VisionからTeleVisionの時代へ
日本の景気も後退局面に入ったという。今回の景気変動要因は、少子高齢化など国内的な後退要因と、原油高など資源・エネルギー・環境問題という地球レベルでの後退要因とが複雑に交錯したものであり、その解決は容易ならざるものである。今迄の景気対策は、今回のものに比べると、景気上昇の要因となる要素を分析して、その結果を元に、要素を積上げ、還元してゆく事で全体、あるいは、全貌にいたるという20世紀の科学の論理である「要素還元論」型のVision(見通し)をもったものであったといえるであろう。その決定的な欠点が、今回の世界的な景気の後退局面の結果明らかになりつつあると言えるであろう。すなわち、要素を積上げ、還元することにより、そうする前よりは少しずつ良くなって行く可能性はあるが、いったいどこに至るのかわからず、めくら操縦をしているような状況に至ると言う事である。昨今の、資源・エネルギー・環境問題の顕在化は、それに対し、人類やそれをとりまく営みの行く先に対し、Television(長期的展望、遠隔的展望)を与えようとしていると考えられる。20世紀の自然科学、社会科学、人文科学においては、要素還元論的に、それぞれの、分割し、縦割り化した専門分野においてそれなりのVisionをもち、積上げてきた結果として、様相は複雑化し、展望は不明瞭になってきたようである。それに対して、資源・エネルギー・環境問題は、人類およびそれをとりまく生態系と地球システムの生存と持続という、それ以外の選択肢をゆるさない道筋を人類に課したといえるであろう。このことは、この問題の解決を、あらゆる人類の営みの行く末に対しTelevisionを提供しているといえるであろう。20世紀に比べて、より複雑になっている世界のあらゆる様相に対し、そこに、資源・エネルギー・環境問題の解決にともなうTelevisionの光明が見えてきているといえると考える事も出来よう。すなわち、あらゆるVisionをもった選択肢に対し、自ずと方向を見いだしうるTelevisionが人類に対し与えられたはずなのである。このTelevisionの詳細をアイデンティファイし、構造化し、意味付ける事が、21世紀の自然科学、社会科学、人文科学の総体に対し、要求されていると言えるであろう。社会科学の部分である経済についても、自然科学や他の社会科学、人文科学との境界領域のインタフェイス(界面)におけるトランザクション(相互浸透)を意識しながら、資源・エネルギー・環境問題による人類およびそれをとりまく生態系と地球システムの生存と持続の実現というTelevisionが至上命題として顕在化されることを待っているのである。政治経済社会においても、このTelevisionの顕在化こそが、景気回復と財政改革を始めとする個々の諸問題のプライオリティ(優先順位)を決定付ける鍵となるであろう。テレビやマスコミの報道においても、このTelevisionの提案とそれにともなう様相の転換の提示こそが要求されているのであり、その結果が、諸問題のプライオリティの提示と言う形で提案されることになるべきであろう。複雑な様相の混沌に至らしめた20世紀の英知の結果を人々に理解できる方法で、整理整頓し、光明をあたえることができるのが、このTelevisionのデザインによることになろう。