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2007.10.29
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 今回は、紋章、色彩、動植物の歴史―それらは、象徴の歴史という枠組みでくくることもできそうです―の研究を精力的に進めておられる、フランスの歴史家ミシェル・パストゥローMichel Pastoureau(1947-)について、紹介したいと思います。

 ミシェル・パストゥローの父親は、シュールレアリストのアンリ・パストゥローです。ヤフーなどで検索する限り、アンリ・パストゥローはあまり日本では知られていないようです。なお、氏自身は、自らの文体の詩的な部分について、父アンリの影響があるかもしれないと言っています(1)。
 彼の母親は、エレーヌ・パストゥロー(1915-1990)です。
 ミシェルは、1947年、パリで、二人の間に生まれました。
 高等教育はソルボンヌの古文書学校(l'Ecole des chartes)で受け、そこでの卒業論文が『中世紋章の動物誌』(Le Bestiaire heraldique medieval, 1972, 未刊)です。この論文は高く評価されたそうですが、卒業論文で動物をテーマにしたいといったとき、先生がたは難色を示したと、氏は言います(2)。動物は、歴史の表舞台とは縁のない役者だという価値観が、当時はまだ支配的だったわけですね。
 このように、ミシェルは紋章の研究から出発し、深い関わりのある印章、メダルなども史料として扱い、あるいは研究を進めています。さらに研究領域をひろげ、テーマとしては、卒業論文からもうかがえるように、動物の歴史、植物の歴史、色彩の歴史などを、心性史的、あるいは人類学的なアプローチで研究しています。
 さて、経歴に戻ると、1982年に高等実習研究院第4部門(l'Ecole pratique des hautes etudes, IVe section)の教授として選ばれ、 1983年より、同部門で「西欧象徴体系史講座」(la chaire d'histoire de la symbolique medievale)教授をつとめます。その後、高等実習研究院第6部門(経済学・社会科学)が改組された社会科学高等研究院(Ecole des Hautes Etudes en Sciences Sociales)で、ジャン=クロード・シュミットらと共同ゼミナールも開いているようです。

 ところで、松村剛先生は、ジャン=クロード・シュミット『中世の身ぶり』(みすず書房、1996年)の訳者あとがきで、アナール学派第4世代の研究者としてミシェル・パストゥローの名前も挙げておられますが、他のところではあまりパストゥロー氏がいわゆる<アナール学派>に属するとは聞きません。アナール学派の主要な研究拠点にも籍を置かれているわけですし、方法論的にもそうだとは思うのですが。
 管見の限りではありますが、現段階で出版されているアナール学派に関する概説書(邦訳)に、アナール学派第4世代についてまでカバーした本はないように思います。最近はそういった論文もチェックしていないので、なにかしら文献もあるかとは思うのですが。ジャック・ル・ゴフがばりばりがんばっていた頃はともかく(今もがんばっていますが)、いわゆる第4世代ともなるとそうとう研究も細分化しているでしょうし、「アナール学派」と一口にいうのも難しくなってきているのかなと想像します。

 邦訳『ヨーロッパの色彩』の、石井直志さんによるあとがきは、ミシェル・パストゥローの人柄を伝えてくれます。氏が、さりげなく優しい心遣いをされたエピソードなどが紹介されています。
 その他、パストゥロー氏の著作を翻訳しておられる松村剛先生もおっしゃるように、氏はふっくらとした体型で、お気に入りの動物は豚とのこと(その他、熊もお気に入りだと、『王を殺した豚 王が愛した象』に記されています)。アパルトマンの部屋には、豚の置物や、豚を描いた絵も多く飾ってあるとか。
 彼の夫人はミレイユ・パストゥロー(Mireille Pastoureau)さんといって、フランス学士院図書館の館長をされています。そのため、氏もミレイユさんとともに官舎住まいの身になったということです。

 なお、Yahoo!Franceで検索していると、何件か氏のラジオインタビューや講義が聴けるページがヒットしました。私は残念ながらフランス語の聞き取り・会話能力はほとんどなく(読むのも辞書を片手に調べまくってなんとか、というところですが)、ほとんど分からなかったのですが、ちょっと低めのしぶい声でした。


(1)下記『ヨーロッパの色彩』訳者あとがき、209頁。
(2)下記『王を殺した豚 王が愛した象』3頁。

ーーー

 2019年12月現在で邦訳されている氏の著書は、次の通りです(2019.12.19更新)。

・ミシェル・パストゥロー(松村剛・松村恵理訳)『悪魔の布 縞模様の歴史』白水社、1993年
(こちらは、『縞模様の歴史―悪魔の布―』[私は未見です]として、2004年、白水社Uブックスとしてあらためて刊行されています。)
・ミシェル・パストゥロー(石井直志・野崎三郎共訳)『ヨーロッパの色彩』パピルス、1995年
・ミシェル・パストゥロー(松村剛監修)『紋章の歴史-ヨーロッパの色とかたち』創元社、1997年
・ミシェル・パストゥロー(松村恵理・松村剛訳)『王を殺した豚 王が愛した象-歴史に名高い動物たち-』筑摩書房、2003年
・ミシェル・パストゥロー(松村恵理/松村剛訳)『青の歴史』筑摩書房、2005年
・ミシェル・パストゥロー/ドミニク・シモネ(松村恵理/松村剛訳)『色をめぐる対話』柊風舎、2007年
・ミシェル・パストゥロー(篠田勝英訳)『ヨーロッパ中世象徴史』白水社、2008年
ミシェル・パストゥロー(JEX Limited訳)『CROMA(クロマ)―色の世界・350のフォトグラフィー―』青幻舎、2010年
・ミシェル・パストゥロー(平野隆文訳)『熊の歴史―<百獣の王>にみる西洋精神史―』筑摩書房、2014年
・ミシェル・パストゥロー(蔵持不三也・城谷民世訳)​『赤の歴史文化図鑑』​原書房、2018年
・ミシェル・パストゥロー(蔵持不三也訳)​『図説 ヨーロッパから見た狼の文化史』​原書房、2019年

