お酒やBar業界の歴史に詳しい友人から、カクテルに関する貴重なコピーを頂きました=写真下。なんと、大正2年(1913年)、約100年前!の資料です。「飲料商報」という月刊の業界紙で、同年10月と11月に出た2号分の特集ページのコピーです。
タイトルには、「西洋酒調合法」とあり、中身はカクテルのレシピやつくり方の紹介です。全部で35種類のカクテルが取り上げられています。筆者は伊藤耕之進という方。うらんかんろはあまり存じ上げない人ですが、東京・三田にあった明治期を代表する西洋料理店「東洋軒」の創業者だった方だとか。
一番注目すべきは、この業界紙が発行された年です。1913年ということは、僕が以前、「日本で最初のカクテルブック」として紹介した秋山徳蔵著の「カクテル(混合酒調合法)」や前田米吉著の「コクテール」(いずれも1924年刊)よりも、さらに11年もさかのぼります。
すなわち、本という体裁はなしていませんが、このカクテル資料は、「日本で最初で、最古の西洋カクテルに関する文献」とも言えるのです。伊藤氏の前書きにはこう記されています。
「欧米に永い経験を有するバーメンが知って居る丈(だ)けの西洋酒の調合法は、オールド、スタンダード・ドリンクスも、インデペンデント、モダーン・ドリンクスも、悉(ことごと)くここに網羅して御覧に入れる。本紙を読みさえすれば、如何にハイカラな飲料でも、自由に調合できるバーメンの達人になれる事を受け合う」と。
各号それぞれ1頁に渡る特集では、ウイスキー・コクテールに始まりハーバード・コクテールまで、計35種類のカクテルが紹介されていますが、派生的なものを除けば、実質は約20種類くらいでしょうか。マティーニやマンハッタンはもちろん、ロブ・ロイやオールド・ファッションドなども紹介されています。
内容はさらに精査は必要ですが、欧米でもまだまともなカクテルブックなど数えるしかなかった時代(ハリー・マッケルホーンのカクテルブック=1919年刊=もまだ世に出ていません)に、こうした西洋の最新のカクテル情報を、著者の伊藤氏がどのようにして手に入れたのか、とても気になるところです。
たった2号分の資料ですが、これにはまだ続きがあるのかも含めて興味は尽きません。「カクテル--その誕生にまつわる逸話」の連載が終わって一段落したら、同時代の欧米のカクテルブックとのレシピ比較など、この資料にじっくりと取り組んでみたいと思っています。
PS.ちなみに秋山徳蔵氏は、宮内省の料理長になる前、この筆者・伊藤氏の営む「東洋軒」で料理長をつとめていました。秋山氏がカクテルの本を書くきっかけをつくったのも、ひょっとして伊藤氏だったのかもしれませんね。
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Last updated
2021/07/01 10:57:59 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。
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