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Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2015/09/06
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カテゴリ:カクテルブック
 ◆「Harry's ABC Of Mixing Cocktails」にみるクラシック・カクテル

  19.ホワイト・レディ(White Lady)


 「ホワイト・レディ」も1920年代から伝わる代表的なクラシック・カクテルです。現代の標準的なレシピは、「ジン(30~40ml)、ホワイト・キュラソー(またはコアントロー、トリプルセック)(15ml)、レモン・ジュース(15ml)」(シェイク・スタイル)という感じでしょうか。

 カクテル名は、このカクテルの「輝くような白色」から「貴婦人(レディ)」をイメージして付けられたのだと想像されていますが、命名者や考案者は確定していません。誕生の経緯については従来、以下の(1)や(2)のような説が、数多くの文献やWEB専門サイト等で紹介されてきました。

 (1)パリの「ハリーズ・ニューヨーク・バー(Harry's New York Bar)」のオーナー・バーテンダー、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)が考案した(マッケルホーン自身は、その著書「Harry’s ABC Of Mixing Cocktails」(1919年刊)に「1919年、ロンドンの社交クラブ「シローズ・クラブ(The Ciro’s Club)勤務時代に考案した」と記しています)。
 
 (2)ロンドン・サヴォイホテル(The Savoy Hotel)のバーテンダー、ハリー・クラドック(Harry Craddock)が1920年代に考案した(サヴォイ・ホテルのHPは「ハリー・クラドックが同ホテルのアメリカン・バーで考案した」と記し、「サヴォイ・カクテルブック(The Savoy Cocktail Book)」=1930年刊=にも収録されています。レシピは「ジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1」です)。
s-White Lady at Utena Bar.jpg
 上記以外では、フランス・カンヌのカールトン・ホテル(The Carlton Hotel)のバーで考案されたという説を紹介するサイト(出典:バー業界団体の一つ、PBOのHP)もありましたが、時期や裏付け資料は示されておらず、信憑性はよく分かりません(写真=White Lady @ Utena Bar, Okayama City)。

 ただし、(1)のマッケルホーンのレシピは、1919年の考案当初、「ホワイトクレーム・ド・マント3分の1、コアントロー3分の1、レモンジュース3分の1(シェイク・スタイル)」で、現代の標準的レシピとは似ても似つかないものでした。

 それを2年後の改訂版では、「ブランデー3分の1、クレーム・デ・マント3分の1、コアントロー3分の1(シェイク・スタイル)」と変更。さらに8年後、1929年の改訂版では、「ジン3分の1、コアントロー3分の1、レモンジュース3分の1」と、現代に近いレシピに変更しています(出典:1986年刊行の同書復刻改訂版)。

 マッケルホーンが短期間になぜ二度もレシピを変更したのかはよく分かりません。ここからはうらんかんろの推理(想像)ですが、ロンドンのサボイホテルでクラドックが1920年代に考案したジン・ベースの「ホワイト・レディ」が好評で、その噂がマッケルホーンの耳にも入っていた。

 一方で、「シローズ・クラブ」時代にマッケルホーンが考案した最初のレシピは、いまいち評判がよくなかった。そこで、2年後に「ブランデー・ベース」に変えたが、レモンジュースをやめてしまった分、アルコール度数がきつくなり過ぎて、女性客の受けがあまりよくなかった。

 あれこれ考えた末、マッケルホーンも結局、サヴォイ・レシピの方が「ホワイト・レディ」という名にふさわしいと考え、変更したのではないか。しかし、サヴォイ・レシピ(ジン2分の1、コアントロー、レモンジュース各4分の1ずつ)をそのまま頂くのは、マッケルホーンのプライドが許さなかったので、「3材料同量」レシピに変えたのではないでしょうか。
 
 なお、欧米のBarでは、1940年代までは、卵白を加えてシェイクする「ホワイト・レディ」も一般的でした。今でも欧米では、卵白入りを標準レシピにしているバーも時々見かけます。