 2018年には、ミシェル・パストゥロー初の絵本の邦訳も刊行されました。
・ミシェル・パストゥロー(文)/ローランス・ル・ショー(絵)(松村恵理訳)​『ピエールくんは黒がす​​き!』白水社、2018年

 加えて、次の論文を、日本語で読むことができます。
・ミシェル・パストゥロー「青から黒へ―中世末期の色彩倫理と染色」徳井淑子編訳『中世衣生活誌―日常風景から想像世界まで―』123-142頁

 その他、私が所有している原著は、次のとおりです(2011年11月20日現在)。

・Michel Pastoureau, Figures et Couleurs. Etude sur la symbolique et la sensibilite medievales, Paris, 1986
 (『図柄と色彩―中世の象徴と感性に関する研究』)

・Michel Pastoureau, Couleurs, Images, Symboles. Etudes d'histoire et d'anthropologie, Paris, Le Leopard d'Or, 1989
 (『色彩・図像・象徴―歴史人類学研究』)

・Michel Pastoureau, Jesus chez le teinturier. Couleurs et teintures dans l'Occident medieval, Le Leopard d'Or, 1997
 (『染物屋のイエス―中世西欧における色彩と染色―』)

・Michel Pastoureau, Les Emblemes de la France, Paris, Christine Bonneton, 1997
 (『フランスの標章』)

・Michel Pastoureau, Une histoire symbolique du Moyen Age occidental, Seuil, 2004
 (『西欧中世象徴史』)

・Michel Pastoureau, Traite d'heraldique, Paris, Picard, 1979 (5e ed., 2008)
 (『紋章学概論』)

・Michel Pastoureau, Bestiaires du moyen age, Seuil, 2011
 (『中世の動物誌』)

・Michel Pastoureau / Jean-Claude Schmitt, Europe. Memoire & emblemes, Les Editions de l'Epargne, 1990
 (『ヨーロッパ―記憶と標章―』。ジャン=クロード・シュミットとの共著)

・Michel Pastoureau / Jean Mounicq, Mont-Saint-Michel, Imprimerie nationale Editions, Paris, 2004
 (『モン・サン・ミシェル』。ジャン・ムニクとの共著(写真集))

・Michel Pastoureau / Gaston Duchet-Suchaux, La bible et les saints, Flammarion, 2014 (1990)
 (『聖書と聖人たち』。ガストン・デュシェ=シュショーとの共著)

 ブレポルス社刊行の、西欧中世史料類型シリーズが、3冊あります。 

・Michel Pastoureau, Les armoiries (Typologie des sources du Moyen Age occidental, fasc. 20), Brepols, 1976 (2e ed., 1998)
 (『紋章』(西欧中世史料類型第20分冊))

・Michel Pastoureau, Les sceaux (Typologie des sources du Moyen Age occidental, fasc. 36), Brepols, 1981
 (『印章』(西欧中世史料類型第36分冊))

・Michel Pastoureau, Jetons, mereaux et medailles (Typologie des sources du Moyen Age occidental, fasc. 42), Brepols, 1984
 (『ジュトン、メロー、メダル』(西欧中世史料類型第42分冊))

 また、英訳版については、下記の著作を所有しています。

・Michel Pastoureau(trans. by Markus I. Cruse), Blue. The History of a Color, Princeton University Press, 2001
(邦訳『青の歴史』)
 邦訳は、多くの図版が白黒になっていますが、こちらは、カラー図版が豊富で、邦訳と一緒にもっていても損はしないと思っています。フランス語の原著(ポッシュ版は図版が省略されているそうですが)がすらすら読めるとその方が嬉しいのですが…。

・Michel Pastoureau (trans. by Jody Gladding), Black. The history of a color, Princeton University Press, 2008

・Michel Pastoureau (trans. by Jody Gladding), Green. The History of a Color, Princeton University Press, 2014

・Michel Pastoureau (tr. by George Holoch), The Bear. History of a Fallen King, The Belknap Press of Havard University Press, 2011

 最後に、私は入手していないですが、氏の主要著書を紹介しておきます(なお、タイトルの試訳は、松村剛さんおよび篠田勝英さんの訳を参考にしています)。

・Michel Pastoureau, L'Hermine et le sinople. Etudes d'heraldique medievale, Paris, le Leopard d'or, 1982
 (『白地黒斑と緑色―中世紋章研究)

・Michel Pastoureau, L'Echiquier de Charlemagne. Un jeu pour ne pas jouer, Paris, 1990
 (『シャルルマーニュのチェス盤―使わないためのゲーム』)

ーーー
研究整理の一覧はこちら。次の記事を書くのはいつになるやら…ですが。






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Last updated  2019.12.19 22:45:38
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