テーマ:ミステリはお好き?(1451)
カテゴリ:日本ミステリ(あ行作家)
昭和39年夏。
10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。 この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は 誰一人としていない。 そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。 同時に 「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた! しかし、この事件は 国民に知らされることがなかった。 警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。 「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。 内容(「BOOK」データベースより) 奥田さんの作品は、ユーモアたっぷりで時に爆笑してしまう、伊良部シリーズしか読んだことがありませんでした。 この作品は、それらとは全く雰囲気が違う社会派サスペンスですが、ぐいぐい引き込まれました。 昭和39年といえば、私はまだほんの子どもだったし、九州に住んでいたこともあって、オリンピックの記憶はほとんどありません。 しかし、この作品を読むと、その頃の日本には、オリンピックを機に、東京を国際的にも認められる都市にするのだ、という気運が溢れていたことがわかります。 武道館も、代々木の国立体育館も、モノレールもオリンピックのために作られたのですね。 そんな時に爆破事件が起こり、東京オリンピックを人質に、身代金が要求されます。しかしそれは、国民にはまったく知らされませんでした。 刑事の視点で描かれる章と、時間を戻して、兄を出稼ぎ先で亡くした東大生・島崎の視点で描かれる章が交互に配され、次第に一つの地点に向かっていくところが緊迫感を高めます。 熱くなる刑事に対し、冷めた犯人の様子が印象的でした。 オリンピックの成功を夢見て国民が熱くなっていく裏で、田舎には信じられないくらいの貧困にあえぐ農村があること。 オリンピックに間に合わせるため、過酷な労働条件の建設現場で働き、時には命を落とす者がいること。 この作品では、ただ昔を懐かしむだけではなく、昭和の光と影を描き切っており、その迫力に私は圧倒されっぱなしでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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サスペンスというだけでなく、社会派ドラマとしても楽しめそうですね。
奥田さんってすごい。 日本はすっかり豊かになってしまって、ワールドカップも万博も、オリンピックも<お祭り>を味わうばかりになっているけれど、こうしたものを読んでみると、見方も変わるかもしれません。 図書館に予約を入れます! (文庫化されるといいのですが☆) (2010年05月23日 10時49分00秒)
あむあむ108さん、こんばんは!
>サスペンスというだけでなく、社会派ドラマとしても楽しめそうですね。 >奥田さんってすごい。 本当にすごいです、引きこまれました。インパクトがあります。奥田さんの新しい面を知りました。 >日本はすっかり豊かになってしまって、ワールドカップも万博も、オリンピックも<お祭り>を味わうばかりになっているけれど、こうしたものを読んでみると、見方も変わるかもしれません。 光が強いほど、影も濃くなるのでしょうか、色々なことを考えさせられました。 >図書館に予約を入れます! >(文庫化されるといいのですが☆) しっかり読み応えのある、ずっしりした単行本です。お楽しみに♪文庫化された際には、上下巻になるかもしれませんね。 (2010年05月24日 22時58分09秒)
こんばんは!
図書館で借りた本を数ページ読んだところで、手元におきたくなって結局単行本を購入。じっくり読みました。 楽しんだ、と表現するのが申し訳ないような読み応えです。 島崎も、最初は狡猾なだけに思えた村田も、次第に嫌悪が薄れてきました。その一方で、刑事たちも魅力を増して感じられて、テレビマンの忠もいいやつだったし… 昭和という時代を考えさせてくれるところもたっぷり。 読んでよかったです。 TBさせていただきますね! (2010年10月11日 23時10分05秒)
あむあむ108さん、こんばんは!
TB有難うございます♪ >図書館で借りた本を数ページ読んだところで、手元におきたくなって結局単行本を購入。じっくり読みました。 >楽しんだ、と表現するのが申し訳ないような読み応えです。 久しぶりに、読み応えのある作品でした。あむあむさんが手元に置こうと思われた気持ちもわかります。 >島崎も、最初は狡猾なだけに思えた村田も、次第に嫌悪が薄れてきました。その一方で、刑事たちも魅力を増して感じられて、テレビマンの忠もいいやつだったし… テロは許せることではない、というのはわかっているのに、だんだん捕まらなければいいのに、という気持ちになって困りました。 >昭和という時代を考えさせてくれるところもたっぷり。 >読んでよかったです。 世の中が急速に発展していく時の高揚感と、そんな動きから取り残される人の姿が忘れられません。 (2010年10月13日 21時21分10秒) |
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