システムエンジニアの晴耕雨読

「ドラッカー わが軌跡　　知の巨人の秘められた交流」から・・


　ポランニー家の生涯最低のクリスマス・ディナーの話を、

　前回紹介しましたが、

　　　「ドラッカー20世紀を生きて―私の履歴書」



　ポランニーの５兄弟姉妹の活躍には目を見張るものがあります。

　オットー・ポランニー

　　機械の設計者から実業家となる。

　　熱烈なマルクス主義者となり、社会主義の新聞「アヴァンティ」を発刊、

　　ベニート・ムッソリーニを主筆に迎えたが、第一次大戦により、

　　社会主義者としての夢を打ち砕かれる。


　アドルフ・ポランニー

　　技術者から鉄道家となり、ブラジルの鉄道建設に携わる。

　　ブラジルが非白人の未来社会となることを夢見るが破れる。


　モウジー・ポランニー

　　ハンガリー民族運動、農民、民芸、民謡、民話の復興運動のスター。

　　１９歳で、農村社会学と運動を先導し、チトーやイスラエルのキブル

　　へも影響を与える。

　　その後、一切の公的活動から手をひいた。


　カール・ポランニー

　　「大転換」において、産業革命の歴史を書き変えようとした。

　「イギリスの社会と経済を転換させたものは、機械の力ではないとした。

　　直前の世界貿易の急拡大でも、さらにその前の１７世紀から１８世紀にかけて

　　起こった農業革命のせいでもないとした。


　　それは、自由主義体制が、財と資本のみならず、

　　土地と労働という２つの生産要素まで扱うようになったためであるとした。」


　「彼の目指したのは、

　　市場が、唯一の経済システムでもなければ、

　　最も進化した経済システムでもないことを明らかにすることだった。

　　そして、経済発展と個の自由を両立させつつ、経済と社会を調和させる場は、

　　市場以外にあることを示すことだった。」


　文化人類学と原始経済研究において、一大権威となった。

「しかし、カール自身は、いわば失意の人だった。

　先史学や文化人類学は、資本主義と社会主義を超えたよき社会の探求の手段に

　すぎなかった。彼が経済史から得ようとしたものは、未来への鍵だった。

　だが彼の得たものは、何の役にも立たない過去だった。」


　マイケル・ポランニー

　　アインシュタインの下で働き、ノーベル賞候補に擬せられ、

　　化学賞か物理学賞のいずれか・・と言われる。

　　ところが、第二次大戦中に大きく関心を変え、哲学者となる。

「マイケル・ポランニーにとって、人間の実存とは孤立した個としての実存だった。

　しかも、その個たるべき人間は、論理と因果律ではなく、

　価値と倫理に基盤を置くべき存在だった。

　その問題意識と解答を端的に表明したものが、

　彼の最も有名な著作「ニヒリズムを超えて」だった。」

　・・ストア派の哲学者になってしまった。



「彼ら全員が別の道を歩いた。

　求めたものは同じだった。

　それはちょうど、聖杯を求めて旅立った円卓の騎士たちを思い起こさせた。


　彼らの全員が答えを見つけた。

　そして全員が、見つけたものが答えでないことを知った。


　世間一般の尺度によれば、彼らほどの成功者はいなかった。

　同時に、彼らの自身の尺度によれば、

　彼らほどの失敗者はいなかった。・・」


「彼らの全員が「社会による社会の救済」を信じていた。

　しかし、やがて諦めさせられ、落胆させられていった。」



ドラッカーわが軌跡