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カテゴリ:社会問題
A氏:パロマ事故についての日記で、ISO(アイ・エス・オー)9001についてふれていたけれど、その弊害はどこにあるのだろう?
流れるプールの管理会社もISO9001をとっていたとの話だが。 私:一般的に言われるのは、ムダな書類、ウソの記録の増加とそれによる社員のモラル低下だね。 それが、本当の品質を見失わせることになる。 A氏:なんで、そんなものをムリにわざわざ、取得するの? 私:長い話になるので、簡単に言うね。 最初、EU(ヨーロッパ連合)で始まった。 EU国間の商取引で、ISO9001を取得して、かつ、製品がEUの製品規格にあったものにCEマークをつけることになった。 このマークないとEU市場で売れない。 だから、日本企業ではヨーロッパに輸出するときは、製品の品質だけでなくISO9001をとっていないと輸出できなくなった。 市場からの強制だ。 トヨタ生産方式のような世界的に実績が出てからのルールの強制ではないね。 そのうちに、日本国内の取引などに使われだした。 A氏:日本のJISマークと似ているねが、製品の審査はないから、管理のやり方だけのお墨付きだね。 私:問題は、このISO9001の規格の基本発想だ。 文書主義といって、まず、マニュアルがあって、次にそのマニュアル通りの行動がある。その文書統制で品質が保証される。 極端な場合、審査員が「朝礼をやっていますね。では、そのやり方の文書を見せてください。」となる。 さらに「その通り、やったという証拠の記録を見せてください。」となる。 こんなことは真面目にできないから、コスト増になるし、ウソの記録の温床となるので、大分、改善はされてきているがね。 その底に流れる、書類が品質を保証するという考えはなかなかしつこいね。 A氏:死んだ書類の山となるね。 品質で世界を制覇しだした日本に対抗するヨーロッパの陰謀ではないの? 私:日本に対抗する意図は、多少はあったが、ご本家のヨーロッパでも書類増加に悩んで いたんだ。 イギリスでは、むしろ、競争力は低下するというマイナスの現象すら出た。 これは、翻訳書「こんなISO9000はいらない」(近代文芸社発売)(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4823106601.htm)にイギリスの実状が示されているよ。 むしろ、ISO9000に代わるものとして、世界的に実証されたトヨタ生産方式を推奨しているね。 ところで、審査は、年1、2回、永久にある。 審査の日が近づくと、品質の関係者がウソの記録を作るために多忙になる。 年中行事になる。 そのコストや意味のないことを嫌々やるためのモラル低下は、真の品質を見失う怖い結果となる。 A氏:三菱ふそうやパロマ現象だね。 ISO9001は品質関係だが、環境のISOであるISO14001をとっている大企業が、環境の法令を守らないで、偽記録をとっていた例が時々新聞に出るね。 私:もう一つのISO9001問題の大きな原因は、審査員の質の問題だ。 企業は審査員の指摘を神の声のように従う癖が抜けない。 その審査員の指摘が適切でないどころか、ムダな書類の増加を促進させる。 審査員は、アルバイトでコンサルティングもやる。 A氏:審査員は資格があるのではないの? 私:資格制度はあるが、比較的簡単に取得できる。 その資格と審査の高いレベルがバランスしていないね。 本来、公認会計士よりむずかいし仕事だよ。 そして、これらの審査員やコンサルタントは、大手企業のモデルで育ったか、それしか知らなかったので、中堅、中小企業のISO9001で大きな問題を起こしてきた。 A氏:何故? 私:大手企業はムダな書類でも吸収できる人や金はなんとかできるが、中堅、中小企業はそんな余裕はない。 ISO9001の序文には、企業の業種、規模などによってシステムが異なると書いてあるのに、審査員やコンサルタントは、企業の個性にあったシステムを開発できない。 大手型を押し付ける。 A氏:そういうコンサルタントは、診察無しで処方する医者と同じだね。 処方が決まっていて、企業の体質をそれにあわせるという奇妙なことになるね。 ところで、これらの問題と日本版SOX法とはどういう関係にあるの? 私:SOX法の中心となる考えは、膨大な業務の手順を書類にすることだ。 これで業務がオープンになって内部統制の証拠になり、粉飾決算はしないであろうという考えだ。 株式市場で株主も安心するという発想だ。 ISO9001の考えと似ているね。 ISO9001の最初の考えも仕事の手順を文書化し、その通りに実行すれば、品質は保証されるという発想だった。 しかし、事実はそうでなかった。 SOX法が同じ轍を踏まないことを望みたいね。 A氏:アメリカのSOX法に対応したリコーの例では書類つくりは業務の帳票の流れを書いたフローチャート作成が中心で、大きなフローチャートが約7千枚、費用は8億円かかったということが、この日記にあったね。 私:それで、本当に膨大な書類で粉飾決算が防止できるのかね。 その考えに疑問を持つのでなく、ムダな文書を効率よく電子化しようとして、今、IT業界がこの市場開拓に乗り出しているね。 マニュアル主義、書類主義はますますIT化とともに進み、新しい社会問題が生まれつつあるね。 A氏:ムダなものはなくすることが最上の方法だが、ムダをそのままにして、それをIT化するという考えは、経営戦略的に見たらムダ保存の先延ばしに過ぎないように思うね。 それよりも社員のモラル向上のほうが重要に思えるがね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.10.05 08:49:03
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