セーフティーネットクライシス しのびよる貧困 子どもを救えるかの紹介(最終回)です。
神野直彦(関西学院教授)
イギリスは「ゆりかごから墓場まで」といったが、北欧では「胎児から墓場まで」。
北欧のコンシェンシャスは
「子どもは社会の宝物」・・・子どもを育てる責任は社会全体で負う
1、経済の成長・・・新しい時代に対応していくためには教育しかない
2、雇用の確保・・・教育で全ての国民の能力が高まれば、雇用されて社会に貢献できる
3、社会的正義・・・全ての国民の教育水準を高めれば貧困も格差もなくなる
教育こそが上記の社会目標を達成できる。これを学ばなければ・・・。理念+制度・仕組み。
山井和則 厚生労働大臣政務官
北欧は「福祉以上に教育にお金をかけている」、「福祉立国と言うよりも教育立国」
新政権は「子ども手当て」や大学の奨学金の充実などを検討しており方向転換をしつつある。
財源については、ダム建設など公共事業の中止に象徴されるように、現在、転換の苦しみを味わっている。国民の皆様もこの転換を応援してほしい。
湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)
これまで日本政府は貧困の問題に向き合えていなかった。いま、どれだけの子ども(国民)が貧困状態にあるのかと言うこと(貧困率の測定)についても、いままで一度も調査がなされていない。
その意味では、「貧困問題(解決)」のスタートラインにまだ立っていない。
OECDの調査などではなく政府としてきちんと調査し数字を出さなければならない。(対策によってこれだけ貧困が減ってきたということも出していただきたい。現にイギリスはこの間、そのような取り組みを行っている)
山井和則 厚生労働大臣政務官
民主党のマニュフェストで明記したとおり、貧困率を調査し削減目標を明示したい。
司会者
教育にお金をかける必要性については合意が得られたと考えるが、しかし財源が必要。
神野直彦(関西学院教授)
税収が少なくなってきた理由は、所得税と法人税の大減税を1990年代からやってきたこと。所得の再分配ができていないから、国民の生活は苦しくなる一方だった。
湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)
消費税の話だけでなくトータルで考えていく必要がある。他国と比較して明らかに国民負担率が低い。企業に関しては社会保障料の負担も含めて企業負担をトータルで見ることが大切だ。
〔国民負担率の問題と関連して、「社保庁」の運営なども含めて行政や政治に対する信頼が高まっていくようにする必要がある、という意見交換がなされる。〕
VTR
中村さん(仮名)は去年の3月に離婚したが、保育所の申請をするのはこれで5回目。子どもを預けられないいわゆる「待機児童」の状態が5ヶ月間続いている。
中村さん「(働けないから)生活できなくなっちゃうんですけど」(市の職員へ)
保育所の不足というセーフティーネットの不備が子どもの育つ環境をおびやかしている。
収入は、子どもを母親に預けて行っている週1回のアルバイト代と、児童扶養手当など月8万円ほど。これで生活のすべてをまかなわなければならない。お風呂やオムツを替える回数も減らさなければならない状況。
数年後、子どもたちが小学校に上がれば教育費もかさむ。たとえ働きに出ることができたとしても、一人の収入で高校や大学に通わせることなど想像もできない。見通すことのできない子どもたちの未来。中村さんにはどうしようもない現実だ。
「これから先、どうしていけばいいんだろう。(子どもたちが)かわいそうだなって思います・・・。いろんなことを経験させて、いろんな夢を持ってほしいと思いますね・・・。どうしようもできないけど・・・。」
新浪剛史(ローソン代表取締役社長)
機会の平等こそが日本の経済を支える。これは絶対にやらなきゃならない。創造性の豊かな人材を育てる、という意味では大学までも視野に入れて、政策を進めていってほしい。教育への投資に対して企業もしっかりバックアップしていく必要がある。
神野直彦(関西学院教授)
先ほどの「待機児童」の問題も含め、医療・ケア・教育などのサービス給付とセットで安全・安心の体系(セーフティーネット)を保障する必要がある。子どもたちは直接社会に対して声をあげることができない。そういう意味では「声なき声」の民主主義を・・・。
湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長)
これまで大人たちは無責任に子どもたちに「夢を持て」と言い続けてきた。しかし夢を持つためには「夢を見ることのできる条件」がある。その条件をつくらなければ・・・。子どもの貧困と言うのは「夢を見ることについての機会不平等」だ。
例えば今の高校2年生が来年無事に卒業できるかどうか、といった直近の問題もしっかりと視野に入れながら、対応が先送りされないように「政権交代」の効果が実感できるようにしてほしい。
山井和則 厚生労働大臣政務官
マニュフェストにも明記したように「待機児童ゼロ作戦」を進めていく。子どもに優しい社会をつくるスタートになるような政権にしていきたい。
〔コメント〕
ゲストが交換した意見について特に付け加える必要もなさそうです。湯浅氏が『反貧困』などで提起してきた「深刻な現実(番組ではVTR・グラフ等を資料に)」を共有していけば、「将来も見通しつつ今何を大切にすべきか」という点については(企業経営者も含めて)おのずと合意が形成できるのではないでしょうか。
番組で示されたものと別のグラフ(紙屋さんのHPより)も下に紹介しておきます。
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