カテゴリ:本の感想(さ行の作家)
佐藤友哉『デンデラ』 ~新潮社、2009年~ 佐藤友哉さんの最新の長編です。 それでは、内容紹介と感想を。 ーーー 70歳になったら『お山』に入り、極楽浄土へ赴ける―。『村』のしきたりを信じていた斎藤カユは、自分が70歳になり、『お山』に棄てられても、恐怖はなかった。ただ、極楽浄土へ赴くことを夢見て、ひたすらに祈っていた。 しかし、意識が遠のく中で、人の声を聞く。気付いたときには、彼女は粗末な家で寝かされていた。 そこは、30年前に『お山参り』をしたメイが興した、『デンデラ』という共同体だった。メイは、『お山』に棄てられた老婆たちを救い、この共同体を創りあげてきた。カユは、50人目の一員となった。 『お山』で死に、極楽浄土へ赴くことを夢見ていたカユは、無様に生き延びていた彼女たちを非難する。しかし、『デンデラ』の人々にとっては、生きながらえたいという思いこそ正しく、カユの主張が間違っていた。 『村』への復讐を誓うメイたち「襲撃派」と、それよりも『デンデラ』を発展させようという「穏健派」に、『デンデラ』は二分されていた。どちらにも与せぬカユだが、しかし生きるために与えられる仕事を精一杯こなしていった。 ついに、『村』への復讐が決行されることになったとき、『デンデラ』に事件が起こる。飢えた羆が襲ってきたのだった。 そして、羆との戦いが始まる。 ーーー これは面白かったです。帯にある「姥棄て山」という文句に、ぱらっと頁を開いたときの「です・ます体」の文体。もうそれだけで面白そうだと予感しましたが、期待は裏切られませんでした。 羆との戦いがメインではあるのですけれど、それぞれの老婆の生き方や信念、そして共同体内部での争い・確執などなど、読みどころが盛りだくさんです。といいつつ、物語の軸が失われるほどのごてごて感もありません。 物語は主にカユさんの視点で進みますが、彼女の考え方が次第に確たるものになっていく過程を、興味深く読み進めました。 (2009/09/06読了)
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