神様ゲーム:麻耶雄嵩
昨日に続き、これもミステリーランドの中の一冊です。小学4年生の芳雄の家は、やさしいおかあさんと、刑事の仕事が忙しいけれど息子の誕生日のためには都合をつけて早く帰ってきてくれるおとうさんのいる温かい家庭、のはずでした。そして、近所の子供たちで探偵団を作り、山の中の秘密基地に集まるという、わくわくする毎日を送る、はずでした。色白で可愛い同級生の女の子に、淡い恋心をときめかせる日々が続く、はずでした。それがなぜこんなことに……。いくつか兆候はありました。バースデイケーキのろうそくを吹き消そうとしても、1本だけ残ってしまうこと。最近この町で起こった、猫の連続惨殺事件。クリスマス・プレゼントに買って貰った正義のヒーローのロボットの名前が、ジェノサイドロボだということ。これは直接関係ないでしょうが、不吉です。そして、自分のことを神様だという転校生の鈴木君の存在。知りたいことも知りたくないことも教えてくれる彼は、本当に神様なのでしょうか。それとも、神様ゲームをしているだけなのでしょうか。もたらした結果を見ると、実は○○のようでさえもあり、もしかしたら究極の名探偵なのかもしれない、という気さえしてきます。同級生の殺人事件が起こってから、すべてが以前と変わってしまった主人公の人生は、今やトラウマだらけの悲惨なものですが、さらに最後に一層ショックを受けることが起こります。その衝撃度は、読み手にとってもふらつくくらいすごいものです。放り出された読者は、それがどういうことか自分なりに考えるしかありません。私も色々考えましたが、ふとおぞましいことに考えが行ってしまいそうになるのを振り払いたくて、ついついもう一度読み返してしまいました。この結末をどう考えるかを、読んだ方に聞いて見たいです。麻耶雄嵩さんは、これまで「翼ある闇」しか読んだことはありませんが、やはりすごい衝撃を受けました。普段はコージーが好きなのですが、この方の作品には、なぜか強烈な魅力を感じます。もっとほかの作品も読みたくなりました。ああ、でもこの話は子供には読ませたくありません。 神様ゲーム : 麻耶雄嵩