはメガネが悪いせいだ」と固く思い込まれていたのですが、 悪かったのはメガネではなく目の方 だったんですね。こういう患者様は実に良くいらっしゃいます。この方はすぐに白内障手術をさせて頂き、今は無事に視力を回復されていらっしゃいます。 眼鏡屋さんに行って「メガネが合わないんだけど」と言えば、眼鏡屋さんは喜んで何個でもメガネを作ってくれます。なぜならそれが仕事だからです。 でもそれは、 床屋さんに行って「ねえ、髪の毛切ったほうがいいかな?」と質問するのと同じかもしれないのです。 床屋さんは髪を切るのが仕事ですから「切ったほうがいい」と答えるに決まっていますよね。(笑) つまり、メガネで目の全ての問題が解決するわけではないということです。何回もメガネを交換しても見え方が良くならない時には、ぜひお近くの眼科専門医の受診を検討してくださいね。