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と言うとパソコンやゲームのリセットのことを思い浮かべる人も多いと思いますが、北村薫の「リセット」のことです。この「リセット」は「スキップ」「ターン」に続く、北村薫の「時と人」三部作の三作目に当たり、来月下旬に文庫分が出る予定です。「スキップ」「ターン」は既に文庫本も出ているし、「ターン」は牧瀬里穂主演で映画化もされているからご存知の方もいるかもしれないけど、とりあえず三作とも概略をみてみましょう。
「スキップ」は高校二年生の一ノ瀬真理子の不思議な物語だ。文化祭を翌日に控え、雨でフォークダンスが出来るかどうか心配しながらちょっと転寝して、目を覚ましたら見知らぬ場所にいた。着ているものも違う…誰かに着替えさせられたのか?何がなんだか解らないでいたら「ただいま」と言う声がした。制服の女子高生が帰ってきたのだ。どうなっているのかを彼女に聞こうとして声をかけた。 「教えてください。ここ、どなたのお宅なんですか」 「ふざけているの?…お母さん」 一ノ瀬真理子は転寝の間に25年の時を超え、桜木真理子と言う42歳の高校教師になっており、美也子と言う「本来の」自分と同じ歳の娘もいる。姓が変わっているのは桜木と言う高校教師と結婚しているからだ。何もかもが変わってしまっている世界の中に「取り残された」真理子はそれでもなお生きていかざるをえない。もう二度とあの文化祭のときに戻れないのだから… 「ターン」は版画作家・森真希の不思議な物語だ。ある日交通事故に巻き込まれて意識を失う。潰れた車の中で身動きも出来ない状況だったのに、気がついたときには座椅子から落ちそうになった首を立て直して目を覚ましていた。いつもと同じように自宅にいる。自分は死んでしまったのか?それとも怖い夢を見ているだけなのか?そしてふと気がつく…今は「昨日だ」ってことに。そしてこの世界には誰一人いないと言うことに、何度も「昨日」から「今日」の事故までの24時間を繰り返してるってことに… イラストレーターの泉洋平はふと目に留まった「時」と言うメゾチントを購入する。森真希の作品だった。どんな人なのか知りたくてかけた電話に森真希は出た。独りぼっちの世界にいる真希と繋がった唯一のライン。洋平は真希のために電話を繋ぎっぱなしにする。非現実的なことを受け入れて… 「リセット」は…はっきり言ってあらすじを書くとそのままネタバレになる可能性が高いんで、ちょいと怖いです。三題話と言うのもがあるけれど、水原真澄には三つの想い出があった。一つはまだ三つのときに父親と見た憶えのある獅子座流星群であり、一つは結城修一が選んだ「啄木かるた」の一枚であり、そして「会議は踊る」の一節…デン・イェーダー・フリューリング・ハット・ヌーァ・アイネン・マイ…「だって、春に五月は一度しか来ないだろう」と言うところ。戦時中を神戸の芦屋で過ごした真澄は修一と出会い、互いに惹かれあうが、ごく稀に顔を見かけるとか、本の貸し借りをするくらいしかできない。そして、勤労動員された工場で敵機の来襲を受けて… 話は村上和彦の思い出話になる。和彦は小学5年生のとき、ある「おばさん」と知り合いになり、不思議な既視感を感じる。あと数年で再び獅子座流星群が見られる時に三河島事故が起きて… う~~む、かなりネタバレしてしまったような…(^^ゞ 「スキップ」は25年間の記憶の滑落、「ターン」は臨死体験ってことでそれなりに説明しようと思えばできるけど、そうではない不思議な感じのほうがなんとなく納得できてしまうから変なものですね。ありえないことが実際に起こっているんだ、ってのを受け入れてしまうとそう大して問題でもない気分になるから不思議ですよね。「リセット」の場合は記憶障害とか臨死体験のような「明確な説明」が難しい、輪廻転生における記憶の継承ってモノですからねぇ<ネタバレ(^^ゞ この本を読んだときになにげに浮かんだのは「ハイカラさんが通る」の「瀬をはやみ岩にさかるる谷川のわれても末に会わんとぞ思う」という歌にこめた想いです。何らかの事情で添い遂げられなかった二人がその孫子の代に結ばれて欲しいと言う願いを込めたものですが、そういえば「リセット」の場合は誰とも結ばれずにいるんですよね。だから想いが募り、願いが叶うのかしら? あ~!書けば書くほどネタバレになる!! とにかく来月の文庫化を待って読んでくださいとしかいえないよね<おひおひ!! と言うか日記リンクのもある苺猫さんの書いてる小説を読んでるときに「リセット」を思い出したんですよね。モチロンプロットとかそう言うのは全く違いますが、こういうことなのかなぁって思ったりしました。 ちょいとクライマックスのところから引用します。 「…生きて」 「…君も」 「…間に合わない。行って。あなたが消えるのを、わたし、二度も見られない」 「…オリンピックはどうするの。獅子座の流星群は」 「…構わない。もしものことがあったら、わたし、あなたのお母さんに合わせる顔がない」 ツーことで推敲版(?)を… リセットなんて誰も信じやしない 残されたものはただ呆然とするだけだ そして日々の中に記憶は埋もれ、平凡な日常を繰り返す しかし、今日もどこかでリセットが行われている それに誰も気がついていないだけだ それは奇跡なんかじゃない ただそうであるようになっただけのことだ 時の流れの中で傷は癒され、人はまた生きている… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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