急性動脈解離で51日間の入院治療していた老母が退院して11日でちょうど1ヶ月が経った。在宅医療のための環境つくりをし、訪問医と訪問看護士との契約をした。看護士は2日以来、毎朝訪れて血圧測定、検温、血中酸素濃度のチェック、その他、私たち家族の手におえぬことをやってもらっている。
しかし、51日間の寝たきりの入院生活でさまざまな機能が衰えており、毎日毎日体調のダウンとアップの繰り返しである。家族をもっとも悩まし、努力が追いつかないのは、食事の嚥下機能の極度の衰えにより食事に対する恐怖心から食物を口にいれたとたんに喉が痙攣のような状態になり、食事を拒否するようになってきたことだ。それにより心身が飢餓状態におちいった。家族は、摂取した食事メニューとそのカロリーを記録し、努力したのだったが・・・
12日の午前0時過ぎ、譫妄状態になり低い声で絶間なく何事かを喋り、ときに笑い、ときに歌のようなものを口ずさみ始めた。驚いた私は一晩中見守っていたが、その状態は朝7時ころまでつづいた。一睡もしていない。
翌13日の午後、経口栄養摂取から鼻に管を入れての経管栄養摂取に切換えた。この方法は、食事(経管用栄養液剤)のみならず薬も粉薬を白湯に溶かして注入できる。私が毎食のメニューを考えて調理する手間も時間かからず、また一度の食事にほぼ1時間をかけて食べさせていたときの心労から解放されることになった。しかし、また、こればかりは看護士さんのお世話になるわけにはゆかないので、実行を前に技術指導と注意すべき事項をおしえてもらった。まかりまちがえば危険がないわけではないのだ。基本的には点滴と同様なのだが、胃に直接入れるので嘔吐や逆流がおこりうる。半身を25度に傾斜させ1時間ないし45分かけて所定量を入れてゆく。終了後も逆流をふせぐために20分ないし30分は半身を起した状態に保っておく。また、それ以前の準備として、聴診器で胃の音を確認するため注射器を導管に挿入して15ccほどの空気を送りこんでみる。これは鼻から挿入した導管がちゃんと胃に到達しているかを確認するためで、到達していると、空気を送り込むと胃のなかでブクブクという音がする。音がすれば栄養剤なり薬液なりを注入開始する。これを毎食かかさずおこなうのである。
このようにして老母の看護は新しい事態に入った。きょうまでまる二日経過して、状態はやや回復したかに見える。
さきほど午後17時ころ、主治医のお二人が来られ診察をした。
老衰という生命の避けられないデクレッシェンドに母自身がもてる生命力によってどのように対抗してゆけるか、そして医療がどれだけそれをサポートできるか、また家族がどのような考えでそれらの事態に対処しサポートするか・・・そういう問題なのである。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 14, 2009 10:21:21 PM
コメント(0)
|
コメントを書く