65. クウパースタウンコクテール【注79】
調合グラスに約半分の砕き氷を入れ之に
ゴルドン・ドライジン 三分の二オンス
マルチニー・ロシー・ベルモット【注80】 三分の一オンス
オレンジビタ 一振り
薄荷の葉 二、三葉
を加え、バースプーンにてよく攪き廻したる後、コクテールグラスに漉し、之にレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注79】「クウパウズタウンコクテール」は、「クーパーズタウン(Cooperstown)」の名でサヴォイ・カクテルブックにも登場する古典的なカクテルだが、そのレシピ(ジン、ドライベルモット、スイートベルモット各3分の1ずつ、ミントの小枝)は前田氏のと異なっている。
【注80】「マルチニー・ロシー・ベルモット」とは言うまでもなく、マルチーニ社のスイート・ベルモットのこと。
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66. クラブコクテール【注81】
調合グラスに約半分の砕き氷を入れ之に
カナデアンクラブ・ウイスキー【注82】 一オンス
アンゴスチュラビタ 一振り
グレナデン 一振り
を加え、バースプーンにてよく攪き廻したる後、コクテールグラスに漉し、之に一個のマラスチノー・チェリーを加え、尚ほレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注81】「クラブコクテール」は、サヴォイ・カクテルブックにも同名のカクテルが登場するが、レシピは異なりジン・ベースである。この前田氏のレシピは後年1937年出版の「カフェ・ロイヤル・カクテルブック」に登場する同名カクテルのレシピとほぼ同じである。
【注82】「カナデアンクラブ」とは言うまでもなく、今日でも「C・C」の愛称で知られるカナディアン・ウイスキーの雄。
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67. クリームソンコクテール【注83】
コクテールセーカに二三塊の氷を入れ之に
ジン 三分の二オンス
伊太利ベルモット 三分の一オンス
オレンジビタ 三振り
を加え、よくセークしたる後、コクテールグラスに注ぎ、之にレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注83】「クリームソンコクテール」は、「クリムゾン(Crimson)・カクテル」のことか。1910~20年代には欧米で飲まれていたが、当時の一般的なレシピはジン3分の2、ポートワイン3分の1、レモンジュース2tsp、グレナディン・シロップ1tspで、前田氏のレシピとはかなり異なっている。前田氏が何を参考にしたのかは不明。
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68. クロンデックコクテール【注84】
調合グラスに約半分の砕き氷を入れ之に
アップルジャック・ブランデー 二分の一オンス
フレンチベルモット 二分の一オンス
オレンジビタ 二振り
を加え、バースプーンにてよく攪き廻したる後、コクテールグラスに漉し、之に一個のオリーブを入れ、尚ほレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注84】「クロンデックコクテール」は、現時点では前田氏のカクテルブックだけで見られるカクテルである。
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69. クローバクラブコクテール【注85】
コクテールセーカに二三塊の氷を入れ之に
ジン 三分の二オンス
フレンチベルモット 三分の一オンス
玉子の白味 一個
グレナデン テースプーン半杯
ライムジュース 少量
を加え、よくセークしたる後、コクテールグラス或いはワイングラスに注いですすめる。
【注85】「クローバクラブコクテール」は、「クローバークラブ・カクテル」の名で有名な古典的カクテル。ハリー・マッケルホーンのカクテルブックやサヴォイ・カクテルブックにも収録されており、1900~1910年代にはかなりポピュラーだったカクテルと伝わる。なお、今日ではベルモットは加えないレシピが一般的で、ベルモットを加える場合ではスイートベルモットを使うことが多い。
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70. グレードエイコクテール【注86】
コクテールセーカに二三塊の氷を入れ之に
アブサンペルノード 三分の二オンス
ピパーミント【注87】 三分の一オンス
を加え、最も強く且(か)つ永くセークしたる後、コクテールグラスに注いですすめる。
【注86】「グレードエイコクテール」は、「グレードA(Grade A)」と思われるが、現時点では国内外の同時代のカクテルブックでは、その名が見当たらないカクテル。前田氏の創作か。
【注87】「ピパーミント」とは言うまでもなく「ペパーミント・リキュール」のこと。
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71. グルームコクテール【注88】
コクテールセーカに二三塊の氷を入れ之に
ゴルドン・ドライジン 三分の二オンス
伊太利ベルモット 三分の一オンス
グレナデン 一振り
アブサン 一振り
を加え、よくセークしたる後、コクテールグラスに注ぎ、之にレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注88】「グルームコクテール」は同時代の国内外のカクテルブックには見当たらない。レシピからみる限り、「グルームレイザー(Gloom Raiser)」という準スタンダードカクテルと酷似している(伊太利ベルモット→ドライ・ベルモット)ため、おそらくはこのバリエーションと思われるが、前田氏の創作かどうかは不詳。
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72. マンハッタンコクテール【注89】
調合グラスに約半分の砕き氷を入れ之に
ウイスキー 二分の一オンス
伊太利ベルモット 二分の一オンス
アンゴスチュラビタ 一振り
キニラソー【注90】 二、三振り
アブサン 一振り
を加え、バースプーンにてよく攪き廻したる後、コクテールグラスに漉し、之に一個のマラスチノー・チェリーを加え、尚ほレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注89】「マンハッタンコクテール」は言うまでもなく、「カクテルの女王」と称される古典的カクテルの代表格。誕生の逸話も様々なバリエーションが伝わる。かのジェリー・トーマスは、彼の有名なカクテルブック(初版1862年)の1887年の改訂版で初めて紹介している。材料は現在では、ライ(またはバーボン)・ウイスキー、スイートベルモット、アンゴスチュラ・ビターズの3種が基本だが、1920~30年代当時は、さまざまなビターズやキュラソー、アブサン、シャルトリューズなどを少し加えるのが流行っていたという。
【注90】「キニラソー」は他の箇所から類推すると「キユラソー」の誤植と思われる。
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73. マアテニーズコクテール(米國)【注91】
調合グラスに約半分の砕き氷を入れ之に
オールドトム・ジン 二分の一オンス
フレンチベルモット 二分の一オンス
キユラソー 一振り
マラスチノー 一、二振り
を加え、バースプーンにてよく攪き廻したる後、コクテールグラスに漉し、之に一個のオリーブを加え、尚ほレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注91】「マアテニーズ」とは言うまでもなく、カクテルの王様「マティーニ」のことと思われるが、前田氏の本の出版当時、米国では禁酒法が施行されており、おおっぴらには飲めなかったであろう。前田氏が紹介しているレシピは当然、禁酒法以前の1910年代より前の時代のレシピであろうが、現代のようなドライな味わいではなく、甘口に仕上げるのが主流だったようだ。
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74. マアテニーズコクテール(英國)【注92】
調合グラスに約半分の砕き氷を入れ之に
プリマウス・ジン 二分の一オンス
フレンチベルモット 二分の一オンス
オレンジシロップ 一振り
アンゴスチュラビタ 一振り
を加え、バースプーンにてよく攪き廻したる後、コクテールグラスに漉し、之に一個のオリーブを加え、尚ほレモン皮の小片を搾り込んですすめる。
【注92】「マティーニ」はこの時代(1920年代)、英国では花形カクテルの一つだったが、このレシピでは甘口の「プリマウス(プリマス)・ジン」をベースにしており、米国流レシピと同様、やや甘口の味わいに仕上げられている。
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2022/04/08 09:33:24 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。
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