「杉の花粉」の独断と偏見に満ちた愛読書紹介コーナー

どん底・・・ＦＡＫＥ

　先日、某ヤフー・オークションでＺＩＰＰＯライターを５千円で落札した。
　ベトナム戦争時に使われた俗にベトナムＺＩＰＰＯと呼ばれるものである。
　『６０－６１』と前面上部に彫られているので多分１９６０年から６１年に製造されたものなのだろう。
　一般的な価格の半分以下である。

　ネットのＺＩＰＰＯショップで製造年度を調べる。
　ＺＩＰＰＯは、底の刻印から製造年度が判るのだ。
　スリムタイプなのでドットが左に２つ、右に３つ。
　・・・１９６０年製造に間違いない。

　５千円だし。まあ良いかっ！
　・・・『清水の舞台』から飛び降りる覚悟で落札した。

　待ち侘びた商品が到着した。
　早速、発火石を替え、オイルを注入する。
　見事に着火する。
　流石はＺＩＰＰＯと大満足である。

　けれども・・・
　突然、或る事が頭の中に閃いた。
　・・・ベトナム戦争って何時からだっけ？

　早速調べてみる。
　ＺＩＰＰＯで火を付けた煙草を燻らせながら・・・

　１９５４年、フランス軍外人部隊の惨敗により『ジュネーブ協定』が成立し、『ベトナム民主共和国』の独立が承認される。
　だが、共産主義の東南アジア台頭を恐れた米国は、北緯１７度でベトナムを南北に分割し、南には仏国の傀儡政権である『ベトナム国』を存続させた。
　１９５５年、南ベトナムの選挙で米軍が支持した反共主義の大統領が当選し、米国の全面的な支援を受けた『ベトナム共和国』が成立した。
　そして・・・
　１９６０年に北ベトナム（『ベトナム民主共和国』）に支援された『南ベトナム解放民族戦線』が結成され、南ベトナム（『ベトナム共和国』）へのゲリラ活動を本格化させる。
　一応ここからベトナム戦争が始まったらしい。

　１９６３年、ジョン・Ｆ・ケネディ米国大統領が米軍による本格的な軍事介入を決断。
　同年１１月、ケネディ大統領の許可を得たＣＩＡ工作による軍事クーデターが発生し、南ベトナム（『ベトナム共和国』）は軍事政権となる。
　その直後、ケネディ大統領が暗殺され、ジョンソン副大統領が大統領に就任。
　１９６４年８月、米国議会上下両院が、事実上の宣戦布告となる「トンキン湾決議」を可決し、ジョンソン大統領への戦時大権が承認され、米国が本格的に軍事介入。
　１９６５年３月、ジョンソン大統領は米軍海兵隊を派遣。
　同年７月、ジョンソン大統領は米軍陸軍を派遣。
　それ以降、「第３海兵師団」「第１７５空挺師団」「第１騎兵師団」「第１歩兵師団」・・・
　最大で５０万人を超える米兵が投入されることになる。
　そして・・・
　ベトナム戦争が泥沼化していく。
　１９７３年３月、「パリ協定」調印により米軍はベトナム全土から一斉に撤退。
　１９７５年４月３０日午前１１時３０分サイゴン陥落。
　ここにベトナム戦争は漸く終焉を迎える。

　１９６０年製造のハズの私のＺＩＰＰＯは・・・
　表面に米国陸軍徽章が貼り付けてある。
　米国陸軍が南ベトナムに上陸したのは、
　・・・１９６５年７月以降。

　何故・・・？
　慌てて『インサート』部分を確認してみる。
　・・・１９６３年から１９６５年製造のものだった。

　改めてＺＩＰＰＯの全体を眺めてみる。
　・・・底のドットの彫りが異常に浅い。

　こうして・・・
　私のベトナムＺＩＰＰＯは、紛れも無く『本物』であることが明らかになった。
　・・・そっと戸棚の引き出しにしまう。
　何せ大事なモンだから・・・アハハ・・・グスン。

　私のＺＩＰＰＯは・・・
　『インサート』部分と『米国陸軍徽章』は本物で、
　『カバー』部分は判断出来なくて、
　ベトナムＺＩＰＰＯとしては、多分、ＦＡＫＥなのだろう。
　
　私は自称『皇室が好きな社会主義者』だと何度も公言している。
　だから・・・
　『天皇』は好きだが、『戦争』は嫌い。
　『戦争』は嫌いだが、『ミリタリー・グッズ』は好き。
　『ミリタリー・グッズ』は好きだが、『軍隊』は嫌い。
　『軍隊』は嫌いだが、『平和』は好き。
　『平和』は好きだが、『平和ボケ』は大っ嫌いっ！
　・・・。

　私の中には、『獣としての人間の性』と『偽善者』が同居している。
　そして『精神』なんて、
　・・・『彼岸』と『此岸』を行ったり来たりしているのかも知れない。
　
　その・・・
　どの部分が『本物』で、
　どの部分が『贋物』なのか？

　私はどんな時でも『自分』を誤魔化したりはしたくない。
　何処を採っても『私』は『私』なのだ。
　
　私は・・・
　戸棚にしまったＺＩＰＰＯを好きになろうと思う。
　その『一部分』だけで、『自分自身』を嫌いにならないために・・・