 では、1920~1950年代の主なカクテルブック(「Harry's ABC…」「The Savoy Cocktail Book」以外)は「ホワイト・レディ」をどう取り扱っていたのか、どういうレシピだったのか、ひと通りみておきましょう。

・「Barflies and Cocktails」(ハリー・マッケルホーン著、1927年刊)仏 コアントロー3分の2、ブランデー6分の1、クレーム・ド・マント6分の1(シェイク・スタイル)

・「Cocktails by “Jimmy” late of Ciro's」(1930年刊)米 コアントロー3分の2、ブランデー6分の1、クレーム・ド・マント6分の1(スタイル不明)

・「The Artistry Of Mixing Drinks」(フランク・マイアー著 1934年刊)仏 ジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1(シェイク)

・「World Drinks and How To Mix Them」(ウィリアム・T・ブースビー著、1934年刊)米 ジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1(シェイク)

・「The Official Mixer's Manual」(パトリック・ギャヴィン・ダフィー著、1934年刊)米 ジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1(シェイク)

・「The Old Waldorf-Astoria Bar Book」(A.S.クロケット著 1935年刊)米 掲載なし

・「Mr Boston Bartender’s Guide」(1935年刊)米 ジン1.5onz(45ml)、生クリーム1tsp、パウダー・シュガー1tsp、卵白1個分(シェイク)

・「Café Royal Cocktail Book」(W.J.ターリング著 1937年刊)英 ジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1(シェイク)

・「Trader Vic’s Book of Food and Drink」(ビクター・バージェロン著 1946年刊)米 ジン1onz(30ml)、コアントロー0.5onz、レモンジュース0.25onz、生クリーム1onz(または卵白1個分)

・「Esquire Drink Book」(フレデリック・バーミンガム編 1956年刊)米 ホワイトレディ=コアントロー3分の2、ブランデー6分の1、クレーム・ド・マント6分の1/ホワイト・レディ2=ジン11分の8、トリプルセック11分の1、レモンジュース11分の2、卵白1個分/※「Judy Holliday's White Lady」というレシピも併せて紹介=ジン3分の2、コアントロー6分の1、グレープフルーツ・ジュース6分の1

「Booth's Handbook of Cocktails & Mixed Drinks」(ジョン・ドゥザット著、1966年刊)英 ジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1 卵白1tsp(シェイク)

 「ホワイト・レディ」は日本へも1930年代には伝わっていたと思われますが、残念ながら現時点では、収録した文献・資料とは出合っていません。確認した限りでは、日本で最も早く「ホワイト・レディ」を活字で紹介したのは、1954年刊の「世界コクテール飲物事典」(佐藤紅霞著)です。著者の佐藤氏は、1950年代までに登場した主な「ホワイト・レディ」レシピを網羅する形で、以下の3つを紹介しています。

 ホワイト・レディ1=ドライジン2分の1、コアントロー4分の1、レモンジュース4分の1、ホワイト・レディ2=コアントロー3分の2、ブランデー6分の1、クレーム・ド・マント6分の1、ホワイト・レディ3=ジン3分の1、キュラソー3分の1、レモンジュース2分の1個分、卵白1個分

 「ホワイト・レディ」は今日のバーでも人気カクテルの一つですが、初期の頃の卵白入りのホワイト・レディを頼む方はほとんど見かけません。うらんかんろは、ぜひ一度飲んでみられることをお勧めします。ジンの強さをあまり感じない、思いのほかまろやかな味わいに驚かれると思います。ただしできれば、そのバーが比較的すいている時に頼んであげてください。生卵を扱うカクテルは、(バーテンダーは顔は出さないでしょうが)忙しい時には、おそらく嫌がられるドリンクですので(笑)。




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Last updated  2021/07/06 11:40:39 AM
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うらんかんろ

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