カテゴリ:読書
重松清「その日のまえに」を読んだ。
(この記事はネタばれあり) この本は連作短編集。 タイトルは以下のようになっている。 「ひこうき雲」 「朝日のあたる家」 「潮騒」 「ヒア・カムズ・ザ・サン」 「その日のまえに」 「その日」 「その日のあとで」 すべての作品は、人が死ぬ「その日」を底辺に進行する。 「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」はつながっている。 だがそれだけではない。 「ひこうき雲」に出てきた美代子は看護婦になって後に重要な役割を果たす。 私が末期ガンなら、美代子いる病院に世話になりたい。 「潮騒」も同じように「その日のあとで」の伏線になっている。 「ヒア・カムズ・ザ・サン」の親子も後に登場する。 まったく関係のないと感じても、「どこかで繋がっている」のが面白い試み。 (「朝日のあたる家」が他のエピソードとどう繋がるか分かりにくい。 だが、分かると思わず手を叩いてしまう) この本がきっかけとなって、看護師を目指す人がいるかもしれない。 高校生の息子が介護を目指すように。 そのくらい印象に残る話の連続だ。 「朝日のあたる家」の先生もキャラクターが面白い。 夫からは暴力を受け、万引きをしてしまう元教え子の話は切実。 でも先生の前向きさは救いになった。 「ヒア・カムズ・ザ・サン」の親子には笑わせてもらった。 あの母にしてこの息子ありである。 だが、笑った後で泣きもした。 重松は天才じゃない。 でも人を笑わせてじんわりと泣かせるのは作家としての才能。 それは多くの人が認めるだろう。 直木賞を受賞した「ビタミンF」。 ありえない設定ながら読者を重松の世界に引き込んだ「流星ワゴン」。 「その日のまえに」もまた重松ワールド炸裂だ。 人はいつか死ぬ。 「バカの壁」がベストセラーになった養老孟司。 彼は「死の壁」でこんな事実を書いている。 「人間は死亡率100%」 誰にでも訪れる死。 その時家族はそれをどう受け止めるのか? 買って、そして読んで損はない。 「その日のまえに」は傑作と呼ぶべきだ。 追記 以前、自殺をテーマにしている「舞姫通信」についての記事を書いた。 自殺と「舞姫通信」(重松清) 「舞姫通信」が問いであるなら、その答えは「その日のまえに」。 私は少なくともそう考えている。 なお、この作品は2008年に映画化されている。 出演は南原清隆、永作博美、筧利夫、今井雅之ほか。 *********************** 関連記事 その日のまえに(重松清) その日のまえに 重松清 ↑「その日のまえに」に関する記事。参考にさせていただいた。 バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.01.18 12:58:25
[読書] カテゴリの最新記事
|
|