surre_gather - シュールゲイザー

ムードコーラス・スペシャル　秘密のカクテル
其ノ一　幸せになってね
GSD-7501 (2001)

ムードコーラス研究家として名を馳せる、秘密博士氏編纂のボックスセット。氏はまた、秘密博士とエンペラーズと云う優秀なロックバンドで活躍しています。2004年のNHKFMライブビートでも素晴らしいライヴ演奏を聴かせてくれましたね。（なんとグループ初めてのライヴだったとのこ。）ムードコーラス、ムード歌謡の隆盛は幾つかの時期に分けることが出来るようですが、こちらでは５０年代後半から脈々と歌い継がれるムード調のテイクをまとめて聴くことが出来ます。ムードコーラスとは、主に色恋の茶番をスティールギター、ヴァイヴ、オルガン、ホーンなどのムーディな演奏で、しかもファルセットを多用した開離和音のスウィートコーラスで聴かせる一つの演奏スタイルです。その美味しいところはほんの１０年間程度であると思われますが、グループの数は４００は下らないとのこと。ノットオンＬＰシングルオンリーなども多く、カルトな魅力も相まって日本版の甘茶コーラス、スウィートソウルと云ってもよいのではないでしょうか。（違うか。）

ムードコーラスは廉価盤でクズのように叩き売られているベストヒットや、コンピＣＤで多くのヒット曲を聴くことが出来ます。こちらのボックスは敢えて王道は外したようなカルトな選曲で、研究家のナにかけて奥深い業を一望出来る相応しい仕事。本当に素晴らしいコンピレーション。際物と思えるテイクも数多く収録あり、歌謡曲黄金期にありながら、リスナーを意識しないアーティストのコアなロマンを垣間見ることが出来て面白いです。こちらのページの後半でボックスの内容を一覧出来ます。

１は敏いとうとハッピー＆ブルーの"わたし祈ってます"の元ネタ。幾分薄く冗長な印象のハッピーブルーより重厚で流れるような此方の方が良い。ところでカヴァーと云うことだが両者で作詞曲者名が全く違うのが謎。ハッピーブルーは「五十嵐悟」、ブルーロマンは「中ひろし」。松平直樹は元マヒナスターズとのこと、流石、歌える人です。５は全編に泣きのサックスが吹き荒ぶ。リードの幸薄い声色と、夕暮れにこだまするような魂の抜けたコーラスが雰囲気バッチリです。

７、マキとマッキーズ。コレだけで充分インパクト大で打ちのめされる。ムードものには珍しい、二人のマキ、女声ツインヴォーカルをフューチャーした哀歌。８は後半の歌詞がかなり笑えるので一聴の価値あり、バカポップ認定。セクシーなテナーと飢えた女声の絡みが見ものです。９は幻の名盤解放歌集にも収録のアロハブラザーズ稀代の傑作"ラリラリ東京"への親愛なるオマージュ、"イライラ東京"。そして殿様キングが"メロメロ東京"とくれば、偉大なムード歌謡史一大絵巻の出来上がり。

ビートを強調したノーザン歌謡、１１は"天才バカボン"を歌ったアイドルフォー。１３は８７年と云うかなり後期の作品ではありますが、生活感溢れる傑作ミディアム。合いの手のコーラスもムードマナーに則り一途であり、包み込まれるリードの逞しいバリトンもなかなか聴ける。１４、１５は小山田圭吾の父親、故三原さと志のファルセットが素晴らしいマヒナスターズ。ムード創始者でもありますし、百戦錬磨のコーラスの腕には惚れ惚れします。１６はリヴァーヴたっぷりの豊潤なコーラスを堪能出来るジョイベルス。

１７、１８は数々のヒット曲で知られるクールファイヴ。１７はかなり心地よい流麗なミディアムソウル。１８のカーペンターズの不思議カヴァーにはぶっ飛びます。リードは前川清ではなく、メンバーの拙いボーカル。伸びない、巧くない、味がないと、何故このような展開に陥ったのか非常に興味深いところ。

1 幸せになってね／松平直樹とブルーロマン great!
2 銀座のクラブをやめてから／松平直樹とブルーロマン
3 倖せはここに／大橋節夫とハニー・アイランダース
4 東京は風の寒い日だった／ジョーヤ増渕とアフロ・アミーゴス
5 小雨の慕情／江藤政勝とラ・セーヌ great!
6 西海ブルース／花菱エコーズ
7 あなたを知って／マキとマッキーズ
8 花はぬれている／ロス・アンヘリトス
9 イライラ東京／三浦正弘とハニー・ブラザース great!
10 東京の夜に泣いている／古城たかしとブルー・タッシュ
11 またお逢いしましたね／アイドル・フォー
12 おりゅう／南有二とフルセイルズ
13 あなたじゃないの／沢田あきらとハーバーナイツ great!
14 女っぽいね／和田弘とマヒナ・スターズ
5 死ぬまであなたと／和田弘とマヒナ・スターズ great!
16 わが青春に悔いなし／ジョイベルス東京
17 西海ブルース／内山田洋とクール・ファイブ great!
18 イエスタデイ・ワンス・モア／内山田洋とクール・ファイブ