カテゴリ:読書
海堂尊「ジーン・ワルツ」を読んだ。
(この記事はネタばれあり) 「チームバチスタの栄光」で有名になった現役医師の海堂尊。 今度の「ジーン・ワルツ」は産婦人科や代理母出産がテーマ。 場所も今までの桜宮ではなく東京。 今、この小説を読むのはタイムリー。 なぜなら、先日香川県で受精卵取り違え事件が起きた。 受精卵取り違えで妊娠、中絶 主人公は東城大学出身で帝華大学助教の曾根崎理恵。 彼女は学生結婚しており、夫はゲーム理論研究のためアメリカ在住。 彼女は大学以外にも勤務先があった。 それがマリアクリニック。 ところがここの院長は末期の肺がん。 とても診療はできない。 院長の息子三枝久広も北海道で術中死により逮捕される。 理恵は閉院まで残って5人の妊婦を見守る。 現実に、産婦人科は瀕死の状態だ。 世は少子化に向かっている。 それにも増して医師の勤務が長時間に及ぶ。 さらに時として患者に医療過誤を疑われ、訴えられることすらある。 それは通常の出産が病気ではなく、「命の誕生」を意味するから。 登場人物も、今までのシリーズを読んでいればなじみが深い。 帝華大学産婦人科准教授の清川吾郎。 彼は「ひかりの剣」で帝華大学医学部剣道部主将だった。 私はまだこの作品を読んではいない。 だが機会があれば読みたいと思う。 (近くの図書館で、「ひかりの剣」は予約50人待ちの状態) また、曾根崎理恵は「医学のたまご」の主人公、薫の母親。 まさか自分の息子が中学生で東城大学医学部に通うことになろうとは。 私は「山咲」という名前が出たところで気がつかなかった。 不覚だ。 産科医、三枝久広の術中死による逮捕。 これは福島県立大野病院産科医逮捕事件がモデルとなっている。 この事件で担当医師は無罪の判決を受けている。 検察による控訴断念でこの判決は確定した。 「ジーン・ワルツ」は話が荒唐無稽なこと。 それを差し置いても産婦人科の現状を私のような一般人に理解させるにはいい教材。 最後の出産シーンは涙が出た。 この世に奇跡は多数存在している。 その多くが気づかれないだけだ。 理恵が担当した発生学教室での団結。 将来、きっと彼らはいい医師になる。 あの講義を医学生だけに聞かせるのはもったいない。 保健体育の時間を使って中学や高校で講演してほしいくらい。 中絶の実態を知らせるだけで、すごく意味のある教育ができると思う。 人工中絶は、毎年30万件行われているという。 年齢別 年度別人工妊娠中絶件数 青井ユミのような女性が中絶を申し込みに行く姿を想像するとため息が出る。 何回かこのブログでも書いたが、必要な中絶だけで年間30万件もあるとは思えない。 しかも、この数字は「闇での中絶」が含まれていない。 自殺者が連続して3万人を超える国。 そして毎年30万、「命のたまご」が失われる国。 それが日本の現実。 中絶についてはこの本が詳しい。 堕胎がテーマ「天使の代理人」 ↑青井ユミが選択したことは、東野圭吾「時生」を思い出した。 彼女の選択は妙高、理恵とともに私も涙が出た。 理恵のように、医師が政治的な話をしてもいいじゃないか。 何かを変えるためには、誰かが動かないと。 地球は愛すべき馬鹿が動かしている *********************** 関連記事 254「ジーン・ワルツ」 海堂尊 〈図〉 *********************** バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.02.20 10:49:48
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