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2009.11.01
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「幻想と怪奇」をテーマにした恩田陸の短編集を読んだ。

○ストーリー
昔話の舞台だと思っていた村が実在した。男と妻は,そこを訪ねる観光ツアーに参加するが,村のはまさに昔話の通りの状態だった。真偽を疑うツアーのメンバーだが,数々の不思議を見て,やがて信じるようになる。だが,その夜・・・

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バラエティに富んだ作品を描く恩田陸が,あえてテーマを絞って統一感を出した短編集だ。そのテーマとは,かつて「幻想と怪奇」あるいは「異色」とも呼ばれたジャンル・・・ミステリー,SF,ホラーの中間点のような不思議な味わいのあるタイプの小説のことだ。

僕は時々恩田陸の作風を「ミステリーではなくてミステリアスだ」と言っているが,このタイプはまさに恩田陸にピッタリで,どの短編もヒネリが利いていて楽しめた。

これまでの短編集では,長編に育てる前のアイディア,あるいは予告編のようなものも含まれていたが,この作品はむしろ短編ゆえの面白さがそろっている。

例によって結末のはっきりとしない”オープンエンド”な作品もあるが,この短編集に限ってはそうした結末も合っていて,まさに恩田陸の本領発揮という印象を受けた。

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「観光旅行」:おとぎ話の世界にしか存在しないと思っていたある村に観光旅行に行った人々は,その夜に奇妙なことを経験する。・・・ラストでじんわりと怖くなる,「幻想と怪奇」ジャンルの最もベーシックな味わいを体現した短編だ。

「スペインの苔」:彼女はブリキのロボットを大事にしてた。そのロボットの由来と,ロボットがいつまでも動く理由とは・・・淡々とした語り口なのに忌まわしい世界が広がっていく。前半も怖いのだが,世界が歪み始めるような感覚を与える後半も怖い。

「蝶遣いと春、そして夏」:死者の魂を山へと送る蝶遣い。この風習がある土地で,少年が経験した夏の物語。・・・他の作家を引き合いにして申し訳ないが,上橋菜穂子の「守り人シリーズ」に出てくる異界〈ナユグ〉のような世界観だ。またヨーロッパ映画のような美しさもある。

「橋」:極東のある島国を東西に分断する橋。バリケードの中から,その橋を見張るのが人々の定期的な勤めだった。ほとんど事件が起きたことの無いその場所で,ある時・・・様々な作品で描かれてきた分断された島をモチーフにした短編だ。恩田陸らしいリアリティが光っている一方で,ラストは・・・ギャグだろうか?

「蛇と虹」:かつての悲劇を語る姉と妹。2人の記憶の食い違いは何を語るのか?・・・黒と赤の2色のイメージが喚起される短編。だが苦手。

「夕飯は七時」:僕たち3兄弟は知らない言葉を聞くと,想像したイメージを実体化させてしまうチカラがある。だが母さんが仕事中なため,おじいちゃんが夕飯を作っていて・・・シュールなユーモア小説なのに,少しもニヒリズムの要素がない貴重な短編だ。絵本にしたら子どもが喜びそうだ。

「隙間」:私が隙間という隙間を恐れるのは,少年の頃住んでいた家の物置の扉の隙間にアレを見たからだ。もう一度あの場所に行ってみると・・・古典的な怖い話だ。ストンと終わるのもそれっぽい。

「当籤者」:当たった後,2週間逃げ切れば大金を手にするというくじに当籤してしまった男は,誰も信じることができなくなる。果たして自分をねらっているのは?・・・ホラーでもあるが,スラップスティックのようでもある。血潮を発見するシーンは怖かった。

「かたつむり注意報」:その街では時々”かたつむり注意報”が出る。注意報のおかげでホテルに閉じ込められた男は,バーで女から昔話を聞くが・・・かたつむりの独特の匂いを思い出してしまった。このホテルではエスカルゴをメニューに入れているらしいが,いいのだろうか?

「あなたの善良なる教え子より」:殺人罪で断罪された男から一通の手紙が届く。果たして彼は本当に殺人を犯したのか?手紙から広がる世界は何を語るのか?・・・ある発想をどこまでも突き詰めてしまうとこうなる,という仮想の世界観が怖ろしい。どう終わるかと思っていたら,ちゃんと怖いラストが待っていた。

「エンドマークまでご一緒に」:ミュージカルの世界が現実だったら?・・・古典的なミュージカルの主演を主人公にしたメタ的ギャグ作品だ。汗だらけになりながら踊る主人公たちがけなげで笑える。

「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」:王国は巨大な列車の中で興され,何十万もの人々を配下に治めた。ある時,列車が動き始め,そこは動く王国となる。だが徐々に・・・宇宙船を舞台にした文明SFはいくつか読んだことがあるが,列車と地上を舞台にしている点が目新しい。恩田陸が好きな,マヤ文明の雰囲気もある。

「SUGOROKU」:国中の村々からある街に集められた少女たちは,街はずれの小屋からお城の部屋を目指して,毎日少しずつ部屋を移動する。不思議なゲームのルールは?果たしてこのゲームの目的は?・・・設定だけを考えるとギャグなのに,読んでいるうちにぴりぴりと怖くなってくる。絶品だ。

「いのちのパレード」:地平線まで見渡せる場所に生き物たちがやって来る。長い長いパレードの果てにやって来たのは何なのか?・・・本のタイトルにもなっている作品で,読んだことのない不思議な雰囲気を持っている。この短編で終わってくれても良かったのだけど・・・

「夜想曲」:重厚なデスクにゆったりとした椅子。その部屋の主に新しい物語を伝えに来たのは?・・・恩田陸の筆は,部屋や家具の手触りや匂いまでも感じさせる。本当に稀有な才能だと思う。この書き下ろし短編は,前の作品さえなかったらしっくり収まったと思う。







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Last updated  2009.11.03 15:02:50
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