軍隊アクション系侵略SF映画を観た。
○ストーリー
年令による体力の低下と戦地で指揮下の分隊を全滅させた負い目とで,退役を決意していた海兵隊のナンツ軍曹は,急な任務で退役の保留を言い渡される。それは世界の都市を同時に侵略してきたエイリアンからロサンゼルスを守ることだった。ナンツはマルチネス少尉の指揮のもとで,警察署に避難している民間人を救出する作戦に加わる。空爆の期限が3時間後と迫る中,彼らはなんとか作戦を成功させようとする。だがマルチネス少尉が倒され,ナンツは小隊の指揮をとることとなってしまう。そして?・・・
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『インデペンデンス・デイ』のパチモンか?程度の期待感で観たら,かなり面白かった。
エイリアンの戦闘機に制空権を奪われてしまったという設定で,空軍は攻撃も支援も出来ない。そのため,主人公たちの民間人救出も,早々に車両や徒歩での移動がメインとなり,SFなのにひじょうに狭い地域の地上戦の物語が描かれる。
たしか『トランスフォーマー』でもやたらと米軍が活躍していた。なんだか日本の〈ゴジラシリーズ〉にほぼ毎回自衛隊が協力するような伝統なのだろうか?
けれども『ロサンゼルス決戦』は,飛行機,戦車,戦艦など派手な武器を抑え,ひたすら地上戦を描いたところが目新しく,おかげで不思議なリアリティが生まれる結果につながった。
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SF映画に登場する軍人は,エースパイロット,天才戦略家,無敵の海兵隊,などばかりだが,この作品の主人公,マイケル・ナンツは,40才くらいの平凡な海兵隊だ。地位はまだ二等軍曹で,前線で部隊を全滅させた体験があり,現在の部隊の中でもあまり好かれていない。
よくもまあアメリカ映画で,こんなキャラクターを主人公に据えたものだと驚いた。本人は真面目に仕事をこなしているだけなのに,気が付けば若手に追い越され,という状況だ。
ナンツを演じるのは,くたびれたハンサムを演じることの多いアーロン・エッカート。
年令的に何回も前線の経験をしていて,充分枯れているだろうと思われるのに,過去の作戦失敗にこだわり過ぎなのは気になるけれど,愚直な海兵隊員を上手く演じている。
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避難の途中で,数名の空軍兵士も回収するのだが,その1人がサントス技術軍曹という研究職の女性だ。この人が,「私も手伝う」と言い出し,バリバリと海兵隊並みの活躍をする。
なにしろこの人を演じるのは『アバター』でも『マチェーテ』でも,女性戦士を演じていたミシェル・ロドリゲスだ。口の開け方と獰猛さがいかにも肉食系で,絶対研究職じゃない。
ちょっと浮いてたけど,この人を出演させないといけない事情でもあったのだろうか?不思議だ。
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主人公のキャラクター設定が秀逸なので,恒星間移動が可能なエイリアンと米軍の通常歩兵が対等に戦うことが出来るとか,主人公たちは避難の途中でたまたま母艦を見つけてしまうとか,そういった所には目をつむることにする。
『トランスフォーマー』も『インデペンデンス・デイ』も,また〈ゴジラ〉でも,国家の指導者と軍隊の最高責任者が作戦会議室で喧々諤々とやるシーンがおなじみだけど,実は画面に映らないところで,こうした兵隊たちがいっぱいいて,戦闘や救出をしていたんだろうなあ,と考えさせてくれる。まあ,SFやアクションでリアリティを追及する必要はあまり無くて,必要充分にリアルと思わせる描写をすれば良いと言われている。
この作品では,通常の大作では描写されない人たちのパートを描く,と割り切ったところに作品の個性が出ている。皆が同じ切り口では仕方が無いので,この作品のB級で割り切っているアプローチは面白いと思った。