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カテゴリ:感想【小説】
横山秀夫さんの「半落ち」を読みました。
先日の「クライマーズ・ハイ」に続き横山作品2作目です。 映画化されたときに予告を観たのか、おおまかな話の筋は知ってました。 小説の内容紹介文と同じ程度ですけど。 そして梶役は寺尾聰さんのイメージのまま読みましたが、全く違和感無し。 予想していたのとはちょっと違うストーリー展開でした。 「半落ち」から「完落ち」するまでの取調官とのやりとりが延々取調室で繰り広げられるもんだと勝手に思っていたんですが、取調官となる志木目線で書かれるのは1章のみで、後は各章ごとにそれぞれ立場の異なる男たちの目線になっています。 検事、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官、と一人の人間が自首してから刑務所に入るまでに関わるであろう職責の人たちです。 一冊を通して梶の殺害から自首までの空白の2日間の謎を追う物語ですが、各章ごとに6人の男たちそれぞれの物語が語られる、という入れ子構造になっています。 この作りは見事です。 6人の男たちはそれぞれ別の組織体に所属し、組織の思惑、自身の野心、家庭の事情などに捉われて行動するのですが、梶と対峙しているうちにそういったしがらみから達観した気持ちでこの事件に関わっていくようになります。 やはり横山さんは組織モノを書くのが素晴らしくお上手ですね。 先日読んだ「クライマーズ・ハイ」はご自身が新聞記者であったという経験をフルに生かして詳細に新聞社の内情を描いていましたが、本作は様々な多岐に渡る組織について短い章立ての中で過不足なくそれぞれが抱える問題などを書いてくれています。 特に、2章の佐瀬検事のところでは地検という組織と警察との関係が良く分かって面白かったです。 登場人物たちは普通のサラリーマンではないものの、組織で働くときに誰もがぶつかる壁だったり、理想と現実との違いだったり、読む側にとっても自分と重ねられる部分が多いのではないかと思います。 その分、梶の物語が置き去りにされているわけではないのですが、中々核心に迫りません。 最終章、ラスト数ページでやっと、梶が2日間の行動を話さなかった理由、そしてあと1年は生きるといった理由が判明します。 前半は何となく予測がついたんですが、後の方は全く分かりませんでした。 そんな理由だったのか、、、と。 梶の生きる理由として得心のいく結末でした。 骨髄移植のドナーには51歳までしかなれないということをお恥ずかしながら知りませんでした。。。 アルツハイマーという病気に苦しみ、「殺してくれ」と、息子のことを覚えているうちに「せめて母親のうちに死にたい」という妻を殺した梶のしたことは正しかったのかどうか。 自分が梶の妻の側の立場であれば同じように思い、同じように「殺して」と頼むだろう、ということは想像に難くありません。 だからといって、妻を殺すという選択をした梶を「優しい」と断じてしまうことには躊躇してしまいます。 自我が崩壊していく恐ろしさ。 それでも生きていかなければいけないのか、生きるべきなのか。 小説内では言及されませんが、5章の藤村裁判官の妻とのやりとりが印象的でした。 DVD「半落ち」 制作国:日本 出演:寺尾聰/原田美枝子/柴田恭兵/吉岡秀隆/鶴田真由/國村隼/伊原剛志/樹木希林/嶋田久作/斎藤洋介/中村育二/豊原功補/西田敏行/本田博太郎 監督:佐々部清 脚本:佐々部清/田部俊行 原作:横山秀夫 元捜査一課の警部・梶聡一郎が、病気の妻を絞殺したと自首する。取り調べが始まるが、出頭するまでの2日間について彼は固く口を閉ざしていた……。横山秀夫のベストセラーを映画化した衝撃作。 ⇒映画公式サイト キャストを見ても出演者の名前しかないから、誰がどの役をやったのかが分かりません(;_;) 原田美枝子さんが梶の奥さん役なのは分かるけど。。。 柴田恭兵さんがまさか志木?! ちょっと迫力が足りないような。。。 DVD観てみます! ●感想を読ませていただきましたブログ様 ・コンフォートライフ様 ・Credo Clover~読書日記~様 ・仮想本棚&電脳日記様 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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