2027553 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2009.11.23
XML
八つ墓村
横溝正史『八つ墓村』
~角川文庫、1976年35版(1971年初版)~

 映画で有名な『八つ墓村』です。今回、久々に再読してみましたが、やっぱり面白いですね。
 ではでは、簡単な内容紹介と、今回再読しての感想を。

ーーー
 昭和2X年。金田一耕助が、『夜歩く』事件を解決した直後のこと―。
 神戸の化粧品会社に勤める寺田辰弥は、自分のことを探している人物がいることを知る。母親に育てられ、その母親も7歳の時に亡くなってしまい、身よりのない自分を、誰が探しているのか…。
 法律事務所で対面した諏訪弁護士は、彼の両親のことを聞き、そして彼の体を見せてほしいと頼む。辰弥の体には、焼きごてでも当てられたような傷が、一面についているのだった。
 その後の会見で、辰弥は自分を探しているのが、八つ墓村の多治見家だということ、自分は26年前に失踪した多治見陽蔵の子供だということを知る。しかし、辰弥に会いに来ており、二度目の会見に居合わせた彼の祖父が、そこで血を吐いて死んでしまう。これが、連続毒殺事件の幕開けだった。
 祖父の遺体と辰弥を迎えにきた森美也子と、諏訪弁護士から、辰弥は自分の身の呪わしさを知る。永禄9年に八つ墓村で起こった8人の落ち武者殺し。そして26年前に起こった、32人殺し事件。その犯人が、自分の父だというのだから…。
 村人たちに奇異の目で見られながら、多治見家での生活が始まった。しかし、間もなく事件が起こる。肺病で、命も長くないと思われていた兄が死に、おじで医者の久野は怪しい素振りで、双子の大伯母、小竹と小梅も辰弥に怪しいお茶を飲ませる…。
 姉の春代のあたたかな態度、美也子の姉御風の接し方に救いを感じながら、辰弥は次第に自分でも調査をはじめていく。それは、母が遺した地図の意味や、自分の父親は誰なのか、といったことにも関わっていた。
 一方、殺人は繰り返され、迷信深い村人は辰弥が犯人だと考え、ついに辰弥をとらえようと動き始める…。
ーーー

 映画は少なくとも豊川金田一版と渥美金田一版の2種類は(テレビで)観ていますし、あるいはビデオに録って見返したこともあるように思います。というんで、大体の流れと犯人は覚えていました。
 また、本作は『本陣殺人事件』や、内容紹介でも言及した『夜歩く』などの作品に比べれば、大がかりな謎の提示もないですし、謎解きに重点も置いていないように思います。
 なので、なかなか本書を再読していなかったのですが、今回読み返してみて、あらためて面白く読むことができました。
 今回は、特に辰弥さんにまつわる悲しい運命を中心に、豊かな物語性を楽しみながら読みました。村人や鍾乳洞の冒険など、スリルにもあふれています。
 また、今回思ったのは、今回の大きな「主人公」は八つ墓村そのものであるということです。
 もちろん、事件を一人称の形式で、記録者の立場で綴っていく辰弥さんが主人公であることは間違いないのですが、春代さん、小梅さんに小竹さん、慎一郎さんに典子さん、美也子さん、久野先生、和尚さんなどなど、この村の人々の人生―辰弥さんにも使った運命という言葉を使っても良いかもしれません―がからみあい、それが事件を複雑なものとして、同時に物語に含みを与えています。はるか昔から続く八つ墓村の悲しい歴史は、しかしこの事件の終結をもって、希望も持ち始めることになりますし、そういう意味で、「八つ墓村」自体も、大切な主人公であると思うのです。
 先に私は映画などで犯人を知っていたと書きましたが、それでも、関係者たちの不可解な行動にはわくわくしました。また、本書には派手な謎の提示はありませんが、犯人の動機は最後まで謎に包まれています。なので、謎解き重視ではないといいつつ、十分に魅力的なミステリでもあるのです。
 というんで、楽しめた一冊です。

※表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。

(2009/11/21読了)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.11.23 07:03:58
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(や・ら・わ行の作家)] カテゴリの最新記事


Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

My favorites♪ torezuさん
姫君~家族 初月1467さん
偏った書評ブログ mnmn131313mnmnさん
海砂のつらつら日記 kaisa21さん

Comments

 のぽねこ@ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
 シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
 のぽねこ@ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.