カテゴリ:アート&ブックス
「サイバラ」こと西原理恵子と言えば、今をときめく、売れっ子漫画家。シンプルで、大胆なキャラクター。過激なギャグからほのぼの路線まで、幅広い作風で、人気を集めている。自慢じゃないが、僕はサイバラがデビュー直後からの、熱烈なファンである。
僕とサイバラとの出会いは1990年、会社の同僚から借りた、「まぁじゃんほうろうき」(写真左)という1冊の漫画だった。自分をネタにした麻雀ギャグ漫画なのだが、これが抱腹絶倒の面白さ(ただし、麻雀というゲームを知らないと、面白さは半減するから、そのつもりで…)。大学生の頃、一時期麻雀にはまり、何度も徹マンしたくらい麻雀好きだった僕は、すっかりこの漫画のとりこになってしまう。 「まぁじゃんほうろうき」は当時、週刊「近代麻雀」という雑誌で連載中だった。僕自身は、80年代後半から、ほとんど麻雀をしなくなったのだが、それでも、このサイバラの連載が読みたくて、毎週、ちょっぴり恥ずかしさを感じながら、「近代麻雀」というマニアックな週刊誌を買っていた(「まぁじゃんほうろうき」は4巻まで出ています。何度読んでも笑えます。これ絶対オススメ。) その次に出合ったのは「サイバラ式」(92年刊)という本(写真右)。これは漫画というより、漫画付きの自伝的エッセイという感じのものだが、この本のなかには、サイバラの生き方というか、ポリシー(原点)がぎっしり詰まっている。バカとか身勝手とか言われようが、自分を信じて突っ走る生き方が…。 サイバラは高知県の浦戸という小さな漁業の町に生まれた。確か1964年生まれだったから、今年誕生日が来たら、41歳かな? 小さな町の、裕福ではない家庭に生まれ育って、高校を中退。大検を受けて上京し、予備校に通う。そして「むさび」(武蔵野美術大)に進み、貧乏暮らしの在学中から、小さなカットのような仕事からコツコツとこなして、ようやくデビューした(写真左は、西原先生のご近影=公式HP「鳥頭の城」から拝借、多謝!)。 サイバラの魅力はいろいろある。絵は決してうまいとは言えない(ヘタウマ的魅力?)。毒にあふれた過激なギャグ漫画では、作者自身が主人公であることが多いが、そのハチャメチャさが真骨頂。自分の恥ずかしいネタまでもさらけ出してくれる「サービス精神」が大好き。 そして、「ゆんぼくん」や「ぼくんち」など童話のようなほのぼの路線では、絵柄まで変わって、メルヘンチックな、心地よい余韻の残る物語を描いてしまう。同じ人とは思えない多才さ。神足裕司と組んでの「恨ミシュラン」は、サイバラの名を完全に「全国区」にしてしまった。(写真右=週刊誌の抽選で当たったサイバラ自作の版画と肉筆の絵です)。 現在、毎日新聞朝刊で連載中の「毎日かあさん」は、仕事と育児の両立にてんてこまいしてるサイバラ自身の日常を描いているが、ここでは03年に離婚したプライベートなこと(現在6歳の男の子と4歳の女の子が一緒)までギャグのネタにしている。 「離婚して落ち込んで」(本人の弁)も、それをしばらくしたら、生きるエネルギーに変えるたくましさに、僕は心打たれる(「なんてオーバーな反応!」とサイバラに言われそうだが…)。昨年出版し、ベストセラーになった「上京ものがたり」(写真左)という絵本のようなコミックは、あの「サイバラ式」以来の自伝的な内容。 高知から一人で上京して、貧乏暮らしに耐えながら、絵で食べていけるようになり、「大嫌いだった東京に『ありがとう』と素直に言えるようになるまで」(これも本人の弁)を、ギャグは抑えめに描いているが、これがまた心に染みるような味わいで、「とにかく凄くいいー!」としか言いようがない。 サイバラの漫画には、どんな教科書や哲学書を読んでも得られない、人生を生きるための何かが詰まっているような気がする。仕事がうまくいかなくて、人間関係がうまくいかなくて、落ち込んだとき、僕はサイバラを読んで元気をもらう(お酒は癒しにはなっても、元気はくれない)。 僕は、サイバラへの熱い共感と、同時代に生きている幸せを今、かみしめている。サイバラ、頑張れー!(僕も頑張るから…)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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