4974666 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2013/07/19
XML
カテゴリ:カクテルブック
◆「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」にみるクラシック・カクテル

 3.バンブー(Bamboo)

 バンブーは、日本生まれで国際的なカクテルの第一号と言われています。現代の標準的なレシピでは、ドライ・シェリー3分の2、ドライ・ベルモット3分の1です。

 国内の多くのカクテルブックでは、1890年(明治23年)、その前年に来日していた横浜グランドホテルの支配人、ルイス・エッピンガー(Louis Eppinger=ドイツ系米国人 1831?~1907)が考案。その後世界的に知られるようになったとよく紹介されていますが、残念ながら、海外のカクテルブックでは、日本生まれとは紹介はしても、エッピンガーの名前に触れている例はそう多くありません。

 「バンブー(竹)」という名は、クセのない素直なこのカクテルの味を、「天へ向かってまっすぐに伸びる、日本的な竹に重ねた」と言われていますが、エッピンガー自身の証言や書いたものは残っておらず、残念ながら裏付け資料はありません。

 エッピンガーのオリジナル・レシピは、ドライ・シェリー4分の3、ドライ・ベルモット4分の1、オレンジ・ビターズ1dashと伝わっていますが、ハリー・マッケルホーンの「Harry’s ABC Of Mixing Cocktail」(1919年刊)はなぜかシェリーとベルモットが等量のレシピです。

 エッピンガー=考案者説の根拠としては、ウィリアム・ブースビー(William T. Boothby)という人が、1907年に著した「The World Drinks and How to Mix Them」に「…Originated and named by Mr.Louis Eppinger, Yokohama, Japan」との記述が見られる(洋酒ライター・石倉一雄氏情報)ことや、「1901年の段階ですでに日本から米国西海岸に伝わっていたことは、当時の文献からも確認できる」(石垣憲一氏の著者「カクテル ホントのうんちく話」=2008年刊=や米国の専門サイト情報)ことなど、さまざまな裏付け資料がこれまで紹介されています。s-IMG_4791.jpg

 しかし、マッケルホーンは、なんと別の説を紹介しているのです。バンブーの項の末尾に、「ホフマン・ハウス(The Hoffman House)のチャーリー・マハニー(Charlie Mahoney)が1910年に考案した」と書いています。チャーリー・マハニーは、ニューヨーク・マンハッタンの有名な社交クラブ、ホフマン・ハウスのチーフ・バーテンダーとして当時著名だった人で、オリジナル・カクテルもいくつか残しています(写真 =Bamboo@ Bar K)。

 「マハニー=考案者」説は、欧米の他のカクテルブックやHPでもいくつか見られます。例えば、「(マホニーが)Bob Coleが1902年に発表した“Under The Bamboo Tree”という歌からヒントを得て考案した」と紹介する本(Mittie Hellmich著 「Ultimate Bar Book: The Comprehensive Guide To Over 1000 Cocktails」=2010年刊=ほか)や、「マホニーが考案し、インド在住の英国人にもとても人気があった。“リフォーム・カクテル”という別名もある」と記すサイト(Savoycocktails.appspot.com)などです。

 マッケルホーンが初版本で紹介している以上、1910年代には、バンブーは少なくともロンドンやニューヨークではそれなりに知られていたカクテルであったことは確かです。しかし、マッケルホーン=マハニーが「バンブー」とするカクテルのレシピは、エッピンガーのオリジナルとはかなり違う点等からして、このカクテルはむしろ、当時の標準的なマティーニのレシピのバリエーション(ジンをドライ・シェリーに代えたもの)とも言えます。

 たまたま、日本から伝わった「バンブー」を知ったマハニーが、材料は一緒だから名前を拝借したのではないかと考えても不自然ではありません。ただし、上記の石垣氏は、「ニューヨークで(マハニーによって)考案されたバンブーが横浜に伝わり、エッピンガーがそのレシピにアレンジを加えて紹介したため、日本ではエッピンガーの創作(オリジナル)と信じられてきたという考えも、あながち否定できない」としています。ただし僕個人としては、やはりエッピンガーが、アドニスのバリエーションとして、横浜のグランド・ホテルで考案したという従来の説を信じたい気持ちです。

 ちなみに、グーグルで検索してみると、「Bamboo Eppinger」では23件、「Bamboo Mahoney」では6件がヒットしました。欧米の専門サイトでもやはり、エッピンガーを考案者とみているのが多数派のようです。なお、「バンブー」の発表の時期については、1890年説のほかにも、エッピンガー没後の1908年とする説(出典:PBOのHP)や1920年代とする説(信憑性はかなり薄いでしょうが…)もあります。

 ちなみに、1910~30年代の欧米の主なカクテルブックでの「バンブー」の登場状況は、以下の通りです。この当時はベルモットもスイート(イタリアン)・ベルモットが主流であったため、バンブーと言えども、かなり甘口志向でつくる方法も見かけます。サヴォイ・カクテルブックに収録されていないのは大きな謎とも言えます。

 ・「173 Pre-Prohibition Cocktails」(トム・ブロック著 1917年刊)米
   ドライ・シェリー2分の1、スイート・ベルモット2分の1 ※氷入りのグラスに注ぐ
 ・「The Savoy Cocktail Book」(ハリー・クラドック著 1930年刊)英 → 収録なし
 ・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイヤー著 1934年刊)仏 → 収録なし
 ・「The Old Waldolf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米
   ドライ・シェリー2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ2dash
 ・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年刊)米
   ドライ・シェリー3分の2、スイート・ベルモット3分の1、オレンジ・ビターズ1dash
 ・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英
   ドライ・シェリー2分の1、ドライ・ベルモット2分の1、オレンジ・ビターズ1dash、レモン・ピール

 なお、エッピンガーは1907年、横浜で没し、外国人墓地に眠っているということです(出典:上記・石垣憲一氏の著書)。墓地は一般には非公開なので、参拝は叶わないのが残念ですが…。日本生まれの古いカクテルなので、「バンブー」は日本最初期のカクテルブックである前田米吉氏の著書「コクテール」(1924年刊)にも登場しています。レシピは、マッケルホーンと同様、ドライ・シェリー、ドライ・ベルモットが等量です。




・こちらもクリックして見てねー!【人気ブログランキング】





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2021/07/06 11:16:28 AM
コメント(0) | コメントを書く


PR

Profile

うらんかんろ

うらんかんろ

Comments

汪(ワン)@ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

Free Space

▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。

▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

神戸の残り香 [ 成田一徹 ]
価格:1980円(税込、送料無料) (2021/5/29時点)


▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。

▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。

Archives

Freepage List

Favorite Blog

「続^4・オムライス」 はなだんなさん

LADY BIRD の こんな… Lady Birdさん
きのこ徒然日誌  … aracashiさん
きんちゃんの部屋へ… きんちゃん1690さん
猫じゃらしの猫まんま 武則天さん
久里風のホームページ 久里風さん
閑話休題 ~今日を… 汪(ワン)さん
BARで描く絵日記 パブデ・ピカソさん
ブログ版 南堀江法… やまうち27さん
イタリアワインと音… yoda3さん

© Rakuten Group, Inc.