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カテゴリ:邦画
「痛快時代劇アクション」という呼名がふさわしい作品だ。「黒澤明は中学生並み」と評した小説家がいたが、不可解な小説よりもこの映画のほうが数段面白い。話は明瞭でテンポよく、二転三転する展開、時代劇らしくないセリフの小気味良さ、後を引くような計算された笑い、などなど楽しめる要素が詰まっている。
山本周五郎の「日日平安」を原案にした1962年の作品だ。 俳優陣は黒澤映画の常連達だが、加山雄三、田中邦衛らが加わる事で物語りに生きのよさが加わる。とくに加山雄三のセリフまわしは現代劇に置き換えても違和感ない程あかぬけて聞こえる。若大将シリーズ「田沼雄一」が侍の格好をしているような気分だ。そして「青大将」を彷佛とさせる田中邦衛が従順で坊ちゃん育ちの加山に対して、常に懐疑的で慎重な侍を演じる。この「椿三十郎」はもともとは「青大将」という名の黒澤明の脚本だったそうだ。撮影時期もかさなるし、ひとつの作品が世に出るまではひっ替えとっ替えの試行錯誤があったんだなあ、とわかる。そしてこの映画で笑えるのが小林桂樹だ「サラリーマンシリーズ」よろしくひょうきんで憎めない敵の侍役がおかしい。「七人の侍」のちょうど千秋実のような存在だろうか。 観ていてあれっと思ったのは、仲代達也の顔が妙に長く見える。カツラの具合だろうか。それと夜の室内がとても明るいところ。ま~気になると言えば気になるがそれでいて面白さが半減していない。キーポイントは往年の女優入江たか子が扮する奥方の存在だろう。三船敏郎演ずる三十郎の本質をするどく見抜くあたりが興味深い。最後の三十郎と仲代演ずる室戸半兵衛の対決シーンは黒澤映画の真骨頂。 はじめから終わりまで緊張と緩和こそが娯楽映画の基本なのだろう。 椿三十郎 1962 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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