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2009.09.10
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あしながおじさん
ジーン・ウェブスター(松本恵子訳)『あしながおじさん』
~新潮文庫、1998年87刷(1954年1刷)~
(Jean Webster, Daddy-Long-Legs, 1912)

 いわずとしれた名作です。数年ぶりの再読になりますが、やっぱり面白いですね。
 では、内容紹介と感想を。

ーーー
 その日、ジョン・グリア孤児院で17歳まで過ごしたジルーシャ・アボットに、大きなニュースが飛び込んだ。その水曜日は、評議員の方々が孤児院を視察に訪れる日で、院長もぴりぴりしているし、ジルーシャも年長なので、子供たちの世話をしなければならなかった。さて、評議員たちが帰る頃、最後の一人が出ていく場面にジルーシャは出くわした。背の高い紳士がドアのところに立って、ちょうど車のヘッドライトが彼を照らしたので、その長い足の影が孤児院の中に伸びたのだった。
 その後、ジルーシャはリペット院長に呼び出される。背の高い評議員が、彼女を大学に行かせてあげたいと申し出てくれているというのだった。ただ、評議員は、いくつか条件をつけていた。彼は、経済的援助は惜しまないかわりに、ジルーシャが作家になることを望んでいて、その訓練の意味もこめて、大学生活について手紙に書くようにといったらしい。
 そして、ジルーシャの充実した大学生活が始まる。
ーーー

 あらためて、とにかく面白く、心温まる物語です。
 もりもり大学で勉強して、夢を叶えるために小説の執筆もがんばり、そして友人たちや長期休暇のあいだに過ごす農村の人々たちと楽しく過ごすジルーシャ(ジュディ)の姿を見ていると、なんだか自分の大学生活を思い出してきました。大学院の2年間はとにかく研究に打ち込んだものの、大学の4年間ももうちょっと勉強に力を入れれば…と思えてきたり。
 それはともあれ、ジュディのように勉強をがんばる姿は、とても素敵です。誰であれ、どんなかたちであれ、そしてどんなことであれ、勉強を進める人を、私は尊敬します。
 なにやら早くも脱線してしまいましたが、物語の大部分はジュディがあしながおじさんに宛てた書簡となっています。その文章から、大学での研究や友人たちとの交流の楽しさが溢れていて、読んでいてこちらまで楽しい気分になってきます。もちろん、残念な事件が起こったり、あしながおじさんと意見がぶつかったりして、その悲しさや憤りがにじむ手紙もあるのですが。
 …また勉強の話に戻ってしまいますが、大学に入ったジュディは、まわりの友人たちとの会話についていけません。ずっと孤児院で過ごしていたので、有名な小説も読んだことがないのですね。そこで彼女は、毎日寝る前に、有名な作品を読むことを決意します。もうこの姿勢から憧れました。私はまだまだだなぁと感じ入る次第でした。なにしろ私も、『若草物語』も読んだことがないのですから。大学3年生の頃、高校世界史に出てくる海外文学はあらかた読んでやろうと決意し、実際いろいろ読んでみたのですが、しかしまだまだ足りません。といっても、まだこれから読む機会があると思えば、今後の人生に楽しみが尽きないというものです。

 さて、ジュディの前向きな言葉に、いくつか付箋を貼りました。ここでもいくつか、文字色を反転させて引用しておきます。

私は誰にとっても最も必要な要素は想像力だと思いますのよ。想像力は私たちをほかの人の立場に置きかえさせてくれます。そうすれば誰でも親切で同情深くて理解を持つことができます」(113頁)

何より大切なのは、大きなすばらしい喜びではなく、ささやかな喜びを見出していくことです――おじ様、私は幸福になるほんとうの秘訣を発見しました。それは現在に生きることです、いつまでも過去のことを悔んだり、未来を思いわずらったりしていないで、今のこの瞬間から最大限度の喜びを捜し出すことです」(158-159頁)

私は、自分の生涯の一秒一秒が幸福だということをはっきり意識しています。私はこれから後も、たとえどんな不愉快な目にあっても、この気持を持ちつづけるつもりです。私は不愉快なものはすべて、興味ある経験とみなしていくつもりです。歯痛でさえも、どんな感じのものか知ることができてうれしいと思うでしょう」(194頁)

   *   *   *

 さいごに、ジーン・ウェブスター(Jean Webster, 1876.07.24-1916.06.11)について、訳者解説を参考に、簡単にメモしておきます。
 彼女はニューヨーク市に生まれました。彼女は裕福な家庭に育ち、十分な教育も受けます。なお、彼女の父親は出版社の経営者で、マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』を出版、彼女の母親はマーク・トウェインの姪にあたるのだそうです。
 さて、ジーンは、大学在学中に感化院や孤児院を視察し、こうした社会事業に興味をもつようになり、作品にもそうした題材を多く取り入れたそうです。作家であると同時に社会施設の改善家としても活躍し、少年感化院や刑務所改善の特別委員もつとめたとか。
 そんなジーンですが、40歳という若さで亡くなってしまいます。女の子を出産した、二日後のことだそうです。
 本書に挿入された絵は、すべてジーンによるそうですが、そのユーモラスな絵、そして作品全体にながれる楽しさ、温かさから、彼女の人柄が伝わってくるような気がします。

 あらためて、素敵な読書体験でした。

(2009/09/06読了)





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Last updated  2009.12.31 13:47:37
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