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対局は意外に早く終わった、見ている者にそのように感じさせるものであった。
何しろ両国を代表する名手同士の対戦だ。 両者共に高速で頭脳を回転させ瞬時に最善手を導き出して打つのだから、観衆達が小声で打たれた手の検討を行うのもついていかない。 二人だけの世界が盤上に広がっていた。 だがやがて形勢が理解できるようになってくる。 ルルーシュの劣勢、机に肘をつきながらジョゼフが思考の深みに身を委ねる。 手が伸び、指に嵌めた指輪の土色の宝石が煌めいた。 黒のナイトが白のキングを追い詰める。 「チェックメイト、だな」 「私の負けですね」 ルルーシュが大きく息を吐いた。 おおッとざわめきが走る。 ジョゼフがパンパンと手を叩いた。 「いやいや、負けとは言え流石であったぞ!余がここまで追い詰められるとはな!久しぶりに充実した時間が楽しめた!」 満足そうに笑うジョゼフ。 ルルーシュは彼の様子を静かに観察していた。 そんな視線を受けてジョゼフが立ち上がり誰かの名を呼び手招きをする。 人だかりが割れて一人の小柄な少女の姿が現れる。 青いドレスを纏った少女、その肩にジョゼフが手を置きルルーシュに向き直る。 「これは余の姪であるシャルロットだ!余を楽しませてくれた礼だ、ルルーシュ殿。シャルロットと踊る権利を与えよう!」 何とも言い難い上から目線の物言いだ。 ルルーシュは内心カチンとくるが、ここでガリア王の機嫌を損ねても意味がないと思い直す。 たとえ見下した言い方であっても自分は所詮宰相だ。 ジョゼフ一世がゲルマニア皇帝であるオデュッセウスにまでそういった態度で出るなればともかく、身分は対等ではないのだからこれは自然な応対なのだ。 自分にそう言い聞かせてルルーシュは笑みを浮かべる。 「喜んでお相手致しましょう」 「うむ、それでは楽しみたまえ」 ルルーシュがシャルロットの手を取る。 ジョゼフが合奏団に合図を送り、中断されていた音楽が再び流れ始める。 だが踊り出す者はだれ一人としていない。 ルルーシュとシャルロット、この二人だけの舞台と化している。 他の王侯貴族達が見守る中で二人が手を取り合って進んでいく。 あれほどルルーシュが誰かと踊る事を望んでいたジノもただ呆然とその光景を見つめていた。 ルルーシュは集中する視線にやり辛いものを感じていたが、ジョゼフ一世の気まぐれに巻き込まれたもう一人尾被害者に気遣う様な視線を向けた。 まだ幼さを色濃く残した少女。 ルルーシュの視線を感じたのか、彼女が顔を上げた。 「あまりダンスは得意じゃない」 「え?」 「もし、足を踏んだらごめんなさい」 フッとルルーシュの顔から硬さが消える。 緊張すべきは自分ではなかった。 触れている手から伝わってくる緊張感にルルーシュは己のすべき事を認識する。 別にガリア王の意向に従って今後の外交をやり易くしようとか、自分を侮る貴族達も見返してやろうとか、そんな事を考えるべきではないのだ。 今すべき事は完璧に彼女をエスコートして恥をかかせない事。 「それでは私がリードしましょう。それに付いて来て下されば結構ですよ」 音楽に乗せて二人が踊り始める。 切れのあるステップ、見栄えのするルルーシュの踊り方に皆感嘆の声を上げた。 時折小声で指示を出しながら、ルルーシュは歩幅を巧みに調節してシャルロットに合わせる。 「右へステップ、その場でターンを」 軽やかに踊っているように見えるシャルロットの動き、誰にもルルーシュが引っ張って踊っているとは思わせない程に完璧に整っていた。 相手をリードする素振りを他者に悟られてはいけない。 ルルーシュは絶えず笑みを浮かべながらも歩数や歩幅等、リズムを計算してステップを切っていく。 やがて音楽が終わる。 小さく息を整えて、ルルーシュは少しシャルロットから体を離すと彼女の右手を取り、膝を折って細い指に口づけを一つ落とした。 シャルロットの頬が僅かに赤く染まる。 その一枚の絵画の様な光景に誰もが見惚れていた。 そんな中でジョゼフが拍手を打つ。 それにつられるように貴族達の間に拍手が広がっていく。 もう誰もがジョゼフの我儘によって生じた混乱を忘れていた。 夢中になって己の感動を伝えようと手を叩く。 その夜の拍手はなかなか鳴り止まなかった。 ※ルルーシュ十七歳、タバサ十三歳、これぐらいならロリコンではないか・・・? 何はともあれ、とりあえずフラグ立て完了。 回収するかどうかはまた別として、タバサことシャルロットはそれなりに気に入っているの今後も登場させる予定です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.03.14 23:27:01
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